AFP 2008;77:1403-10
N Engl J Med 2012;367:248-57.
40-49歳では25%, 70-79歳では80%で認められる.
無症候性も多く, 60台では50%が無症候性.
80歳台では無症候性は10%のみ.
80歳台では無症候性は10%のみ.
前立腺の解剖図 JAMA. 2014;312(5):535-542.
前立腺肥大症の症状は2つに分類
Obstructive voiding; 排尿障害. 排尿困難, 尿流の低下, 排尿の中途途絶, 残尿感など.
Storage symptom; 頻尿や夜間尿, 切迫尿, 膀胱痛, 排尿時痛.
重症度評価, パラメータ
AUASI score, またはInternational Prostate Symptom Score(IPSS)
項目 | 無し | 1/5以下 | 半分以下 | 半分位 | 半分以上 | 常に |
排尿後に残尿感を感じる頻度は?(/mo) | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
排尿後, 2時間以内に再度排尿する頻度は? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
排尿中に尿が途切れ, また排尿する頻度は? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
排尿を我慢できなくなる頻度は? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
尿流が弱いと感じる頻度は? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
排尿する為に陰部を押したり, 引っ張ったりする頻度は? | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
夜ベッドに入ってから, 起きるまでにトイレに行く回数 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
0-7; 軽度, 8-19; 中等, 20-35; 重度 |
JAMAのRational clinical examinationでは, スコアの前立腺肥大症に対する感度特異度は以下の通り (JAMA. 2014;312(5):535-542.)
Cutoff ≥8では感度 91% だが特異度 12%のみ.
Cutoff ≥20では感度41%, 特異度 71%程度. 診断にも除外にも使いづらい結果.
IPSSは前立腺肥大症の診断ではなく、あくまでも重症度評価、治療効果判定として使用すべきもの.
IPSSは前立腺肥大症の診断ではなく、あくまでも重症度評価、治療効果判定として使用すべきもの.
前立腺肥大症以外に下部尿路症状を来す疾患 JAMA. 2014;312(5):535-542.
PSA値, 直聴診所見と前立腺容積の関係 (Curr Opin Urol 2009;19:44-8)
前立腺容積のGold-standardは経直腸USによる評価.
前立腺容積を評価するのには直腸診よりはPSAが良好.
直腸診では, 容積50mlを超える重度BPHの評価には有用だが, 30-40mlの中等症のRule-in, outには不向き.
むしろ肛門のトーヌス, 前立腺の左右差, 癌の評価の意味合が強い.
前立腺容積とPSAは相関性が良好.
年齢に関係なく, PSA>2.0ng/mLは前立腺容積>30ml, PSA>2.5ng/mLは容積>40mlを示唆する.
5α-reductase阻害薬は前立腺容積30-40mlで使用が推奨. → PSA >1.5ng/mLを指標とすることも推奨している.
前立腺容積を評価するのには直腸診よりはPSAが良好.
直腸診では, 容積50mlを超える重度BPHの評価には有用だが, 30-40mlの中等症のRule-in, outには不向き.
むしろ肛門のトーヌス, 前立腺の左右差, 癌の評価の意味合が強い.
前立腺容積とPSAは相関性が良好.
年齢に関係なく, PSA>2.0ng/mLは前立腺容積>30ml, PSA>2.5ng/mLは容積>40mlを示唆する.
5α-reductase阻害薬は前立腺容積30-40mlで使用が推奨. → PSA >1.5ng/mLを指標とすることも推奨している.
PSAと前立腺容積; アジア人ではどうか?
50-79yで下部尿路症状, BPH(+)の韓国人5716名.
前立腺容積>40mlをOutcomeとしたPSAの感度, 特異度. BJU Int 2006; 97:742–746.
50-59歳 | 60-69歳 | 70-79歳 | 全体 | |||||
PSA | Sn | Sp | Sn | Sp | Sn | Sp | Sn | Sp |
0.5 | 97% | 20.8% | 97.7% | 17.8% | 98.4% | 13.9% | 97.9% | 17.9% |
1 | 86.7% | 59.4% | 91.4% | 47.1% | 93.9% | 40.5% | 91.4% | 49.6% |
1.5 | 72.8% | 76.9% | 83.2% | 65.6% | 86.9% | 56.6% | 82.7% | 67.2% |
2 | 62.8% | 84.5% | 73.1% | 75.4% | 79% | 67.3% | 73.4% | 76.5% |
2.5 | 54.2% | 89.4% | 64.7% | 81.8% | 73.3% | 74.2% | 65.9% | 82.5% |
3 | 44.9% | 92% | 58.9% | 85.7% | 65.8% | 79% | 58.9% | 86.2% |
4 | 33.6% | 95.4% | 43.4% | 91.5% | 51.4% | 87.1% | 44.5% | 91.7% |
5 | 22.3% | 96.9% | 32.6% | 95% | 37.5% | 92.8% | 32.5% | 95.1% |
6 | 14% | 98.1% | 23.9% | 96.5% | 28.4% | 95% | 23.8% | 96.7% |
8 | 7.3% | 99.1% | 8.5% | 98.8% | 12% | 98.2% | 9.5% | 98.7% |
10 | 0.3% | 99.8% | 1.2% | 99.9% | 0.8% | 99.9% | 0.9% | 99.9% |
容積>40ml群の平均値は
60yでPSA >1.3ng/mL
70yでPSA >1.7ng/mL
80yでPSA >2.0ng/mL
60yでPSA >1.3ng/mL
70yでPSA >1.7ng/mL
80yでPSA >2.0ng/mL
これは白人と比較しても特に変わらない値.
残尿量の評価: Auscultatory Percussion Arch Intern Med 1985;145:1823-5
膀胱上縁を聴性打診にて判別
恥骨上縁が恥骨上 > 7cmで残尿>250mlを示唆 (聴診器の直径が5-5.5cm)
恥骨上縁が恥骨上 > 7cmで残尿>250mlを示唆 (聴診器の直径が5-5.5cm)
(健常人ボランティアにカテーテルを留置し, 生理食塩水を入れながら評価したStudy)
膀胱上縁
|
平均残尿(ml)
|
範囲(ml)
|
4.5cm
|
25(9)
|
0-125
|
5.5cm
|
111(8)
|
32-225
|
6.5cm
|
228(12)
|
135-325
|
7.5cm
|
324(31)
|
160-650
|
8.5cm
|
328(44)
|
200-600
|
9.5cm
|
674(27)
|
500-800
|
10.5cm
|
819(68)
|
575-1200
|
11.5cm
|
850(69)
|
500-1100
|
12.5cm
|
740(96)
|
460-1000
|
残尿量の評価: 超音波検査 (Urology 2004;64:887-891)
エコーにて膀胱の容積を推定しても, 実際の残尿とは20%ほどズレる
厳密に計算をしても、やはりズレる. なので簡便に計算をする.
116名に対して, 残尿量と Echo所見を比較 W; 幅, H; 高さ, D; 深さ(cm)
厳密に計算をしても、やはりズレる. なので簡便に計算をする.
116名に対して, 残尿量と Echo所見を比較 W; 幅, H; 高さ, D; 深さ(cm)
各計算方法と実際の容量との一致性を評価
計算式
|
(V tr – V cal) / V tr
|
SD
|
α x β x W x H x D
|
0.17
|
0.10
|
0.7 x W x H x D
|
0.27
|
0.19
|
0.65 x W x H x D
|
0.24
|
0.16
|
0.625 x W x H x D
|
0.22
|
0.17
|
α, βは膀胱の形より求める変数であるが, メンドクサイ.
WHD x (0.5-0.7)ml で計算すればOKということになる.
WHD x (0.5-0.7)ml で計算すればOKということになる.
ちなみに, Bladder scanによる残尿量の評価は, 実際の導尿量との相関性が高い(γ=0.93)
(JAMA. 2014;312(5):535-542.)
前立腺肥大症の治療の適応
多くの患者が治療無しでも症状改善, 安定する
2.6-5年で16%が症状の安定, 38%が改善
40代で20%, 70代で90%
QOLを著しく障害する場合は治療の適応
QOLと副作用を天秤にかけて決める
排尿障害により上・下部尿路障害 → 治療
この場合, 外科的治療が選択される
水腎症, 腎障害, 反復性尿路感染症, 非代償性膀胱障害; 排尿後の残尿が>25% 膀胱容量
2.6-5年で16%が症状の安定, 38%が改善
40代で20%, 70代で90%
QOLを著しく障害する場合は治療の適応
QOLと副作用を天秤にかけて決める
排尿障害により上・下部尿路障害 → 治療
この場合, 外科的治療が選択される
水腎症, 腎障害, 反復性尿路感染症, 非代償性膀胱障害; 排尿後の残尿が>25% 膀胱容量
治療: 経過観察
無治療でも改善することが多い
AUA score =< 7ならば経過観察
4.5/100pt-year ⇒ AUA score 4改善
Acute Urinary retentionは 0.6/100pt-year
定期的(毎年)症状の増悪をモニタリング
無治療でも改善することが多い
AUA score =< 7ならば経過観察
4.5/100pt-year ⇒ AUA score 4改善
Acute Urinary retentionは 0.6/100pt-year
定期的(毎年)症状の増悪をモニタリング
治療: 薬剤治療
Alpha-adrenergic antagonist
5-alpha-reductase inhibitorsを使用する.
Alpha-adrenergic antagonist
5-alpha-reductase inhibitorsを使用する.
Alpha 1受容体は前立腺, 膀胱底部に多く, 体部に少ない
→ 1A, 1Dの阻害で平滑筋を弛緩 → 即効性あり
5-alpha-reductase inhibitorは前立腺容量を減少 → 長期間の投与で効果発現
併用は単剤よりも長期間での効果は良い, 短期は不変
症状増悪に対する各薬剤のNNTは 併用:8.4 Doxazosin:13.7 Finasteride:15.0
α1 adrenergic antagonist
長期作用型α1阻害薬
Tamsulosin(ウロスロール®) Urapidil(エブランチル®)
Terazosin(バソメット®) Doxazosin(カルデナリン®)
Prazosin(ミニプレス®) Silodosin(ユリーフ®)
IPSSは30-40%低下, 尿流は16-25%改善
Tamsulosin, Alfuzosinは血圧に影響しにくい
Terazosinは他に比べて効果が高い (NEJM 1996;335:533-39)
DosazosinのNNT= 14(臨床症状改善) (NEJM 2003;349:2387-98)
Terazosin, Doxazosinは前立腺細胞のアポトーシスを促進する作用をもつ
Tamsulosin(ウロスロール®) Urapidil(エブランチル®)
Terazosin(バソメット®) Doxazosin(カルデナリン®)
Prazosin(ミニプレス®) Silodosin(ユリーフ®)
IPSSは30-40%低下, 尿流は16-25%改善
Tamsulosin, Alfuzosinは血圧に影響しにくい
Terazosinは他に比べて効果が高い (NEJM 1996;335:533-39)
DosazosinのNNT= 14(臨床症状改善) (NEJM 2003;349:2387-98)
Terazosin, Doxazosinは前立腺細胞のアポトーシスを促進する作用をもつ
Tamsulosin, Alfuzosinは選択性α阻害⇒ 副作用はプラセボと同等
Terazosin, Doxazosin, Prazosinで副作用多い
副作用; 起立性低血圧, ふらつきがあり就寝前の投与が推奨される
Sildenafil(バイアグラ®) 25mgとの併用はできない. 4時間は内服時間を空けるべし
Terazosin, Doxazosin, Prazosinで副作用多い
副作用; 起立性低血圧, ふらつきがあり就寝前の投与が推奨される
Sildenafil(バイアグラ®) 25mgとの併用はできない. 4時間は内服時間を空けるべし
α受容体のサブタイプから
Subtype
|
α1a
|
α1b
|
α1d
|
分布
|
前立腺部尿道括約筋
|
血管平滑筋
|
膀胱知覚過敏
|
Silodosin(ユリーフ®); α1a >> α1d > α1b ⇒ 選択性高いが, 射精障害多し
Tamsulosin(ハルナール®); α1a > α1d > α1b ⇒ 残流速改善
Naftopidil(アビショット®); α1d > α1a > α1b ⇒ 残尿感改善
Urapidil(エブランチル®); α1a > α1b > α2 ⇒ 降圧作用あり. 女性の神経因性膀胱に使用可(保険上)
Tamsulosin(ハルナール®); α1a > α1d > α1b ⇒ 残流速改善
Naftopidil(アビショット®); α1d > α1a > α1b ⇒ 残尿感改善
Urapidil(エブランチル®); α1a > α1b > α2 ⇒ 降圧作用あり. 女性の神経因性膀胱に使用可(保険上)
40-85歳の新規Tamusulosin投与例のCohort(米国) BMJ 2013;347:f6320
Tamusulosinは開始~2ヶ月程度までは低血圧エピソードのリスクあり
長期投与ではリスクは高くない傾向がある.
長期投与ではリスクは高くない傾向がある.
5-α reductase inhibitor
Finasteride(プロペシア®) Dutasteride(アボルブ®)
5-α reductaseはType1は肝臓, 皮膚にあり, Type2は前立腺に局在
阻害によりTeststeron → Dihydrotestosteroneを抑制し, 前立腺のサイズを縮小する
前立腺サイズ >40ml(通常20-30)で良い適応
症状緩和まで6-12ヶ月かかる
将来的に外科治療適応を55%減, 急性尿閉を57%減
急性尿閉; NNT 26, 外科適応 NNT 18 (4年後)
前立腺癌予防効果 NNT 17, ただし 高分化型腺癌のリスク(NNH 77)
症状緩和まで6-12ヶ月かかる
将来的に外科治療適応を55%減, 急性尿閉を57%減
急性尿閉; NNT 26, 外科適応 NNT 18 (4年後)
前立腺癌予防効果 NNT 17, ただし 高分化型腺癌のリスク(NNH 77)
IPSSは18-23%減 (Finasteride 5mg/day)
1mg, 5mg投与群では18-19%の前立腺容量の低下 (vs 3% in Plasebo)
副作用; 1年以内に多い
性欲減退, 射精・勃起障害, 性機能障害は13.8%
1mg, 5mg投与群では18-19%の前立腺容量の低下 (vs 3% in Plasebo)
副作用; 1年以内に多い
性欲減退, 射精・勃起障害, 性機能障害は13.8%
5-ARIと前立腺癌のリスク
5-ARIは前立腺癌の全体的な頻度を低下させるが, 高分化型の前立腺癌のリスクは増加させている.
低分化型のリスクは低下. N Engl J Med 2011;online, June 23.
スウェーデンのNation-wide cohortでは, BMJ 2013;346:f3406
5-ARIの長期投与では, Gleason score ~7ではOR低下効果が認められ, 8-10ではリスク低下繋がらないという結果.
5-ARIの長期投与では, Gleason score ~7ではOR低下効果が認められ, 8-10ではリスク低下繋がらないという結果.
444880pt-yのフォローにおいて, 3681例の前立腺癌あり.
5ARIは2878例で使用歴があり, 前立腺癌への影響は, Gleason score ≤7ではリスク低下, ≥8でもリスク上昇とはならないという結果であった.
Finasteride vs Placeboに割り付け, 前立腺癌発症率を比較したStudyの長期予後評価(~18y)
長期的なフォローでもLow gradeの前立腺癌予防効果はあり.
各薬剤の使用方法
Alpha 阻害薬
|
商品名
|
Dosage
|
Doxazosin
|
カルデナリン® (0.5,1,2,4mg)
|
1mg/dayより開始, Max 8mg
|
Prazosin
|
ミニプレス® (0.5,1,2mg)
|
1mg bidより開始, Max 5mg tid
|
Terazosin
|
バソメット® (0.25,0.5,1,2mg)
|
1mg 就寝前, Max 20mg 就寝前
|
Silodosin
|
ユリーフ®
|
2CP 朝夕
|
選択性 Alpha阻害
|
商品名
|
Dosage
|
Alfuzosin
|
未承認
|
10mg/day
|
Tamsulosin
|
ウロスロール®, ハルナール®
|
0.4mg/day
|
5-Alpha reductase阻害薬
|
商品名
|
Dosage
|
Dutasteride
|
アボルブ
|
0.5mg/day
|
Finasteride
|
プロペシア
|
0.2-1mg/day
|