J Microbiol Immunol Infect 2010;43:515-518
Bornholm Diseaseは別名Epidemic pleurodynia, myalgiaと呼び,ウイルス感染に伴う胸膜痛, 筋肉痛のこと. 筋肉痛は上腹部に多い.
デンマークのBornholm島で流行したことからこの名前がつけられた.
Virus感染は主にCoxsackievirus Bが有名であるが, 他にEchovirus, Coxsackievirus A, ヒトパルコウイルス3での国内での報告例がある. (Emerging Infectious Disease 2012;18:1787-1793)(Journal of Clinical Virology 58 (2013) 188–193)
デンマークのBornholm島で流行したことからこの名前がつけられた.
Virus感染は主にCoxsackievirus Bが有名であるが, 他にEchovirus, Coxsackievirus A, ヒトパルコウイルス3での国内での報告例がある. (Emerging Infectious Disease 2012;18:1787-1793)(Journal of Clinical Virology 58 (2013) 188–193)
Pleurodyniaであるが, 胸膜や腹膜ではなく, 筋痛が主な病態とされている
Bornholm Disease186例の報告より (J Coll Gen Pract 1961;4:181-213)
男女比はほぼ同等. (87:99)
年齢は6M~72yと幅広い2峰性のピークがあり, 未就学児と30-35歳で多い傾向.
男女比はほぼ同等. (87:99)
年齢は6M~72yと幅広い2峰性のピークがあり, 未就学児と30-35歳で多い傾向.
30-35yで増加するのは子供と接する事が多いから?
発症は夏期~秋にかけて多い
夏風邪に由来する物が多い
夏風邪に由来する物が多い
症状の頻度
症状
|
|
筋由来の疼痛
|
100%
|
発熱
|
86%
|
発汗
|
65%
|
頭痛
|
62.9%
|
食欲低下
|
61%
|
悪心
|
46.8%
|
咽頭痛
|
24.7%
|
嘔吐
|
21.5%
|
悪寒戦慄
|
9.7%
|
羞明
|
5.9%
|
下痢
|
4.4%
|
眼球運動に伴う疼痛
|
3.1%
|
Diziness
|
1.1%
|
頻尿
|
1.1%
|
Delirium
|
0.6%
|
腹痛は季肋部, 横隔膜部の疼痛が7-8割を占める.
補足; Bornholm病における下位肋骨下面の圧痛の評価
呼気の状態(Stage I)で, 下腹部圧迫し, 吸気してもらう(II)
肋骨下面で疼痛が生じるかを評価
横隔膜の圧痛を評価する方法だが, 感度や特異度は不明.
肋骨下面で疼痛が生じるかを評価
横隔膜の圧痛を評価する方法だが, 感度や特異度は不明.
頭痛は両側の前頭部痛が多い.
消化管症状のタイプ, 出現時期
1951年の英国OxfordでのEpidemic (Br Med J. 1953 Jun 20;1(4824):1345-51.)
8月~11月にかけてBornholm病が蔓延.
多い時は1wkで53例が報告された.8月~11月にかけてBornholm病が蔓延.
発症者の年齢分布
年齢
|
<1y
|
1y
|
2y
|
3y
|
4y
|
5-9y
|
10-14y
|
15-19y
|
男性
|
3
|
3
|
12
|
8
|
7
|
41
|
16
|
4
|
女性
|
3
|
5
|
9
|
8
|
18
|
43
|
18
|
7
|
全体
|
76
|
84
|
34
|
11
|
年齢
|
20-24y
|
25-29y
|
30-34y
|
35-39y
|
40-44y
|
45-49y
|
50-54y
|
55-59y
|
60-64y
|
男性
|
1
|
5
|
6
|
4
|
4
|
3
|
1
|
2
|
1
|
女性
|
7
|
7
|
16
|
9
|
6
|
0
|
0
|
0
|
0
|
全体
|
8
|
12
|
22
|
13
|
10
|
3
|
1
|
2
|
1
|
潜伏期間は1wk以下が6-7割であるが, 10日を超える例もあるので注意
症状
|
|
|
|
腹痛のみ
|
52.6%
|
Delirium
|
2.6%
|
胸痛のみ
|
19.8%
|
感覚鈍麻, 過敏
|
1.7%
|
両方あり
|
18.9%
|
|
|
疼痛無し
|
8.7%
|
合併症
|
|
重度の頭痛
|
34.3%
|
髄膜炎
|
2.6%
|
嘔吐
|
15.2%
|
精巣炎
|
成人男性の10%
|
羞明
|
11.8%
|
|
|
悪寒戦慄
|
11.4%
|
再発
|
|
咽頭痛
|
10.3%
|
早期再発
|
19.8%
|
四肢の痛み
|
6.8%
|
晩期再発
|
8.7%
|
頸部痛
|
4.9%
|
両方で再発
|
2%
|
Dizziness
|
4.2%
|
|
|
胸腹痛の詳細
腹痛は心窩部, 季肋部で多く, 42.7%を占める.
臍周囲は30.5%, 右下腹部が12.4%, 腰部, 下腹部が7.2%.
臍周囲から右下腹部へ移動するタイプが7.2%ある(虫垂炎Like)
左側よりも右側の方がより多く, 左下腹部に疼痛を訴える患者は無し.
胸痛は成人例でより多く認められる.
片側性が普通だが, どの部位で生じても良い.
特に右下胸部で頻度が高い傾向がある.
頭痛の頻度も34%と高い.
持続性, 拍動性など様々なタイプがあり得る.
発熱の頻度も高い. 38.3-39.4度程度まで上昇する
疼痛が改善するに伴い発熱も低下する経過が普通.
他の症状
咽頭痛の頻度も高いが軽度であることが多い
他には四肢や頸部の疼痛, めまい, 感覚異常も認められる.
再発について
この疾患では再発もあるのが特徴的.
急性の疼痛後数日経て再発する早期再発と, 完全に症状が消失して1ヶ月以上経過して再発する晩期再発がある.
約3割が再発を認め, 特に早期再発が2割程度と高頻度となる.
腹痛は心窩部, 季肋部で多く, 42.7%を占める.
臍周囲は30.5%, 右下腹部が12.4%, 腰部, 下腹部が7.2%.
臍周囲から右下腹部へ移動するタイプが7.2%ある(虫垂炎Like)
左側よりも右側の方がより多く, 左下腹部に疼痛を訴える患者は無し.
胸痛は成人例でより多く認められる.
片側性が普通だが, どの部位で生じても良い.
特に右下胸部で頻度が高い傾向がある.
頭痛の頻度も34%と高い.
持続性, 拍動性など様々なタイプがあり得る.
発熱の頻度も高い. 38.3-39.4度程度まで上昇する
疼痛が改善するに伴い発熱も低下する経過が普通.
他の症状
咽頭痛の頻度も高いが軽度であることが多い
他には四肢や頸部の疼痛, めまい, 感覚異常も認められる.
再発について
この疾患では再発もあるのが特徴的.
急性の疼痛後数日経て再発する早期再発と, 完全に症状が消失して1ヶ月以上経過して再発する晩期再発がある.
約3割が再発を認め, 特に早期再発が2割程度と高頻度となる.
ポーランドにおける1954-1957年の流行時の症状頻度 Bull Org Mond Sante, Bull Wld Hlth Org 1960;22:421-429
まとめると,
主に夏風邪の原因となるCoxsackievirus B, Echovirus, Coxsackievirus A, ヒトパルコウイルス3による筋肉痛を主とした疾患.
小児で多く, また小児と接する機会の多い30台の成人でも頻度は高い.
潜伏期間は1週間前後で,
典型的な症状は発熱と季肋部, 横隔膜の強い疼痛. 右側でより多い.
疼痛は胸膜痛のような鋭い痛みで体動や呼吸で増悪する.
発熱を高頻度で伴う.
他に前頭部を主とした頭痛や消化管症状も伴う.
症状は通常2週間程度で9割は改善する.
たまに外来で診るのと, 強い痛みで救急要請する人もいます.
(救急外来では大概診断つきませんが...)