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2014年9月9日火曜日

Bornholm Disease, Epidemic Pleurodynia, Myalgia

Bornholm Disease (Epidemic Pleurodynia, Myalgia)
J Microbiol Immunol Infect 2010;43:515-518

Bornholm Diseaseは別名Epidemic pleurodynia, myalgiaと呼び,ウイルス感染に伴う胸膜痛, 筋肉痛のこと. 筋肉痛は上腹部に多い.
 デンマークのBornholm島で流行したことからこの名前がつけられた.
 Virus感染は主にCoxsackievirus Bが有名であるが, 他にEchovirus, Coxsackievirus A, ヒトパルコウイルス3での国内での報告例がある. (
Emerging Infectious Disease 2012;18:1787-1793)(Journal of Clinical Virology 58 (2013) 188–193)
 Pleurodyniaであるが, 胸膜や腹膜ではなく, 筋痛が主な病態とされている

Bornholm Disease186例の報告より (J Coll Gen Pract 1961;4:181-213)
 男女比はほぼ同等. (87:99)
 年齢は6M~72yと幅広い2峰性のピークがあり, 未就学児と30-35歳で多い傾向.
30-35yで増加するのは子供と接する事が多いから?


発症は夏期~秋にかけて多い
 夏風邪に由来する物が多い


症状の頻度

症状

筋由来の疼痛
100%
発熱
86%
発汗
65%
頭痛
62.9%
食欲低下
61%
悪心
46.8%
咽頭痛
24.7%
嘔吐
21.5%
悪寒戦慄
9.7%
羞明
5.9%
下痢
4.4%
眼球運動に伴う疼痛
3.1%
Diziness
1.1%
頻尿
1.1%
Delirium
0.6%
症状の持続期間と, 初期症状, その後出現する症状の頻度
 腹痛は季肋部, 横隔膜部の疼痛が7-8割を占める.
補足; Bornholm病における下位肋骨下面の圧痛の評価


 呼気の状態(Stage I)で, 下腹部圧迫し, 吸気してもらう(II)
 肋骨下面で疼痛が生じるかを評価
 横隔膜の圧痛を評価する方法だが, 感度や特異度は不明.

頭痛は両側の前頭部痛が多い.

消化管症状のタイプ, 出現時期

1951年の英国OxfordでのEpidemic (Br Med J. 1953 Jun 20;1(4824):1345-51.)
 8月~11月にかけてBornholm病が蔓延.
多い時は1wkで53例が報告された.
発症者の年齢分布
年齢
<1y
1y
2y
3y
4y
5-9y
10-14y
15-19y
男性
3
3
12
8
7
41
16
4
女性
3
5
9
8
18
43
18
7
全体
76
84
34
11
年齢
20-24y
25-29y
30-34y
35-39y
40-44y
45-49y
50-54y
55-59y
60-64y
男性
1
5
6
4
4
3
1
2
1
女性
7
7
16
9
6
0
0
0
0
全体
8
12
22
13
10
3
1
2
1


潜伏期間は1wk以下が6-7割であるが, 10日を超える例もあるので注意
262例の臨床症状
症状



腹痛のみ
52.6%
Delirium
2.6%
胸痛のみ
19.8%
感覚鈍麻, 過敏
1.7%
両方あり
18.9%


疼痛無し
8.7%
合併症

重度の頭痛
34.3%
髄膜炎
2.6%
嘔吐
15.2%
精巣炎
成人男性の10%
羞明
11.8%


悪寒戦慄
11.4%
再発

咽頭痛
10.3%
早期再発
19.8%
四肢の痛み
6.8%
晩期再発
8.7%
頸部痛
4.9%
両方で再発
2%
Dizziness
4.2%


胸腹痛の詳細
 腹痛は心窩部, 季肋部で多く, 42.7%を占める.
 臍周囲は30.5%, 右下腹部が12.4%, 腰部, 下腹部が7.2%.
 
臍周囲から右下腹部へ移動するタイプが7.2%ある(虫垂炎Like)
 
左側よりも右側の方がより多く, 左下腹部に疼痛を訴える患者は無し.

 胸痛は成人例でより多く認められる.
 片側性が普通だが, どの部位で生じても良い.
 特に右下胸部で頻度が高い傾向がある.

頭痛の頻度も34%と高い.
 持続性, 拍動性など様々なタイプがあり得る.

発熱の頻度も高い. 38.3-39.4度程度まで上昇する
 疼痛が改善するに伴い発熱も低下する経過が普通.

他の症状
 咽頭痛の頻度も高いが軽度であることが多い
 他には四肢や頸部の疼痛, めまい, 感覚異常も認められる.

再発について
 この疾患では再発もあるのが特徴的.
 急性の疼痛後数日経て再発する早期再発と, 完全に症状が消失して1ヶ月以上経過して再発する晩期再発がある.
 約3割が再発を認め, 特に早期再発が2割程度と高頻度となる.

ポーランドにおける1954-1957年の流行時の症状頻度 Bull Org Mond Sante, Bull Wld Hlth Org 1960;22:421-429
まとめると,
 主に夏風邪の原因となるCoxsackievirus B, Echovirus, Coxsackievirus A, ヒトパルコウイルス3による筋肉痛を主とした疾患.
 小児で多く, また小児と接する機会の多い30台の成人でも頻度は高い.
 潜伏期間は1週間前後で,
 典型的な症状は発熱と季肋部, 横隔膜の強い疼痛. 右側でより多い.
 疼痛は胸膜痛のような鋭い痛みで体動や呼吸で増悪する.
 発熱を高頻度で伴う.
 他に前頭部を主とした頭痛や消化管症状も伴う.
 症状は通常2週間程度で9割は改善する.

たまに外来で診るのと, 強い痛みで救急要請する人もいます.
(救急外来では大概診断つきませんが...)