悪性腫瘍のリスクとしての膠原病と, 悪性腫瘍の症状としての膠原病.
悪性腫瘍のリスクとしての膠原病
Lupus (2009) 18, 479–485
膠原病が悪性腫瘍のリスク因子となることが知られている.
Sjogren症候群とNHLの関連や, SLE, RAでリスクが上昇 (慢性のリンパ球活性化によるものと説明されている)
他にはRAで血液腫瘍リスクが上昇する一方, 大腸癌のリスクが低下 (NSAID使用による影響と説明)
GPA(Granulomatosis with Polyangiitis)では膀胱癌 SIR 4.8[2.6-8.1], 皮膚扁平上皮癌 SIR 7.3[4.4-12], 白血病 SIR 5.7[2.3-12], リンパ腫 SIR 4.2[4.2-8.3]
Meta-analysisにてRA, Sjogren症候群, SLEとNHL発症のリスクを評価. Arch Intern Med. 2005;165:2337-2344
pSSはSIR 18.8[9.5-37.3]で高リスク
SLEはSIR 7.4[3.3-17.0]で中等度
RAはSIR 3.9[2.5-5.9]で低リスクであった
SLEはSIR 7.4[3.3-17.0]で中等度
RAはSIR 3.9[2.5-5.9]で低リスクであった
SLE患者では一般人口と比較して10-15%程度腫瘍のリスクが上昇
特にNHLのリスクは3倍近く上昇する. 他には肺癌リスクも上昇.一方で乳癌や子宮内膜癌, 卵巣癌のリスクは低下する.
Lupus (2009) 18, 479–485
SLEと乳癌, 卵巣癌, 子宮内膜癌のリスク
Meta-analysisでは, 乳癌 SIR 0.76[0.69-0.85], 子宮内膜 SIR 0.71[0.55-0.91], 卵巣癌 SIR 0.66[0.49-0.90] (British Journal of Cancer (2011) 104, 1478 – 1481)
SLEと血液腫瘍の関連 Lupus (2009) 18, 479–485
SLEではNHLやHL, 白血病リスクが上昇する.
MMに関しては上昇するエビデンスは無い
MMに関しては上昇するエビデンスは無い
ただし, Sjogren症候群ほどではない. (40倍にも上昇する)
Lupus(2002)11, 137−144
SLEで血液腫瘍リスクが上昇する理由は未だ不明 Curr Opin Rheumatol 2012, 24:177 – 181
免疫異常により遺伝子変異が生じやすい, 細胞障害によるもの等様々提唱.
PRoliferating-Inducing Ligand(APRIL)はDLBCL患者で多く発現しているが, SLEやRA患者の一部でもAPRILが多く発現していることが分かっている.
SLE患者のリンパ腫ではAPRILが多く発現 OR 23.6[2.4-231.2]しており, 発症に関与している可能性が示唆されている.
ただし, RA患者のリンパ腫では発現はしていない OR 0.8[0.3-2.0].
SLE患者のリンパ腫ではAPRILが多く発現 OR 23.6[2.4-231.2]しており, 発症に関与している可能性が示唆されている.
ただし, RA患者のリンパ腫では発現はしていない OR 0.8[0.3-2.0].
APRILはEBVによるリンパ腫でも増加する事が分かっている.
EBV感染が関連している例の報告もある Leukemia and Lymphoma 2003;44:275-279
SLE患者9547例の解析.
76948pt-yフォローし, 42例のNHLを診断した. Ann Rheum Dis 2005;64:1507–1509.
76948pt-yフォローし, 42例のNHLを診断した. Ann Rheum Dis 2005;64:1507–1509.
NHL診断時の年齢は55.3歳±15.1
36/42(86%)が女性例であった.
36/42(86%)が女性例であった.
SLE診断からNHL診断までの期間は6.7年±5.8
組織型の情報が残っている21例中, 11例がDLBCL(52%)
他はSmall lymphocytic 4例, FL 3例, Burkitt’s, peripheral T cell, MALTが1例
1992-2005年にMassachusetts General Hospital, Brigham and Women’s Hospitalで診断されたSLE + NHLは17例(SLE罹患中にNHLを指摘された症例)
上記のうち2例はSjogren症候群併発, 2例はSjogrenとRA併発, 1例はRA併発, 1例はHIV併発. 残りの11例はSLEのみであり, 11例を解析. Clin Rheumatol (2007) 26:1491–1494
SLE発症年齢 |
31歳[16-51] |
血液障害 |
7/11 |
DLBCL |
7/11 |
男女比 |
1:10 |
Leukopenia |
3 |
Marginal zone |
2/11 |
ACRクライテリア |
5.3±1.2 |
溶血性貧血 |
2 |
Mantle cell |
1/11 |
SLE診断~NHL |
17.8年[1.6-41.8] |
ITPで脾摘 |
2 |
Extranodal marginal zone mucosa-associated lymphoid tissue |
1/11 |
蝶形紅斑 |
7/11 |
Lymphopenia |
1 |
||
関節炎 |
100% |
ds-DNA抗体 |
4/11 |
||
腎障害 |
1/11 |
抗Sm抗体 |
1/11 |
|
|
NPSLE |
1/11 |
aPL抗体 |
4/11 |
|
|
SLEと肺癌 Curr Opin Rheumatol 2012, 24:177 – 181
SLE患者では肺癌リスクも上昇する事が分かっている.
また肺癌発症患者は喫煙者が大半を占める.
非喫煙者の場合, 免疫抑制剤を投与した患者で認められる.
また肺癌発症患者は喫煙者が大半を占める.
非喫煙者の場合, 免疫抑制剤を投与した患者で認められる.
子宮頸癌, Dysplasia Curr Opin Rheumatol 2012, 24:177 – 181
SLE患者では子宮頸癌やDysplasiaのリスクも上昇する
もともと少ない癌であること, リスク上昇も軽度(SIR 1.65[1.09-2.41])であり小規模studyでは有意差がでないことも多い.
もともと少ない癌であること, リスク上昇も軽度(SIR 1.65[1.09-2.41])であり小規模studyでは有意差がでないことも多い.
SLE患者でHPV感染率が高い点, 免疫抑制剤によるHPV感染リスク上昇が関連している可能性.
検診の徹底が推奨される.
薬剤と血液腫瘍の関連性
SLEで使用される薬剤で血液腫瘍のリスクが上昇する可能性.
Cyclophosphamide HR 2.55[0.94-13.37]
Azathioprine HR 1.02[0.34-3.03]
MTX HR 2.57[0.80-8.27] とどれも有意差はないが, CyclophosphamideとMTXは血液腫瘍のリスクを上昇させる可能性がある Curr Opin Rheumatol 2012, 24:177 – 181
SLE患者における246例の悪性腫瘍合併例と538例の非合併例を比較. 薬剤の関連性を評価.
Ann Rheum Dis 2008;67:74–79
長期的には免疫抑制剤が血液腫瘍リスクとなり得る.
傍腫瘍症候群としての膠原病様症状
Current Opinion in Rheumatology 1997;9:75-79, Current Opinion in Rheumatology 1994;6:105-110, Current Opinion in Rheumatology 1989;1:545-550
腫瘍の直接浸潤, 傍腫瘍症候群, 抗腫瘍療法, 潜在性腫瘍の初期症状として膠原病様症状を呈することが知られている.
皮膚筋炎は有名
血液腫瘍に関節炎が伴う例や, 固形癌が関節に転移し, 関節炎を生じる例もある
仙腸関節炎が転移により生じた症例報告もあり.
仙腸関節炎が転移により生じた症例報告もあり.
Adult-onset Still’s diseaseと診断される例もある (発熱, 大関節炎, 頸部LN腫大, 一過性の皮疹, ITP, クームス陽性等)
炎症性筋炎症候群 Autoimmunity Reviews 7 (2008) 352–358
多発筋炎, 皮膚筋炎の6-60%で悪性腫瘍を合併. 多発筋炎については議論がある.
卵巣癌, 腎癌, 肺癌, 大腸癌, メラノーマの初期症状としての報告が多い.
卵巣癌, 腎癌, 肺癌, 大腸癌, メラノーマの初期症状としての報告が多い.
RA様症候群 Autoimmunity Reviews 7 (2008) 352–358
免疫抑制療法に関連した腫瘍の報告が多い.
通常数年かけて発達するが, 潜在腫瘍の症状として急性発症の関節炎を呈することもある.
非対称性の多関節炎の場合, Paraneoplastic RDなのか, Seronegative RA, Spondyloarthropathyかの鑑別が困難な場合がある.
下肢有意で手の小関節は保たれている,
XPで骨が保たれている非特異的滑膜炎
リウマチ因子が陰性,
不釣り合いな疼痛, 体重減少, 肝脾腫, リンパ節腫大
ステロイドやDMARDへの反応が乏しい
説明困難な貧血 があれば腫瘍精査が勧められる.
下肢有意で手の小関節は保たれている,
XPで骨が保たれている非特異的滑膜炎
リウマチ因子が陰性,
不釣り合いな疼痛, 体重減少, 肝脾腫, リンパ節腫大
ステロイドやDMARDへの反応が乏しい
説明困難な貧血 があれば腫瘍精査が勧められる.
Raynaud現象, 強皮症様症候群 Autoimmunity Reviews 7 (2008) 352–358
Raynaud現象は傍腫瘍症候群の1つとして出現し得る所見.
Raynaud現象単独で出現した場合, >50歳の高齢発症の場合, 左右非対称で急性に壊死が出現する場合, 血管拡張薬や交感神経切除後も改善乏しい場合は腫瘍性をを考慮する
Raynaud現象単独で出現した場合, >50歳の高齢発症の場合, 左右非対称で急性に壊死が出現する場合, 血管拡張薬や交感神経切除後も改善乏しい場合は腫瘍性をを考慮する
DIACの機序は不明だが, 血管攣縮, 凝固障害, 血管炎, 免疫複合体, 薬剤毒性の関連が示唆されている.
新規発症の手指虚血(指末端のチアノーゼ, 変色, 潰瘍) 100例の解析では, 15例に腫瘍の関連が認められた.
DIACの15例では, 女性が7例, 男性8例
年齢は56歳[33-79]
DIは片側性が13例(86.7%), DI出現前にRaynaud現象(+)が7例. 足先の病変は認めなかった.
腫瘍の種類は
腺癌が7例 (肺2, 乳2, 大腸1, 胃1, 前立腺1)
扁平上皮癌が4例 (子宮頚2, 肺1, 咽頭1)
メラノーマ1例, リンパ系 3例
新規発症の手指虚血(指末端のチアノーゼ, 変色, 潰瘍) 100例の解析では, 15例に腫瘍の関連が認められた.
DIACの15例では, 女性が7例, 男性8例
年齢は56歳[33-79]
DIは片側性が13例(86.7%), DI出現前にRaynaud現象(+)が7例. 足先の病変は認めなかった.
腫瘍の種類は
腺癌が7例 (肺2, 乳2, 大腸1, 胃1, 前立腺1)
扁平上皮癌が4例 (子宮頚2, 肺1, 咽頭1)
メラノーマ1例, リンパ系 3例
DIACとDI群の比較
PLT高値がDIACでは多い傾向
年齢もやや高め.
ただしそれで鑑別はできない
年齢もやや高め.
ただしそれで鑑別はできない
Lupus-like syndrome: 傍腫瘍症候群としてのSLEは稀. 関連も不明
報告例は卵巣癌, 乳癌, Hairy cell leukemiaで, 多発漿膜炎, Raynaud現象, ANA陽性を呈した.
髄膜腫や頭頸部癌によるSubacute cutaneous lupus erythematosusの報告もある
無症状でANAだけ陽性は特に意義は無し. 悪性腫瘍のリスクにもならない.
PMR: リウマチ性多発筋痛症 Autoimmunity Reviews 7 (2008) 352–358
PMRも傍腫瘍症候群として出現することがある.
亀田病院でのCohortでは, PMRの6%, RS3PEの7%で悪性腫瘍を認めた. J Rheumatol 2012;39;148-153
また, 日本国内のRS3PE 33例の評価では, 8例が傍腫瘍症候群.
肺癌, 前立腺癌, 直腸癌, 大腸癌, 乳癌, 胃癌であった.傍腫瘍症候群ではMMP-3が高値であった以外は差は無し
(437.3[107.9-761] vs 114.7[41.3-2973.7]) Mod Rheumatol. 2012 Aug;22(4):584-8
傍腫瘍症候群を疑うPMR
<50歳での発症
典型部位だが左右非対称, 限局性の分布.
ESRが<40mm/hもしくは>100mm/h
低用量PSLで不十分な反応
長期にわたる症状 がある場合は腫瘍精査を考慮すべき.
典型部位だが左右非対称, 限局性の分布.
ESRが<40mm/hもしくは>100mm/h
低用量PSLで不十分な反応
長期にわたる症状 がある場合は腫瘍精査を考慮すべき.
乳癌, 大腸癌, 腎癌, 前立腺癌での報告例もある.
血管炎症候群
まとめ: 非典型的な膠原病の経過は傍腫瘍症候群を疑う
傍腫瘍症候群としてリウマチ性筋骨格症状を来した10例の報告 Mod Rheumatol, 2014; 24(3): 492–498
6例が血液腫瘍で, 固形癌は4例のみ.
多関節炎(RA様), 手掌筋膜炎, SLE様症状, PMR様症状, 成人Still病様の症状を呈する.
血液腫瘍と固形癌のリウマチ症状の比較.
症状では特に違いは無い.
Bulletin of the NYU Hospital for Joint Diseases 2012;70(2):109-14