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2019年7月1日月曜日

Marchiafava-Bignami病

アルコール多飲患者における脳症といえば, Wernicke脳症, Korsakoff症候群ですが,
さらにMarchiafava-Bignami病があります.
研修医時分, このよくわからない名前を呪文のように覚えている人は自分だけではないはず

脳梁障害を認める, ということまでは理解していますが, 改めて勉強をしなおしてみる.

Marchiafava-Bignami病
アルコール多飲や低栄養に合併する稀な中枢性疾患
・脳梁の脱髄, 壊死を生じる

脳梁を障害することで脳梁離断症候群(disconnection syndrome)を呈する
脳梁離断症候群は障害部位により症状が異なる.
大きく6種類の症状/所見に分類される(Jpn J Neurosurg 2009;18:179-186)

1: 左右対象の情報伝達障害
・例: 片方の手で手指のパターンを作り, それを反対の手で表現させる(閉眼で言語で表現しないようにする)
・関節位置覚を評価しており, 他に触覚や立体覚などもそれぞれ評価

2: 左半球機能の伝達障害
・左半球が優位半球である場合, 脳梁離断では左手, 左視野, 左耳などのが関与する言語処理・言語反応・行為の反応が障害される
・左手の失行: 麻痺がなく, 命令は理解しているのに左手の運動がうまくできない. 命じられた動作が左側で困難な場合はパントマイム失行, あるいわ脳梁性失行と呼ぶ
・左手の失書: 左手で書かせると文字を思い出せない, 誤った文字を書く
・左手の触覚性呼称障害, 左手の触覚性失読: 左手で触った物品を呼称できない, なぞった文字を読むことができない
・左視野の呼称障害, 失読: 左視野で見た物品や文字が呼称できない
・左耳の言語音消去: 左耳から入った言語が処理されない

3: 右半球機能の伝達障害
・右手の構成障害: キツネ型などの手指パターンの模倣障害立方体の模写で歪みが見られる. または積み木の組み合わせの障害
・右手の反応, 言語反応における左半側空間無視: 右手で反応する場合や言語で反応する場合のみ左半側空間無視を生じる. これを脳梁性無視と呼ぶ.(左半球は右視空間, 右半球は左視空間と弱い右視空間に注意機能を持つため, 脳梁離断では左半球には左空間からの情報が来ないため)

4: 左右半球間の抑制経路の破綻
・拮抗失行: 右手の随意運動により触発される左手の随意運動障害
・他人の手兆候: 左手が自分の意図と関係なく振る舞う現象. ゆっくりと空を探るような無目的かつ非定型な動き
 一定の運動的特徴はなく, 何かに触れると撫でたり, 避けたりする点でアテトーゼやジストニアとは異なる.
道具の強制的使用: 眼前に置かれた対象を, 意図に反して強迫的に利き手が使用してしまう

5: 左右の協調, 制御の障害
・左右手の協調運動障害: 両手で時空間ともに連続した動作が不良となる現象

6: 其の他
意図の拮抗: 立つ, 座る, 部屋をでる・入るなど左右手の動作の拮抗という枠では説明できない体幹動作を含む全身性の拮抗動作
・Agonistic dyspraxia: 一側の手で動作を命じられても, その手ではなく, 対側の手で施行してしまう現象
・脳梁性吃音・構音障害: 後天性吃音の責任病変の1つに脳梁がある
・記憶障害: 非言語性の記銘力低下

MBDの画像所見
(Case Rep Radiol. 2014;2014:609708.)
 ・T1強調画像では脳梁の低信号, T2協調画像では高信号域が認められる

(Case Rep Radiol. 2014;2014:609708.)
T1造影MRIでは病変の造影不良域が認められる.
環状断FLAIRでは脳梁中心の低信号所見(空洞を示唆)を認め, 周囲は高信号(活動性炎症)を認める

(Acta Neurol Belg. 2019 Jun;119(2):275-277.)
・画像所見の一部は可逆性.
 ABCは初診時, DEFはビタミンB1補充後8日で評価

(Acta Neurol Belg. 2019 Jun;119(2):275-277.)
・ヤマネコの耳兆候(ears of the lynx)と呼ばれる脳梁膝とその周囲の前頭葉の高信号域所見もある. これら所見も可逆性
 ABCが初診時、EDFは8日後

画像所見を伴い診断されたMBDMBDミミック症例を比較した報告
(J Neurol Neurosurg Psychiatry 2014;85:168–173. )
・ミミック症例はアルコール多飲や低栄養がない可逆性の脳梁病変を有する群を抽出(脳梗塞, てんかん, 低血糖など)
・MBDは男性例が8割と多く, アルコール多飲が92.8%, 栄養障害39.8%

MBDの症状
・意識障害, 歩行障害が多い
 錐体外路症状やDisconnection特異的といえそう

両群における脳梁病変の分布
・脳梁全体の所見が多い
・脳梁膨大部のみではミミック症例との鑑別は困難.

参考:
R: rostrum 脳梁吻
G: genu 脳梁膝
B: body
脳梁体部, または脳梁幹 truncus
S: splenium 脳梁膨大部

治療アウトカムと予後不良への関連因子

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