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2019年7月11日木曜日

DPP-4阻害薬とGLP-1作動薬の併用?

入院患者でDPP-4阻害薬とGLP-1阻害薬を併用している患者さんがいた.
正直この組み合わせはまだ見たことがなく, 自分が知る限りのGLP-1作動薬のRCTでもDPP-4阻害薬との併用を評価したものは知らない.

そもそも双方ともインクレチン関連の薬剤であり, 併用する意味があるのかどうかもよくわからなかった. ということで論文を漁ってみた.


ところが併用を評価したStudyは全然みつからない.
ググるとイーライリリーのHPには以下の記載があった

デュラグルチドとジペプチジルペプチダーゼ-4DPP-4)阻害剤はいずれもグルカゴン様ペプチド-1GLP-1)受容体を介した血糖降下作用を有していますので、併用した場合に保険償還の請求が通らないケースがあるようです。併用した場合に保険償還の請求が通るか否かについては地域の支払基金にお問い合わせください。

デュラグルチドとDPP-4阻害剤を併用した臨床試験は実施されておらず、安全性、有効性は検討されていません(20179月時点)。

さらに色々調べてみると, シタグリプチン(ジャヌビア®)とエクセナチド(バイエッタ®)の併用のStudyが見つかった.

(Diabet. Med. 29, e417–e424 (2012) )
Sitagliptin(ジャヌビア®)とメトフォルミンでもコントロール不良の2DM患者を対象としたDB-RCT.
・患者は18歳以上の2DM, BMI 20-45, Sitagliptin 100mg/d, Met ≥1500mg/d3ヶ月以上使用しても, HbA1c 7.1-9.0%を満たす群.
上記以外の血糖降下薬, インスリン使用患者は除外

SitagliptinExenatide(バイエッタ® 週2回投与)に切り替える群
Exenatideを追加する群に割り付け, 20wk継続. HbA1cの変化を比較した

母集団

アウトカム

・Exenatide追加群の方がよりHbA1cの低下は良好となる.
 追加群では-0.68±0.08%
 切替群では-0.38±0.09%
・HbA1c<7.0%を達成したのは追加群で41.7%, 切替群で26.6%

血糖値(mmol/L)の変化

・mg/dL換算ではx18する
追加群では, 食後血糖は有意に低下する
 早朝もやや低下する可能性が高い

体重変化
・両群とも体重減少効果は良好であり追加群では2.20kg[1.73-2.67]の低下
 切替群では2.58kg[2.08-3.08]の低下, 両者で有意差なし

低血糖, 副作用
・重度の低血糖は切替群で1, 追加群では低血糖エピソードは無し
・夜間低血糖は切替群では無し, 追加群では3

他の副作用(追加群 vs 切替群)
・悪心 10.2% vs 15.7%
・嘔吐 3.1% vs 10.2%
・頭痛 7.0% vs 4.7%
・副作用による中断 15.6% vs 24.4%

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ということから, DPP-4阻害薬にGLP-1作動薬を併用することで, さらなる血糖コントロール改善が見込める. 副作用は有意差は無いが, N不十分であろう.

ところで, Exenatide自体のHbA1c低下効果は, 他のRCTを見ると, 
 -0.87±0.09% (Lancet 2009;374:39-47)

 -1.5%程度

(Lancet 2010;376:431-9)

 -1.5±0.05% (Lancet 2010;375:2234-43)

週1回製剤を比較したMetaより(上記論文では週2回投与)
(Ann Intern Med. 2016;164:102-113. )
・EOW: Exenatide 週1回投与 のHbA1c低下は1.0-1.5%程度

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DPP-4阻害薬以外の薬剤(主にメトフォルミン)にGLP-1阻害薬を加えた場合, そのHbA1c低下効果は1-1.5%は見込めるが, 今回のDPP-4阻害薬を併用している場合は0.7%であり, 他の報告と比較してHbA1c低下効果は低い印象がある.

DPP-4阻害薬との併用ではHbA1c低下効果は競合してしまっている可能性がある点に注意.

腎不全でメトフォルミンが使用しにくい, またSUやグリニドが使いにくい, 高齢者や非肥満患者でSGLT2阻害薬も使いにくいなど, 他に使用できる薬剤がない場合は併用はありと思われる.