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2016年4月4日月曜日

周術期における輸血閾値: 心血管疾患既往がある場合はRestrictiveは避けたほうがよいかも

赤血球輸血を行う閾値と予後への関連を評価した報告は様々なところから出ている.
主にHb 7-8g/dL以下で輸血を考慮するRestrictive strategyと9-10g/dL以下で輸血を考慮するLiberal strategyでの比較が多い.

31 RCTs, N=9813 のMeta. (BMJ 2015;350:h1354)
・Restrictive vs Liberal transfusion strategyで比較.
 Restrictiveは輸血閾値 Hb 7~9g/dL
 Liberalは9-11g/dL程度としている
アウトカム
・全死亡リスク RR 0.86[0.74-1.01]と有意差なし.
・MIリスク RR 1.28[0.66-2.49] と有意差なし

これは外傷, 急性出血, 周術期, 重症管理どの患者群でも有意差なし
・外傷, 急性出血群 RR 0.85[0.05-15.82]
・周術期 RR 1.06[0.76-1.49]
・重症管理 RR 0.92[0.80-1.06]

輸血は多い程, 感染のリスクとなるため, 閾値が低くても予後が変わらないならばそちらの方が資源の観点からも良い.
・輸血量についてのRCT(Restrictive vs Liberal group) 18 trialsのMeta.
・Restrictive群でより重大な感染症リスクが低い.
(JAMA. 2014;311(13):1317-1326)


周術期ではどうか?

心臓外科手術における輸血閾値を比較した6 RCTs, 非心臓外科手術における閾値を比較した19 RCTs, 39のObservational trialsのMeta-analysis.
(Lancet Haematol 2015; 2: e543–53)
・Liberal vs restrictive thresholdsと, 予後を比較.
アウトカム
・どちらの閾値でも心臓外科, 非心臓外科手術における生存率や合併症に有意差はない.

では, 心血管疾患の既往がある患者群の周術期における輸血閾値はどうか?

心血管系疾患の既往があり, 心臓外科手術を除く外科手術を予定されている患者群を対象として, Restrictive vs Liberal strategiesを比較したMeta.
(BMJ 2016;352:i1351)
・30日死亡率と心血管イベント合併率を評価.
・患者はACS, 虚血性心疾患の既往, 脳卒中, TIA, PADがある患者群
・7 RCTsで評価. 輸血閾値はRestrictiveで7-8g/dL, Liberalでは9-10g/dL
アウトカム
・30日死亡リスクは両者で有意差なし(RR 1.15[0.88-1.50])
MI, ACS, 心停止はRestrictive群で有意に上昇(RR 1.78[1.18-2.70])
・急性心不全は有意差なし(RR 0.63[0.22-1.81])

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以前上部消化管出血患者における輸血閾値について記載したが、それでもRestrictiveとLiberalで予後は変わらない結果であった.
基本的に今現在よく知られているStudyでは, 両者で予後は変わらないとする報告が多い. 

今日(4/4)に出たBMJの論文もそんな結論なのだろうな、と思ってチェックしたら、心血管疾患既往がある患者では注意したほうが良いだろうという結果でした.

自戒の意味も込めて、
「Restrictive一択でしょっ! 」ではなくて,
患者側の要素(心機能や動脈硬化, ACSリスク) - 侵襲の度合い(手術, 処置, 疾患) - 輸血による副作用をよく考慮して決めたいものです. 

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