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2016年4月14日木曜日

Multicentric Castleman Disease(MCD)

キャスルマン病には局所のリンパ節腫大が認められるLocalized CDと
複数のリンパ節腫大が認められるMulticentric CD(MCD)がある

元々は,  Massachusetts General Hospitalの病理医であったBenjamin Castlemanが1956年に13例の非腫瘍性の縦隔リンパ節腫大を報告したのが最初.
これはLocalized CDであり,  縦隔が60-75%と最多. 頸部20%, 腹部10%.
 全身症状を来すことは稀であった.
(Acta Oncologica Vol. 43, No. 8, pp. 698-704, 2004)

MCDは多部位のリンパ節腫大, 多臓器浸潤, 全身症状を認めるCD.
Localized variantよりも少なく, 60歳台で多く, より侵襲的な経過をたどる.
 米国では毎年4353例のCDが診断され, そのうち1000例がMCD
(Blood. 2014;123(19):2924- 2933)

キャスルマン病はリンパ節の病理所見により, Hyalinized vascular type, Plasma cell variant, Mixedに分類される.
Hyalinized vascular type: 局所性CD(LCD)の90%を占める.
小型〜中型のgerminal follicleを多数認め, ヒアリン化した血管が囲み, “onion peel”様に見える. MCDでは3-10%と少ないが, 全身症状と関連性がある.

Plasma cell variant: LCDの10%のみだが, MCDの80-90%を占める.
 濾胞間の形質細胞浸潤, 毛細血管, 小静脈の増生が認められる. 血管はヒアリン化されていることもある.
(Acta Oncologica Vol. 43, No. 8, pp. 698-704, 2004)

というのが前提.

Multicentric Castleman Disease (MCD)

複数領域のリンパ節腫脹を呈するキャスルマン病のタイプ. 全身症状を呈することが多く, しばしば不明熱の鑑別でも重要となる.

MCDは病理, 原因に応じて以下分類される.
原因ではPrimary, Secondaryで分類
PrimaryではHHV-8に関連性, 非関連性(特発性MCD)
 日本国内ではHHV-8関連性はほぼ認めない. 
 HIV感染症が広まり, カポジ肉腫に関連したMCDの認知も広がった
  AIDS由来カポジ肉腫病変からKaposi’s sarcoma herpesvirus(KSHV), 別名Human herpesvirus 8(HHV8)が検出され, MCDにHHV8関連性, 非関連性という分類が作られた.
(Acta Oncologica Vol. 43, No. 8, pp. 698-704, 2004)
 従って日本国内にはまだAIDSは少なく,  HHV8関連性は海外と比較して稀と言える. 今後は増加する可能性もあり. 

・SecondaryではHIV感染, IgG4関連疾患, POEMS症候群, 悪性リンパ腫によるもの.
(Blood. 2014;123(19):2924- 2933) 

病理ではIPL(idiopathic plasmacytic lymphadenomapthy), non-IPLで分類される
(J Clin Exp Hematop 2013;53:57-61)
・IPLタイプはPolyclonal hyperimmunoglobulinemia, 正常germinal centers, 形質細胞のシート浸潤をリンパ節のInterfollicular areaに認める
・non-IPLタイプは女性, 高齢者に多く, 胸水, 腹水を伴う例, 自己免疫疾患を合併する例, Mixed-type, HV-type CDの組織病変をとることが多い.

キャスルマン病様のリンパ節所見を呈する疾患の分類まとめ
(Blood. 2014;123(19):2924- 2933) 

日本国内ではHHV-8に由来するMCDはまだ少ないため,
特発性MCDについてさらにまとめる

iMCD
臨床所見
一般的にMCDは40-50歳台で多く, HIV関連性ではより若年で発症する.
・全身倦怠感, 夜間の発汗, 悪寒戦慄, 発熱, 食欲低下, 体重減少で受診.
・多発性のリンパ節腫大, 肝脾腫, 腹水, 浮腫, 胸水, 心嚢液貯留を認める.
・血液検査ではPLT減少, 貧血, 低Alb血症, 免疫グロブリン高値となる.
・IL-6を介した炎症反応を生じ, 汎血球減少や呼吸不全, 腎不全, ショックとなることもある.
 末梢神経障害, 髄膜炎, CNS障害も合併し得る.(末梢神経障害はPOEMS症候群として生じることもある)
・HIV関連性ではより肺障害が多い. 
・MCDはNHLのリスクにもなる
(Acta Oncologica Vol. 43, No. 8, pp. 698-704, 2004)

検査所見
・血液検査所見では, 貧血, ESR亢進, CRP, IL-6の上昇, VEGF, フィブリノーゲンの上昇, 抗核抗体, 抗赤血球抗体, 抗血小板抗体も認められる.
・他には蛋白尿, 低Alb血症, 多クローン性骨髄形質細胞の増加
 多クローン性γグロブリン血症を伴う.

Literature Searchにて, 特発性MCD症例を抽出し, 評価.
(Lancet Haematol 2016; 3: e163–75)
・Case reportsより128例, Clinical trialsおり127例を抽出.
 Clinical trialsでは患者毎のデータがないため, 症状, 所見は前者からのみ.

発症年齢分布

症状, 所見

・組織所見はPlasmacytic, Mixedが多いが, 全体的に分布している.
・症状は発熱, 盗汗, 体重減少, 浮腫, 腹水, 胸水貯留, リンパ節腫大, 肝脾腫が多い.

血液検査所見
炎症反応, 貧血, PLT低下, 高γグロブリン血症, 腎不全が認められる.


iMCDでは血球減少, 全身の浮腫, 腹水, 胸水貯留などが認められやすく, それらを総じてTAFRO症候群タイプのMCDと呼ばれる.
・TAFRO症候群合併はMCDの予後には影響しない.Lancet Haematol 2016; 3: e163–75)

TAFRO症候群とは
TAFRO症候群は全身性の炎症性疾患で, 自己免疫疾患やリンパ増殖性疾患によらないもの.
骨髄, 胸膜, 腹膜, 腎臓, 肝臓, リンパ節を侵すが, 原因は不明.
・血液: 血小板減少, 小球性貧血,
・炎症: 漿膜炎(胸膜, 腹膜炎), 腹水貯留, 胸水貯留
・腎障害
・骨髄線維症
・免疫異常: リウマチ因子, PLT-IgG, 抗甲状腺抗体, 直接クームス陽性
・抗核抗体
・Polyclonal IgG増多は少なく, 主に<4000mg/dL程度.
・ALPの上昇, LDHの低下, IL-6, Vascular endothelial growth factor(VEGF)の増多
・リンパ節腫大(主に<1.5cm)
・組織ではMixed-typeが主, HV type CDは少ない.
(J Clin Exp Hematop 2013;53:57-61)

25例のTAFRO症候群のReview
発症年齢は50歳[23-72], 
 血小板減少が21/25, 
 Anasarcaが24/25,
 発熱 21/25,
 臓器腫大 25/25
 Reticulin fibrosis 13/16
・これらの患者では, 腹痛, ALP上昇, 急性腎不全を伴う頻度が高い
(Am. J. Hematol. 91:220–226, 2016.)

TAFRO症候群の組織所見
リンパ節は多数のLymphoid follicleを認め, Germinal centerは萎縮している.
・Follicleは小型のHV-typeの組織とEpithelioid typeの組織で形成.
・濾胞間は中等度〜高度の血管増生を認め, 内膜細胞を含む小静脈を認める
・中〜大型のシート状の形質細胞も高頻度で認められる. 
・幼若な形質細胞, Immunoblastは少ない.
・免疫染色ではκ:λ比が2:1となるようなPolyclonalな軽鎖, 重鎖ではIgλ, IgAが多く, IgMは少ない.
・CD57+ follicular T-cellはgerminal centerに多く認められる
(J Clin Exp Hematop 2013;53:57-61)

TAFRO syndromeとMCDの比較

浮腫, 胸腹水が著明で, PLT低下が顕著.
・IgGは正常で, MCDは反対にPolyclonalに上昇する.
(J Clin Exp Hematopathol 53(1) : 87-93, 2013)

MCDにおけるTAFRO症候群の診断クライテリア
(Am. J. Hematol. 91:220–226, 2016.)