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2015年10月9日金曜日

IFIS: Intraoperative Floppy Iris Syndrome

α1受容体阻害薬使用中の患者では, 白内障手術(水晶体超音波乳化吸引術)中の縮瞳, 虹彩のたわみ, 虹彩の逸脱が生じることがある.
・このような現象をIntraoperative Floppy Iris Syndromeと呼び, 2005年ごろに提唱された比較的新しい概念.
・特にタムスロシン使用患者で高リスクとなり, BPHで治療中の患者では要注意.
・投薬を中止してもリスクは残存する.
(Curr Opin Ophthalmol 2009;20:37–41)

α1受容体阻害薬は膀胱の尿道括約筋を弛緩させる.
・α-1A, 1B, 1D受容体が判明しており, α-1A受容体は前立腺, 尿道, 膀胱頸部に多く分布している
・タムスロシンは選択性α-1A受容体阻害作用を持ち, 非選択性α-11阻害薬と比較して20倍の親和性を持つ
・虹彩括約筋もα-1A受容体をもつため, タムスロシンの使用により瞳孔は収縮する.
(Curr Opin Ophthalmol 2009;20:37–41)

・各α-1阻害薬の受容体選択性
 タムスロシン: α1A = α1D > α1B
 テラゾシン: α1A = α1D = α1B
 ドキサゾシン: α1A = α1D = α1B
 アルフゾシン: α1A = α1D = α1B
(Trans Am Ophthalmol Soc 2009;107:234-241)
他にIFISの原因となる薬剤
・α-1受容体阻害薬以外にBPHで使用する薬剤もIFISの原因となる.
 Saw palmetto(ノコギリヤシ, BPHに使用するサプリメント) α阻害作用を有する
 Finasteride(プロペシア, 抗アンドロゲン薬)
 抗精神病薬, 抗うつ薬, 一部のβ阻害薬で報告がある

薬剤以外に関連する因子
・加齢や糖尿病は縮瞳に関連し, IFISのリスクを上昇させる因子となる
・他に高血圧や心不全も関連.

白内障手術を行った511例, 706件の手術の解析では, (Retrospective)
・40件の手術(27名)でα-1阻害薬を使用
 25件の手術(16例)でタムスロシンを使用しており
 15件の手術(11例)で他の非選択性α-1阻害薬を使用
・α-1阻害薬を使用していた27例全例で術前の散瞳は不良
 40件の手術のうち68%が術中の散瞳も不十分であった.
・IFISの診断がされたのはタムスロシン使用群では10/16(63%)
 非選択性α-1阻害薬使用患者では0例.
(J Cataract Refract Surg 2005; 31:664–673)

白内障手術を行った741例, 900件の評価(Prospective)ではIFISは16例(2.2%)で診断.
・14/16でタムスロシンの使用歴があり.
 他の2例は過去のタムスロシン使用歴があったが, 1年以上まえに中止していた.
・IFIS非合併例の725例でタムスロシンを使用していた患者なし
(J Cataract Refract Surg 2005; 31:664–673)

IFISのリスク因子を評価したMeta-analysis

(Ophthalmology 2011;118:730–735)

OR
タムスロシン
393.1[159.5-968.6]
Alfuzosin
9.7[2.0-48.7]
テラゾシン
5.5[1.3-23.0]
ドキサゾシン
6.4[0.9-44.1]
高血圧
2.2[1.2-4.2]
糖尿病
1.3[0.7-2.2]

IFISでは術中に縮瞳が生じ, また, 虹彩が切開部近辺まで逸脱するため, 手術が困難となる.
・水晶体の後嚢破裂や硝子体喪失, 虹彩支質萎縮, 虹彩逸脱, Capsulorhexis tear, 虹彩離断, 前房出血のリスクとなる
・白内障手術で認める合併症の原因で最も多いものがIFIS.
(Curr Opin Ophthalmol 2009;20:37–41)

IFISの発症を予測する
α1-受容体阻害薬使用患者, タムスロシン使用患者, Control群において, 手術1ヶ月前に散瞳検査を施行.
・散瞳時の瞳孔径はControl > 非選択性α1-ARA > タムスロシン使用群

IFIS合併, 重症度と散瞳時の瞳孔径は相関する
術前1Mでの散瞳時の瞳孔 <7.0mmは感度 73%, 特異度 95%でIFIS合併を示唆する
(J Cataract Refract Surg 2011; 37:1447–1454)


IFISの対応
薬剤の中止
・α-1受容体阻害薬を術前に中止しても, IFISの予防や重症度の緩和にはならない可能性が高い
・タムスロシンの中止により, 術中の瞳孔径の拡大効果は期待できる
・房水中のタムスロシンの血中濃度は血中濃度と相関はせず, 薬剤中止して28日後でも房水中にはタムスロシンが残存している報告もある.
・薬剤の中断や変更はせず, 眼科医に使用していることを報告することを推奨する医師もいれば, Alfuzosinへの変更を推奨する医師もいる(Alfuzosinは効果は同等で副作用が少ないとされる, ただし日本では未承認)
(Acta Ophthalmol. 2009: 87: 704–708)

薬剤による治療
・眼球腔内へのPhenylephrine, Epinephrineの投与はさらなる散瞳を促し, IFISをコントロール可能との報告がある
・アトロピン点眼の術前投与も多く行われるが, それのみでは不十分なことが多い.
・術中のViscoadaptive ophthalmic viscosurgical devices(OVD)はIFISを認める白内障患者の手術で有用.
・他にはIris retractors, Expansion ringを使用する方法もある
(Curr Opin Ophthalmol 2009;20:37–41)

具体的な薬物療法
術前の治療例(これらを組み合わせることが多い)
・アトロピン1%点眼を1回/日, 10日間継続
・アトロピン1%点眼, ブリモニジン(アイファガン®)を術前1時間前に2回点眼する.
・アトロピン1%点眼を10分毎に3回点眼
・アトロピン眼軟膏を術前に塗布
術中の治療例
・Phenylephrine 2.5%液を腔内に7滴投与
・Epinephrine 1:100000を0.9mL腔内へ投与 (アドレナリン0.1%注 1mlを生食で100mlに希釈し, 0.9ml使用する)

(Trans Am Ophthalmol Soc 2009;107:234-241)

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