Erythromelalgia(EM), 肢端紅痛症
Erythro(red) melos(limbs) algos(pain) = 上下肢の発赤と疼痛
Erythro(red) melos(limbs) algos(pain) = 上下肢の発赤と疼痛
・下肢の灼熱感, 発赤, 皮膚温の上昇を示す疾患. 冷却により症状は緩和する.
・一般的に夜間に症状が出現, 増悪する例が多い
症状の持続時間は様々で, 数時間~数日.
・遺伝子変異が原因となるPrimaryと, 基礎疾患に付随するSecondaryがある.
・一般的に夜間に症状が出現, 増悪する例が多い
症状の持続時間は様々で, 数時間~数日.
・遺伝子変異が原因となるPrimaryと, 基礎疾患に付随するSecondaryがある.
・頻度は不明であるが,Norwayでは発症率 0.25/10万人年, 有病率は2/10万.
(J Vasc Nurs 2010;28:67-71) (J Intern Med 1997;242:191-7)
(J Vasc Nurs 2010;28:67-71) (J Intern Med 1997;242:191-7)
Secondary Erythromelalgiaに関連する疾患
(J Vasc Nurs 2010;28:67-71)
EMの原因, 機序
・Eryrhtomelalgia患者では, 組織的には局所的な低酸素と充血を認める.
生理的, 解剖的に微小血管におけるAVシャントがあると, その先の栄養血管が阻血状態となり, 末梢組織の低酸素が生じる. その反動で血管拡張を生じるとされる.
・ErythromelalgiaとRaynaud現象は類似している.
Raynaud現象は寒冷刺激により血管収縮, 阻血が生じ, その後血管拡張が生じることで手指が発赤する現象.
Raynaud現象ではこの血管収縮が顕著となっている状態
Erythromelalgiaは血管拡張が顕著となっている状態と説明できる
Erythromelalgia患者の皮膚温を評価したStudyでは, 非発赤時の皮膚温はControl群よりも低いことがわかっており, 無症候性の血管収縮の後に血管拡張が生じ, Erythromelalgiaが出現している説が考えられる.
生理的, 解剖的に微小血管におけるAVシャントがあると, その先の栄養血管が阻血状態となり, 末梢組織の低酸素が生じる. その反動で血管拡張を生じるとされる.
・ErythromelalgiaとRaynaud現象は類似している.
Raynaud現象は寒冷刺激により血管収縮, 阻血が生じ, その後血管拡張が生じることで手指が発赤する現象.
Raynaud現象ではこの血管収縮が顕著となっている状態
Erythromelalgiaは血管拡張が顕著となっている状態と説明できる
Erythromelalgia患者の皮膚温を評価したStudyでは, 非発赤時の皮膚温はControl群よりも低いことがわかっており, 無症候性の血管収縮の後に血管拡張が生じ, Erythromelalgiaが出現している説が考えられる.
現に患者では皮膚は発赤している一方で冷感を訴える患者もいる.
・Primary EMは遺伝子変異が原因となる.
Primary EMにはSCN9A遺伝子変異の関連が確認されている.
SCN9A遺伝子はVoltage-gated sodium channel, Nav 1.7のαサブユニットをコードしている遺伝子.
痛覚繊維上に存在し, 神経性疼痛の原因となる.
変異部位は複数報告がある. 発症年齢も様々で小児~高齢者まであり得る.
(J Am Acad Dermatol 2000;43:841-7.)(PLoS ONE 8(1): e55212.)(Orphanet Journal of Rare Diseases (2015) 10:127)
・Primary EMは遺伝子変異が原因となる.
Primary EMにはSCN9A遺伝子変異の関連が確認されている.
SCN9A遺伝子はVoltage-gated sodium channel, Nav 1.7のαサブユニットをコードしている遺伝子.
痛覚繊維上に存在し, 神経性疼痛の原因となる.
変異部位は複数報告がある. 発症年齢も様々で小児~高齢者まであり得る.
(J Am Acad Dermatol 2000;43:841-7.)(PLoS ONE 8(1): e55212.)(Orphanet Journal of Rare Diseases (2015) 10:127)
Erythromelalgia 87例の解析
(J Intern Med 1997;242:191-7)
・2/3がPrimaryで, 3/4が慢性経過.
・発症年齢はPrimaryは43.4yr[7.8-76.6], Secondaryは49.1yr[18.9-81.3]
・男性26名, 女性61名と, 女性の方が多い. それはPrimary, Secondaryでも同じ
Scondaryの原因としては, 以下の疾患が認められた
・2/3がPrimaryで, 3/4が慢性経過.
・発症年齢はPrimaryは43.4yr[7.8-76.6], Secondaryは49.1yr[18.9-81.3]
・男性26名, 女性61名と, 女性の方が多い. それはPrimary, Secondaryでも同じ
Scondaryの原因としては, 以下の疾患が認められた
血液疾患
|
真性多血症(4), 二次性多血症(1),
CML(1), 先天性球状赤血球症(1) |
7
|
代謝性疾患
|
DM1(5), DM2(4), 高Chol血症(1)
|
10
|
膠原病
|
SLE(2), Discoid lupus(1), RA(1)
|
4
|
局所的微小循環障害
|
コレステロール塞栓(1)
|
1
|
薬剤性
|
ヨード造影剤(1), Felodipin(1), Nifedipine(1)
|
3
|
筋骨格系
|
坐骨神経術後合併症, 坐骨神経痛,
腱周囲炎, 手根管症候群 |
4
|
感染症
|
AIDS(CMV), 細菌感染症
|
2
|
腫瘍性
|
大腸癌
|
1
|
その他
|
凍傷(3), 動脈硬化(1), 転換性ヒステリー
|
5
|
罹患部位の分布
部位
|
|
Total(87)
|
Primary(48)
|
Secondary(37)
|
Syndrome(2)
|
上肢のみ
|
片側
|
2
|
0
|
2
|
0
|
|
両側
|
4
|
2
|
2
|
0
|
下肢のみ
|
片側
|
4
|
2
|
2
|
0
|
|
両側
|
48
|
26
|
20
|
2
|
上下肢
|
片側
|
0
|
0
|
0
|
0
|
|
両側
|
29
|
18
|
11
|
0
|
下肢のみが55%と半数を示す. Primary, Secondaryは同等
片側のみでは殆どSecondaryが占める.
片側のみでは殆どSecondaryが占める.
(J Intern Med 1997;242:191-7)
Erythromelalgiaの診断
(J Am Acad Dermatol 2000;43:841-7.)
診断は臨床所見, 病歴で行う. 特異的な検査はない. 除外診断が必要
・除外が必要な疾患: 蜂窩織炎, 皮膚炎, CRPS, SLE, Raynaud現象
末梢神経障害, Fabry病, 末梢動脈疾患, 静脈不全, 痛風
・重要なものはComplex regional pain syndrome(CRPS1)
発赤, 浮腫, 疼痛を伴い, 冷水につけると改善するなどErythromelalgiaとにている.
外傷後に生じるが, Erythromelalgiaも外傷後の発症例がある.
診断は臨床所見, 病歴で行う. 特異的な検査はない. 除外診断が必要
・除外が必要な疾患: 蜂窩織炎, 皮膚炎, CRPS, SLE, Raynaud現象
末梢神経障害, Fabry病, 末梢動脈疾患, 静脈不全, 痛風
・重要なものはComplex regional pain syndrome(CRPS1)
発赤, 浮腫, 疼痛を伴い, 冷水につけると改善するなどErythromelalgiaとにている.
外傷後に生じるが, Erythromelalgiaも外傷後の発症例がある.
(J Vasc Nurs 2010;28:67-71)
Erythromelalgiaの治療
(J Am Acad Dermatol 2000;43:841-7.)
外用薬
・カプサイシンクリームは疼痛緩和効果が軽度期待できるが, 血管拡張, 発赤の増悪リスクがあるため注意.
内服薬
・アスピリン: 本態性血小板増多症, 多血症に伴うErythromelalgiaで効果が期待できる.
・SSRI, TCAなど: ベンラファキシン(イフェクサー®), セルトラリン(ジェイゾロフト®), パロキセチン, アミトリプチリンなど では症状の緩和効果が期待できる. ただし, 寛解までは困難.
・抗てんかん薬: ガバペンチン, プレガバリンでは疼痛緩和効果が期待できるが, 寛解までは難しい
・Ca阻害薬: ニフェジピンやジルチアゼムなど.
血管収縮期を予防することで, その後の拡張を予防する目的.
症例報告では効果は一部で認められる.
一方で, CCBが原因となることもあるため注意.
・Misoprostol(サイトテック®): プロスタグランジン作用により毛細血管を拡張させ, 組織の血流, 栄養を改善させる.
末梢のAVシャントも低下する.
外用薬
・カプサイシンクリームは疼痛緩和効果が軽度期待できるが, 血管拡張, 発赤の増悪リスクがあるため注意.
内服薬
・アスピリン: 本態性血小板増多症, 多血症に伴うErythromelalgiaで効果が期待できる.
・SSRI, TCAなど: ベンラファキシン(イフェクサー®), セルトラリン(ジェイゾロフト®), パロキセチン, アミトリプチリンなど では症状の緩和効果が期待できる. ただし, 寛解までは困難.
・抗てんかん薬: ガバペンチン, プレガバリンでは疼痛緩和効果が期待できるが, 寛解までは難しい
・Ca阻害薬: ニフェジピンやジルチアゼムなど.
血管収縮期を予防することで, その後の拡張を予防する目的.
症例報告では効果は一部で認められる.
一方で, CCBが原因となることもあるため注意.
・Misoprostol(サイトテック®): プロスタグランジン作用により毛細血管を拡張させ, 組織の血流, 栄養を改善させる.
末梢のAVシャントも低下する.
侵襲的治療
・交感神経ブロック, 硬膜外ブロック, 交感神経切除術が行われることがある.
・交感神経ブロック, 硬膜外ブロック, 交感神経切除術が行われることがある.
Misoprostolの効果:
微小血管のAVシャントにより, 栄養血管が阻血となる説から, 血管拡張作用のあるプロスタグランジンが症状緩和効果を示す可能性がある.
EM患者21例を対象としたDouble-Blind, Crossover, Placebo-Conpared Study.
(J Invest Dermatol 122:587–593, 2004)
・Misoprostol(サイトテック®) 400-800mg/日投与群 vs プラセボ群に割つけ, 6週間継続.
その後投薬内容を入れ替えさらに6週間継続.
・アウトカムは投薬最終週におけるEMに由来する症状, 深部体温を上昇させた時の皮膚循環, 毛細血管, 疼痛の変化.
アウトカム
・Misoprostol群では疼痛スコア, Coolingスコア, 全体評価で有意な改善が認められる.
EM患者21例を対象としたDouble-Blind, Crossover, Placebo-Conpared Study.
(J Invest Dermatol 122:587–593, 2004)
・Misoprostol(サイトテック®) 400-800mg/日投与群 vs プラセボ群に割つけ, 6週間継続.
その後投薬内容を入れ替えさらに6週間継続.
・アウトカムは投薬最終週におけるEMに由来する症状, 深部体温を上昇させた時の皮膚循環, 毛細血管, 疼痛の変化.
アウトカム
・Misoprostol群では疼痛スコア, Coolingスコア, 全体評価で有意な改善が認められる.
・特に体温上昇させた際の疼痛の増悪はMisoprostol群では抑制される