DLBCLが強く疑われる患者さんにおいて, 単球数>1000が目についた.
しばしば単球増多を認める例はあるが, これはどのような意義があるのか, 調べてみた.
LymphomaとMonocytosis
・悪性リンパ腫患者では, しばしば診断時に単球増多が認められる. しかしその臨床意義は不明確であった.
・M-MDSC(Monocytic myeloid-derived suppressor cells)と呼ばれる免疫抑制細胞の亜集団が報告されている.
未熟な骨髄系細胞の不均一な集団よりなり, 顆粒球型, または単球型のいずれかに特徴づけられる.
免疫抑制機能を持ち, Hostの抗腫瘍免疫を抑制し, 悪性腫瘍寛容に関連していることがわかっている. また, 腫瘍の血管新生や転移にも関連している.
従って, Monocytosisは腫瘍の予後増悪に関連する可能性がある.
(Hematol Oncol. 2013 Jun;31(2):65-71.)
DLBCLとMonocytosis
単一施設において, 1996-2010年に診療したDLBCL 109例を解析
(Hematol Oncol. 2013 Jun;31(2):65-71.)
・HIV陽性やTransformed lymphoma, 免疫不全疾患に関連したリンパ腫は除外.
・単球>1000を超えるMonocytosisは17.6%であった.
・OSを減少させる因子は 高IPI, Monocytosis, 骨髄浸潤(+)が挙げられる.
・また, M-MDSCsの割合も健常人と比較して有意に多い結果であった.
(9.6%[5.6-19] vs 5.4%[4.8-7.7])
イスラエルとイタリアのDLBCLコホートより, 1993-2010年に登録された未治療症例1017例を解析.
(Haematologica. 2014 Jan;99(1):125-30.)
・Monocyteと予後の関係, またそのカットオフ値を評価
・Monocyte>610となる症例は35%, >1000は10%で認められた.
中央値は499[102-1413]/µL
・予後(5Y-OS)への関連
Monotytosisは有意に5Y-OSの増悪に関連する.
>630で死亡リスクの増大に関連するが, >1000ではさらにリスクは上昇する傾向.
Rituximab治療の有無に関わらず, リスク因子となる
Montevideo-Uruguayの2箇所の大学病院において, 2002-0217に Rituximabを含むレジメンで治療された171例のDLBCLを解析
(Rev Med Chile 2019; 147: 1553-1560)
・Primary CNS lymphomaは除外.
・Monocyto数と治療後のOS, Relapse free survivalの関連を評価した. (Cutoffは病院で異なり, >700, >1000をMonocytosisと定義している)
・母集団の単球数は620[40-3720]/µL , Monocytosisは33.3%で認められた.
R-IPIとMonocytosisで分けたOS
・R-IPI Good, PoorやMonocytosisは予後不良因子
・4Y-OSは
R-IPI very good群で100% R-IPI good群で73% R-IPI poor群で47%
・Median OSは
Monocytosis(+)群で44.9M[12.8-76.9] Monocytosis(-)群で131.6M[88.8-174.4]
R-IPIで分けた時のMonocytosisとRFS, OSの関連
・R-IPI 0-2(very good, good)群において,
Monocytosis(+)は有意にRFS, OSの短縮に関連 する
Monocytosis(-)は到達せず. Monocytosis(+)はRFS 12.8[3-22], OS 40.8[0-83]
・R-IPI >2(poor)群では,
Monocytosisの有無はRFSやOSの短縮に関連せず. (双方とも予後が悪い)
T cell lymphomaではどうなのか?
PTCL症例でMonocyteを評価していた94例の解析
(Blood (2012) 120 (21): 2647.)
・このうちMonocytosis(>800/µL)を認めたのが23%であり, 有意にOS増悪との関連が認められた.
Aggressive, non-primary cutaneous PTCL 251例の解析
(Blood (2012) 120 (21): 1608.)
・内訳はATLLが41%, PTCLが41%, PTCLU 11%, ALK(-)ALCL 4%, 他NKTCL, AILなど
・中央生存期間は10カ月間であり, 予後に関連する因子は
IPI score, PIT score, リンパ球数<1000, 単球数>800の4項目が認められた
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B細胞, T細胞に関わらず, 悪性リンパ腫においてMonocytosis(>800-1000)が認められることは予後不良因子となる.
IPIとは独立した因子であり, IPIにてVery good, goodの低リスク群においても, Monocytosisは予後不良因子となるため, 気にしておく価値はありそうである.