献本御礼
國松淳和先生が書かれた ”不明熱の本”です. 國松先生は他にも複数の不明熱本を書いています. この本の特徴は, なんといっても2010-2020年のおよそ11年間に発表された不明熱のケース報告をほぼ全て読み, それぞれの概略や一言コメントを添えているところです。 その数 五百六十いくつか。600近い症例です. まだ全部の症例コメントは読めていません. 一つ一つは短いですが, 自分としては情報量が多い, というか, それぞれの症例から受ける印象も大事に読んでいるため, 時間がかかります. その上で, この本を読んだ上での正直な感想を書いてみます. 感想その1: これは読み手をかなり選ぶ この本は読み手を選びます. おそらく, 研修医にはつまらないかもしれない. 後期や, スタッフレベルでもつまらなく感じるかも. 不明熱診療をある程度やってきており, 一般的な不明熱診療の基礎が出来上がっている医師に対しては, 新しい引き出しを, めちゃくちゃ沢山作るのに超役立ちます. 症例読みながら, 「へーーこういう疾患があるのか」「へーーこれが原因になるのか」と, 心の中でへぇ〜ボタンを押しながら次々に引き出しを構築する. これがもしかすると10年後, 20年後に役に立つことがあるかもしれない, と期待しながら作ってゆきます. どうせ忘れますが, 一度見ておくと次に気づきやすくなります. そういう用途で, この本は僕にヒットしました. と思っていたら, あとがきで 「読み手を選んで書いている」とか出てきて, ああーーーーやっぱね、と思いました. 感想その2: 「不明熱」とはなんだろうか? 症例集は不明熱症例のはずですが, 診断ついているんですよね. 全然不明熱じゃないじゃない. ほんとに診断のつかない不明熱は症例報告には含まれないよね, ということを改めて認識しました。 「一般的な病歴や身体所見, 検査では一見分からない発熱/炎症症例」が結局 「エビデンスや論文でわかる不明熱」であって, 真の不明熱はこのアプローチじゃ分からない. 分からないなりに, 病態や機序を推理して, 詰めて, 治療する, というアプローチが必要な症例というのは, そこまで多いものではないですが, 確実にあって, それは本当に難しいものだと思います. わかるものはわかる. わからないものは, 何しても, 誰に相談しても結局分からなくて・・・ 手探りで治療して, それがよくなろうが, 悪くなろうが, 症例報告にできなくて・・・ そっと心の症例ストックにしまわれる. そういうのが日の目をみる何かがあればいいのになぁ. 熱だけではなく, 色々な症状についてもそうです. そういうのは仕事(科)柄, 沢山経験します. これは本の感想というか、本を読んで思った雑感ですかね. |