サルコイドーシスでは, 肺外症状として筋骨格系の障害を認めることがあり,
しばしばリウマチ性疾患との鑑別が重要となる.
それぞれどのような特徴があるのだろうか?
関節症状, 障害
(Semin Respir Crit Care Med. 2010 August ; 31(4): 463–473.)
・サルコイドーシスによる関節症状は~25%程度で認められる
日本人の報告例は稀であり, 1.6%程度.
・関節症状は急性の一過性経過の関節症, 慢性持続性の2つあり,
慢性関節炎は急性よりも稀で1-4%程度.
急性の関節炎はLofgren症候群が有名.
結節性紅斑, 急性関節炎, BHL, 発熱を伴う
・急性関節症状は季節性が指摘されており, 春頃多く発症する.
・足関節炎が認められる例が77-100%と多い. 次いで膝, 手関節, MTPが多い
ENの頻度は25-87.8%と幅がある.
・急性関節炎はSelf-limitedであり, 基本的に対症療法. 一部で免疫抑制療法を考慮
慢性の関節炎は皮膚症状など肺外病変を伴うことが多い
・関節炎は左右対称性, 中〜大関節のOligoarthritis, Polyarteritis
・関節破壊やJaccoud変形を伴う
・指炎(Dactylitis)もあり. 左右対称性で第2-3指骨で生じやすく, MCP関節はスペアされる.
Lupus pernioを合併することもあり
・ReAやRAとの鑑別が重要.
・他には関節周囲炎, 肋軟骨の病変を呈することがある.
Sarcoid arthritisのCohort
急性関節炎のCohort: 発症2年以内の早期関節炎でEarly artrhritis clinicを受診した患者を前向きに評価したCohort study.
(Ann Rheum Dis 2002;61:499–504)
・期間中に受診した579例中, 55例でSarcoid arthritisを診断(4.4%).
Sarcoid arthritisの診断はBHL所見の合併の有無で行った.
・悪性腫瘍による肺門リンパ節腫大については, 経過のフォロー中に疑われる場合は組織検査を行い除外している.
・Sarcoid arthritisと診断された55例と, 他の炎症性関節炎症例524例を比較
対象群ではRA(31%), 分類不能(29%), 結晶性(11%), PsA(6%), OA, ReA,
SpAなど
・Sarcoid arthritis群はより若年であり
発症〜受診までも短期間である
・Sarcoid arthritisは3月〜7月の発症が多く, 冬季は少ない傾向
・急性関節炎の特徴は以下の通り;
76%が左右対称性に発症.
下肢(96%)の大関節に多い(95%)
特に足関節が98%(両側性は95%)と多い.
単一関節が2%, 少数(2-4)が87%, 多関節が11%
発熱はおよそ半数で認められた. ESRの亢進は84%
結節性紅斑は40%, 足関節周囲の色調変化(赤-青)は29%
アキレス腱の腱付着部炎が33%
・
両側足関節炎, 症状<2M, 年齢<40y, ENの4項目中
3項目以上を満たす場合, SAの可能性を上昇させる. 感度93%, 特異度99%急性+慢性関節炎のCohort: 11箇所のRheumatology centerにおいて, 2005-2017年に診療したSarcoidosis症例を後ろ向きに解析
(Int J Rheum Dis. 2018 Sep;21(9):1728-1733.)
・Sarcoid arthritisは117例認められた.
急性関節炎が88例, 慢性関節炎が29例.
(6ヶ月未満の関節炎を急性, 6ヶ月以上を慢性と定義.)
・41例は病理組織学的にSarcoidosisを診断.
残りの76例は臨床的に診断(BHL, EN, ぶどう膜炎, 顔面神経麻痺など)
・急性関節炎のうち45/88はLofgren症候群に分類.
慢性関節炎のうち1/29はHeerfordt症候群に分類.
急性, 慢性双方とも足関節炎の頻度が8-9割と高い
慢性関節炎では膝関節やMTP, 手関節, 肩関節炎の頻度が高い
発熱やENは半数程度で伴う
慢性関節炎ではぶどう膜炎や
末梢リンパ節腫大の合併率が高い
手指関節, 骨関節の画像:
骨皮質や骨髄に肉芽腫を形成し, 抜けたような骨融解像が認められる.
(J Clin Rheumatol. 2016 Aug;22(5):278-9.)
(Current Rheumatology Reports (2019) 21: 7)
サルコイドによる関節障害に対する治療
・急性関節炎はSelf-limitedであることが多く, 対症療法が基本.
難治性の場合はステロイドや免疫抑制を考慮.
・慢性関節炎ではDMARDの使用を考慮する.
(Semin Respir Crit Care Med. 2010 August ; 31(4): 463–473.)
サルコイドによる骨病変
(Rheumatology 2018;57:777-783)
・骨病変はサルコイドーシスの1-15%で認めるが,
無症候性が多く, 他の検査で偶発的に発見される事も多い.
・骨病変は周辺の皮膚所見を伴うことが多い
・骨病変には3つのタイプがある:
虫食い様の透過性病変 - 指骨の皮質も犯され, 軟部組織腫脹も伴う
溶骨病変 - 指骨の骨嚢胞性病変を伴う
硬化性病変 - 脊椎で認める. 転移性腫脹でも同様の所見
・骨病変は指骨の近位部で多く報告があるが, どこでも生じ得る
PETやMRIが普及してからは椎体病変の発見が増加している.
・骨病変があってもALPやCaには影響はしない
軸関節病変
(Semin Respir Crit Care Med. 2010 August ; 31(4): 463–473.)
・サルコイドーシスによる軸関節病変は稀であり,
しばしば仙腸関節炎と誤診されることがある.
・椎体の病変は無症候性が多く, 偶発的に発見されることが多いが,
背部痛や腰痛が初発症状として認められることもある
・病変は溶骨性, 骨硬化性病変やその混在.
・MRIによる評価は仙腸関節炎との鑑別に有用であり,
また生検を行う部位の同定にも有用.
多発性のT1-WI低信号, T2-WI高信号として描出される.
MRI所見自体は非特異的であり, 他の転移性腫瘍でも認められるため,
組織検査が重要.
・サルコイドーシスによる仙腸関節炎の報告も稀ながらあり(~6.6%).
サルコイドーシスにSpAを合併する事ある(6% vs 1-1.9%[一般人口])
サルコイドによる筋症
(Rheumatology 2018;57:777-783)
・慢性筋症, 結節性筋症, 急性筋症のパターンがある
・慢性筋症は最も多く, 50-60歳代の女性で多い.
左右対称性の近位筋の筋力低下で, 体幹や頸部筋で多い
無症候性も多い
CPKの上昇は認めないことが多い
・結節性筋症は孤発性, 多発性の結節を筋組織内に認める病態
左右対称性の四肢で生じることが多い
結節は有痛性で, 時間の経過とともに拘縮をきたす
MRIによる評価が有用
・急性筋症は最も希なタイプ.
<40歳と若年に多い
他の筋炎疾患に類似した経過. 急速進行の近位筋脱力, CPK上昇をきたす
急性関節炎と合併して生じることが多い