副腎不全の症候の1つに低体温症がある.
冬季になると偶発性低体温症の患者を診療する機会が増えるが, その際 来院時に評価したCortisolをどう解釈するか, カンファで話題となった.
低血糖時のCortisolは信頼性があると考えているが, 低体温時はどうなのだろうか?
偶発性低体温症(≤32度)でERを受診した12例において, 内分泌機能を評価した報告
(J Clin Endocrinol Metab. 1972 Mar;34(3):460-6. doi: 10.1210/jcem-34-3-460.)
・甲状腺ホルモン: 低体温時は正常範囲. 復温中に低下する症例が11/12あるが 差は軽度.
・TRH負荷を行った3例中, 2例で反応あり. 1例では反応を認めなかった.
・Cortisol: 有意差は認めないが, 復温中に軽度上昇傾向がある.
3時間後に評価した9例中, 6例で上昇, 2例で横ばい, 1例で低下
12-18時間後には元々の値に戻る.
脳外科手術において, 術中体温を正常に保つ群と, 低体温(<34度)とした群で, Cortisol, ACTHを評価, フォローした報告
(Can J Anaesth. 2001 Sep;48(8):815-8. doi: 10.1007/BF03016700.)
・ACTHやCortisolは低体温群で低い. 術中, 術後も上昇していない.
来院時低体温を認めた14例において, ACTH負荷試験を施行
(J Clin Endocrinol Metab. 1980 Jan;50(1):93-7. doi: 10.1210/jcem-50-1-93.)
・直腸温は28-35.3度 , 低血糖(<60mg/dL)は4/14含まれていた
体温とACTH負荷試験の反応
・34度未満ではACTH負荷の反応が 認めない〜かなり弱い
・正常体温ではしっかり反応する.
体温と反応性の関係.
・内分泌の負荷試験を行うならば, 少なくとも36度以上で行うべき
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急性の寒冷刺激では, ストレスがかかり, 一過性に上昇する可能性はあるが,
低体温時には神経内分泌機能は低下し, ACTHやCortisolは抑制される.
低体温症の鑑別に副腎不全はあるものの, 低体温時に測定するのは無意味であると言える.
復温してから評価することが重要.