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2016年8月2日火曜日

炎症性筋疾患のMRI所見

炎症性筋疾患 (Inflammatory myopahies)は急性, 亜急性, 慢性経過の筋炎, 筋力低下を呈する疾患群であり, 主に多発筋炎(Polymyositis: PM), 皮膚筋炎(Dermatomyositis: DM), 封入体筋炎(Inclusion-body myositis: IBM)が含まれる.

DMは補体関連性の微小血管炎に伴う筋炎, 皮膚症状, PM, IBMはT cell関連の筋壊死で, CD8+ T cellが関連している.
・IBMではアミロイド沈着と空胞性病変を認めることが多く, T cell由来の細胞障害 + 変性疾患の2面をもつとされる.
(Autoimmunity, May 2006; 39(3): 161–170)

炎症性筋疾患の分類
(Rheum Dis Clin N Am 28 (2002) 723–741)

上記に加えて, 近年Immune-mediated necrotising myopathy(IMNM)という分類もあり,
抗HMGCR抗体や抗SRP抗体, スタチン関連, 膠原病関連, 悪性腫瘍関連がある
(JAMA Neurol. 2015;72(9):996-1003.)

DM, PMの分類には修正Bohan and Peter分類が使用される
・皮膚筋炎(DM)はDM rashと筋炎所見を認めるものをPure DMと呼び, 他の膠原病所見を認めるものをOverlap Myositis(OM)と定義.
 DM rash: ゴットロン徴候とエリオとロープ疹
 DM−type calcinosis: 骨格筋を覆う皮下組織, 皮膚の石灰化
 DM phenotype: DM rash and/or DM-type calcinosisを有し筋生検にて筋維束周囲の萎縮が認められる.
・Classical DM: DM rashと近位筋脱力 + CK ≥500IU/Lを認める病態
・Clinically amyopathic DM(CADM): DM rashを認め,  筋所見がない or 極軽微
・Adermatopathic DM: DM rashを認めない筋炎で生検にて筋維束周囲の萎縮を認める. フォローにてDM rash, calsonosisを認める
・Cancer−associated myositis: 筋炎診断から3年以内に悪性腫瘍が診断.
 腫瘍の治療に伴い筋炎も改善する.
・Pure DM: 筋炎+DM rashを認め, overlapの所見を認めない
・Overlap CTD futures: 多関節炎, レイノー現象, 指の腫大, 末端皮膚硬化, SSc様の石灰化, 消化管蠕動障害, 肺線維症, Discoid Lupus, 
 抗DNA抗体陽性+低補体, SLEの診断クライテリア項目 ≥4/11, 抗リン脂質抗体症候群
・Overlap Myositis (OM): Pure DM + 上記CTDの所見を認める
・DM−specific autoantibodies: Mi-2, MJ, p155, SAE抗体
・Overlap autoantibodies: Jo-1, SSc関連抗体, Nucleoporin抗体.
(Medicine 2014;93: 296–310) 


本題: IBMやDM, PMでのMRI所見はどのようなものがあるか?

孤発性封入体筋炎(sIBM) 32例で上下肢MRIを施行.
(Rheumatology 2011;50:1153 1161)
・患者は68±9歳. 罹患期間は8±5年間
 CPKは男性例で739[121-3360], 女性例で265[44-802]

MRI所見:


MRI所見は, ほぼ全例で脂肪組織浸潤が認められた
・上肢よりも下肢で強い

筋の部位と脂肪組織浸潤の程度, 頻度

筋の部位と炎症所見の頻度

筋の部位と萎縮の程度と頻度

IBMでは炎症所見よりも脂肪組織浸潤所見が主な所見となる.
・また, 全体で生じるのではなく, 筋別, 区域性に出現することが多い.

部位別の頻度

sIBMとPMのMRI所見の違い:
炎症性筋症疑いでMRIを評価した220例において, MRI所見が評価可能なsIBMとPMはそれぞれ25例を比較.
(J Rheumatol 2002;29:1897–906) 
・IBMの方が診断まで時間がかかっている

MRI所見の比較

IBMでは脂肪浸潤が目立つ. (Grade  3-4は50%以上の浸潤所見)
 筋萎縮もIBMで優位な所見
・PMでは後方筋の炎症や, 炎症所見のみのパターンが多い.

所見の例

まとめますと
炎症性筋疾患のMRI所見では,
IBMでは脂肪組織浸潤が目立つ点が特徴的. これはより長期間の経過が関与している?
PM/DMでは炎症所見が目立ち, 脂肪組織浸潤は乏しい傾向.

双方ともびまん性に所見があるのではなく, 区域性, 各筋で所見があるため, 
身体所見を評価する際は筋を意識して評価することがポイント.
また筋生検を行う場合も罹患している部位を評価して生検部位を決めることが重要.