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2021年5月14日金曜日

巨細胞性動脈炎と腕神経叢の障害

 巨細胞性動脈炎(GCA)は頭痛や顎跛行, 黒内障, 頸部痛, 四肢末梢の虚血・間欠跛行, 不明熱などとして認められることが多い.

(Rheumatology 2018;57:ii32-ii42)


このGCAにおいて, かなり稀ではあるが, C5-6領域の腕神経叢の障害が出現する例がある.

GCAと腕神経叢の障害を呈した症例のLiterature reviewより,

(J Rheumatol 2002;29:2653–7) 



・このLiterature reviewからは11例の報告であるが,  フランスからの論文(La revue de médecine interne 26 (2005) 578–582)からは24例が報告されている.
・多くの症例はC5-6領域の障害であり, 一部でC7も含む.
・症状は支配領域の感覚障害, 腱反射の消失, 肩〜上腕にかけての筋力低下, 麻痺症状が主.

80例のGCAの解析では, 3例で腕神経叢の障害あり.
 
・支配部位の運動, 感覚障害を呈する
・3例中1例のみ, MRIで腕神経叢の
T2高信号が認められた.
(J Neurol (2007) 254:751–755)


GCAによりC5-6の障害が報告される理由として, それよりも上位頸髄では症状がわかりにくい点と,
 血流の分水嶺がC5-6レベルとなる可能性があるためと説明される.
(Joint Bone Spine 2002 ; 69 : 316-8)
参考: 頸髄の血管支配
 椎骨動脈(5)と上行頸動脈(6), 深部頸動脈(7)から頸髄は栄養されるが,
 これらの分水嶺がC5-6付近にある.
 GCAにより大動脈弓から分岐する血管の血流が低下することで, 虚血が生じやすい可能性がある.