Lumbosacral Transitional Vertebrae: 腰仙椎部移行椎 は 脊椎分節異常の1つ.
(Spinal Surgery 34(1)32‒38, 2020)
・L5横突起の肥大(19mm以上),
横突起と仙骨翼の完全な癒合,
偽関節形成などがある
・XP画像の感度は7-8割で, 20-30度のタウン撮影が推奨される.
・LSTVの保有率は腰背部痛や下肢痛で 画像検査をした群では10.6%
中国健常人ボランティア5860例では15.8%
・LSTV自体は平均12.3%, 4.0-35.9%と認める頻度は高いが,
その大半がIA型(片側の横突起肥厚)とII型である
OA cohortの4636例の評価では, LSTVは841例(18.1%)
(Radiology 2012; 265:497–503)
・Type I, IIがLSTVの其々40%以上を占め, IIIやIVは其々11.5%, 5.25%程度
LSTVでは, 偽関節部の炎症や滑膜肥厚によるインピンジメントが生じ, 腰背部, 臀部痛, 神経根症状(L5)を呈することがある(Bertolotti症候群)
(Spinal Surgery 34(1)32‒38 2020)(Int J Spine Surg. 2015 Jul 29;9:42.)
・L5横突起から仙骨翼前面にかけて腸腰靭帯が付着
L5横突起, 仙骨翼, L5/S1椎間板, L5椎体, 腸腰靭帯で囲まれた空間を Lumbosacral tunnelと呼び, 同部位でL5神経根の圧迫を生じる
・頭側より横突起(1)
背後より仙骨翼(2)
腹側より椎体の骨棘(3)
さらに内部で 背側から上関節突起(4)と腸腰靭帯(5),
外側から横突起と仙骨翼関節部の骨棘(6)
・若年の慢性腰痛の鑑別として重要.
腰痛を主訴として病院を受診する患者の4.6-35.6%がBertolotti症候群.
バラ付きはあるが, 頻度は高い
・LSTVの所見があること自体は腰痛の強いリスク因子とはならないという報告も多い.
ただし, LSTVの所見がある腰痛患者では, 所見を認めない群よりもより重度の腰痛となるとする報告もある.
OA cohortの4636例におけるLSTVのタイプと疼痛への関連
(Radiology 2012; 265:497–503)
・Type II, IVが腰背部痛, 殿部痛に関連する.
偽関節の炎症の関連があるか?
腰背部痛にて腰仙椎のXPを評価された500例の解析.
(Tzu Chi Medical Journal 2019; 31(2): 90–95)
・平均年齢は39±16歳.
・このうち, LSTVは26.8%(134例)で認められた.
Type IA (7.6%), Type IB (6.0%)
Type IIA (1.8%), Type IIB (2.0%)
Type IIIA (1.6%), Type IIIB (3.8%)
Type IV (0.8%)
・LSTV(-)と比較して, LSTV(+)の腰痛患者ではVASが高い
Bertolotti症候群の診断
(Int J Spine Surg. 2015 Jul 29;9:42.)
・LSTV所見自体は腰痛のリスクに確実になるわけではなく,
LSTV所見の頻度も高いことから,
診断は所見以外に矛盾しない経過と他疾患の除外が重要.
・偽関節部へのブロックによる反応評価も重要である.
Bertolotti症候群の治療
(Spinal Surgery 34(1)32‒38 2020)
・対症療法(NSAIDや神経性疼痛への対応)が無効ならば,
腰殿部痛が主な場合, 偽関節に対してブロックや高周波熱凝固療法, パルス高周波法を考慮
・神経根症状を呈する場合もブロックやパルス高周波法が選択肢となる
・難治性症例では手術による横突起切除も報告されている.