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2021年1月7日木曜日

免疫介在性内耳障害, 自己免疫性内耳障害

 (Acta Otorrinolaringol Esp. Mar-Apr 2019;70(2):97-104.)(Int J Immunopathol Pharmacol. Mar-Dec 2018;32:2058738418808680.)

Immune-mediated inner ear disease(IMIED).

RASLE, SS, PsA, SSc患者において, 聴力障害や前庭障害を伴う例が報告されており, これらを免疫介在性内耳疾患(IMIED)と呼ぶ.

強直性脊椎炎患者のMetaでは,聴力障害を伴う頻度は42.4%[29.2-56.2]

 AS患者との比較で, 聴力障害のOR4.65[2.73-7.91]と有意にリスクは上昇

 特に高音において, 聴力障害の程度が強い (J Rheumatol. 2021 Jan 1;48(1):40-47.)


IMIEDは難聴全体の<1%, 5-20/10万人年程度の頻度であるが, 自己免疫性疾患にも合併するため重要である. 2/3が原発性, 1/3が続発性.

中年女性で好発する.

聴力低下を伴う例が大半であり, 前庭障害はその25-50%で認められる.

聴力低下は感音性難聴であり, 両側性・左右非対称性に生じる

 通常数週間~数カ月(多くは3日〜90日)で進行し, 免疫抑制療法に反応.

前庭症状ではめまいや耳鳴, 耳閉感, 不安定感がある.

機序は様々提唱されている: 血管条の血管炎, 内耳への免疫複合体の沈着や過敏反応, 免疫の障害による自己炎症, 薬剤による耳毒性など


中年女性の難聴+前庭症状であり, メニエール病との鑑別は重要

・症状は数週~数カ月(3日~90)で進行するが, その間 症状の変動を認めることもメニエール病に類似する.

メニエール病の一部も背景に自己免疫が関連している症例もあり, 専門医の中にはメニエール病とIMIEDは同様の疾患スペクトラムであると考えている者もいる.

自己炎症性疾患でも難聴を伴う疾患がある.

 Cryopyrin-Associated Periodic Syndrome(CAPS)IL-1βに関連した炎症, 難聴, アミロイドーシス, 皮疹を合併する.

突発性難聴とIMIED, 加齢性難聴の比較


IMIEDの診断アプローチ

(Int J Immunopathol Pharmacol. Mar-Dec 2018;32:2058738418808680.)

数週~数カ月で増悪する両側性感音性難聴で他の原因が考えにくい場合に疑う

・他の自己免疫性疾患の合併やステロイドへの反応性も判断に有用.

参考: 他の論文から, 診断プロファイル

(World J Methodol 2014 June 26; 4(2): 91-98)


IMIEDの治療は免疫抑制

・ステロイドが最も効果的であり, 1mg/kg(最大60mg)で治療を開始.

 4wk継続し, その後維持量まで8wk程度かけて減量する.

 開始後2wk程度で聴力検査をフォローし, 反応性を評価.

早期に反応はあるものの, 一部症例では数カ月で徐々に改善する例もある.

ステロイドへの反応性は50-70%で認められる(反応性の基準は一定していないが, >10dBの改善やPTA>12%の改善程度)

 4wk治療し, 反応が乏しければ早期に減量を行うことを推奨.

・Steroid sparing agentとしてはCY, CsA, MMF, AZA, MTX, TNF阻害薬, RTXなどが試されているが, どれも確立したものはない.

・MTXは2003年にJAMAよりRCTがあるものの, プラセボと比較して聴力維持効果の利点は認められなかった(JAMA. 2003;290:1875-1883)

・他の薬剤はいずれも小規模な報告が主. 

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ステロイドによく反応する, 比較的急性〜亜急性で進行する感音性難聴±前庭障害というものがあるという認識をしておくことが重要.

特に自己免疫性疾患を診療する立場では難聴や前庭障害には一層気を使った方が良いのではないかと思う.