神経因性食思不振症(AN)で低栄養が強い患者.
低血糖で搬送されたが, AST, ALT共に4桁台の肝障害を合併
(AST 3000台, ALT 1500, LDH 900)
薬剤や感染症, 胆道系疾患などの可能性は低そうであるが, ANを原因としていいのだろうか?
Anorexia nervosaでは, 低栄養性の肝炎が生じる.
Malnutrition-induced hepatitis(MIH)と呼ばれる
(Dig Dis Sci. 2017 Nov;62(11):2977-2981.)
・凝固障害や脳症を呈するほどの急性肝不全となる例は少ない.
・また, ANでは, 栄養補充に伴い, 脂肪肝が生じ, それによる肝酵素上昇も認めるが, それは分けられる. 頻度はMIHの方が多い.
・AN患者の50%で肝酵素上昇が認められる. BMIが低下するほどリスクも上昇.
・AST, ALTは通常 3桁程度の中等度上昇が多い.
・脂肪肝のように, ASTに比べて, ALTが比較的有意に上昇する
・MIH合併のANでは, 糖新生の低下も加わり, 低血糖リスクが上昇
飢餓状態ではAutophagyが生じ, その結果肝細胞障害や細胞死が生じる. これがMIHの機序と推測されている
ANによる重症肝障害(平均肝酵素>1900 IU/L)における肝生検の結果は
・肝細胞のアポトーシスやネクローシスの所見は少なく, 1/3の患者で多くのautophagosome(自己貪食空胞)の所見が認められた
・栄養補充を行うと速やかに肝障害は改善を認める
AN 181例において, 肝障害の頻度を評価した報告
(Int J Eat Disord 2016; 49:151–158)
・BMIは12.8±1.8
肝障害の頻度
・半数以上で肝酵素上昇が認められる.
・ALT上昇が目立つパターンが多く, 多くは2桁~3桁前半.
・INRの亢進は26%
・重度の上昇群ではよりBMIは低く, 栄養状態も悪い
・入院中も, Refeedingによる低P血症や低血糖を呈するリスクが高いため, 注意が必要.
症例のように4桁となる例も報告はされている;
4桁上昇を認めた症例のReview (European Journal of Gastroenterology & Hepatology 2014, 26:473–477)
・AST, ALTが1000を超える症例報告も少ないがある.
・組織の低循環状態が合併していると考えられており, 速やかに補液と栄養補充により改善を認める例が多い.(Shock liver, 低酸素性肝炎のような病態)
・酵素上昇もALT有意ではなく, ASTが有意に上昇するパターンとなる
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