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2021年1月5日火曜日

不明熱として診断したネコ引っ掻き病 症例の特徴

ネコ引っ掻き病はBartonella henselaeによる感染症で, ネコによる引っ掻き傷や咬傷から感染する.

ネコノミにより媒介されるため, 夏季にネコ間で広がり, 秋冬あたりに人に感染しやすい.(寒くなるとネコも家でじっとしたがる)

引っ掻かれなくても, 舐められたり, 接触自体で感染リスクとなる. また子猫の方がリスクが高い

Risk

OR

Risk

OR

子猫を飼っている

15[3.6-63]

ノミがいる子猫

29[4.0-213]

子猫による咬傷引っ掻き

27[3.7-199]

外で土を掘る子猫

10[1.3-78]

子猫に顔面を舐められる

18[2.4-135]



子猫と一緒に寝る

4.5[1.5-13]



子猫の毛をとく

8.5[2.0-37]



(NEJM 1993;329:8-13)

日本の地域とネコからのBartonella分離率


症状は局所のリンパ節腫大, 菌侵入部位の水疱や膿疱であるが, 一部で様々な臓器障害や不明熱として生じることもある

参考:高齢者と若年者におけるCSDの症状(CID 2005;41:969-74)


Elderly
(52)

Non-Elderly
(794)

OR

女性

57.7%

41.0%

2.0[1.1-3.5]

Typical CSD

67.3%

86.4%

0.3[0.2-0.6]

Atypical CSD

32.7%

13.6%

3.1[1.7-5.7]

リンパ節腫脹

76.5%

94.4%

0.2[0.1-0.4]

 頭頸部

9.6%

22.0%

0.4[0.1-0.96]

 内側上顆

13.5%

8.4%

1.7[0.7-3.9]

 腋窩

30.8%

29.8%

1.0[0.6-1.9]

 鼠径大腿

17.3%

18.8%

0.9[0.4-1.9]

 全身性

1.9%

0.4%

5.2[0.5-50.6]

 その他

1.9%

0.6%

3.1[0.3-27.0]


Elderly
(52)

Non-Elderly
(794)

OR

Skin lesion

31.9%

37.9%

0.8[0.4-1.4]

発熱

68.0%

55.1%

1.7[0.9-3.2]

倦怠感

70.8%

51.4%

2.3[1.2-4.3]

Parinaud syndrome

0

1.9%

NA

肝脾疾患

5.8%

3.3%

1.8[0.5-6.2]

後部眼球疾患

4.8%

4.9%

1.2[0.3-4.0]

Erythema nodosum

0

2.6%

NA

他のRash

0

4.2%

NA

骨髄炎

0

0.1%

NA

脳炎

3.8%

0.6%

6.3[1.2-33.3]

心膜炎

13.5%

0.3%

61.6[12.4-305.1]

FUO

7.7%

1.1%

7.3[2.2-24.5]



FUOとして診療されたCSDの特徴を評価した報告
(Clin Infect Dis. 2020 Dec 31;71(11):2818-2824.)

イスラエルにおけるNational CSD surveillance studyにおいて≥14日間持続するCSD以外の原因を認めない発熱症例66例を解析
・FUO症例の年齢中央値は35.5歳と, FUO症例と比較して高齢が多い
 ≥61歳も18%
ネコとの接触は8割. 他の動物が数%

FUO-CSDの臨床的特徴

・FUO-CSDの発熱期間は2wk2Mo
持続性の発熱, 再発性の発熱が半々.
 再発性の発熱のパターン:

悪寒戦慄も半数で認められる.
, 盗汗, 倦怠感, 体重減少といった消耗症状が半数以上
 関節痛, 筋痛は3
・腹腔内リンパ節腫大が2肝脾腫, 肝内, 脾内病変もあり
・眼病変が1/3. 炎症性乳頭浮腫, Neuroretinitis, 網膜動脈閉塞, 視神経症, 前ぶどう膜炎など
・他に少ないが, 肺臓炎や多発性骨髄炎, 心外膜炎, 胸膜炎, 無菌性髄膜炎, 難聴など

臓器障害のパターン: