(JAMA. 2020;324(16):1629-1639. doi:10.1001/jama.2020.18618 )
RICH: 重度AKIや臨床的に透析療法を必要とするICU患者を対象とし, 持続的腎代替療法中の抗凝固薬として, 回路内クエン酸Na使用群 vs 全身UFH投与群に割り付け, 透析膜寿命を比較したRCT
患者群は以下の全てを満たす群
(1) KDIGO stage 3のAKIまたは透析の絶対適応となる病態(BUN>150mg/dL, K>6mEq/L, Mg>4mmol/L, pH<7.15, 尿量<200mL/12h, 体液過多による肺水腫で利尿薬に反応しない)
(2) 1つ以上の病態: 重症敗血症以上, 昇圧薬使用, 治療不応生体液過多
(3) 18-90歳
(4) 3日間以上のICUでの集学的治療を行う予定の患者
(5) インフォームドコンセント取得
除外項目は以下;
・出血リスクが高い, 出血素因がある, 治療として抗凝固が必要, 使用する薬剤にアレルギー歴がある, HITの病歴, 維持透析患者, 永久的な腎動脈閉塞や手術治療の適応となる病変によるAKI, 糸球体腎炎によるAKI, 間質性腎炎, 血管炎, 腎後性腎不全, 12ヶ月以内の腎移植歴, HUS/TTP, 妊婦, 持続的な重度の乳酸アシドーシス*(pH<7.2, Lac>8mmol/Lが2h以上), 急性肝不全*, ショック*
*クエン酸の貯留, 中毒のリスクとなるため除外された.
・回路内クエン酸投与群では, フィルター前方で回路内に投与し, フィルター後のイオン化Ca 0.25-0.35mmol/Lを目標に調節
・全身的UFH投与群では, aPTT 45-60secを目標に投与
・血流量は100mL/分. フィルターは72h毎に交換した
母集団
アウトカム
・計画ではN=1260の導入を予定していたが, N=638の時点で, フィルター寿命に有意差を認め, 早期終了となった.
・フィルターの寿命はクエン酸群で44.9h, UFH群で33.3hと有意にクエン酸群で良好(AD 11.2h[8.2-14.3]).・出血リスクも有意にクエン酸群で低い結果: 5.1% vs 16.9%, AD -11.8%[-16.8~-6.8]
・透析開始後~感染症リスクは有意にクエン酸群で上昇する: 68.0% vs 55.4%, AD 12.6%[4.9-20.3]
・ICU滞在期間や死亡リスクは有意差ないが, 早期終了のため, 評価は不十分とされている
感染症の詳細
・グラム陽性菌の頻度が上昇. 感染源が判明している例では, 菌血症, 肺炎, UTIなどに差はない.
・感染症頻度は, フィルター寿命がないほどリスクが上昇している(12h延長毎にOR 1.08[1.05-1.11])
合併症頻度
・低P血症やアルカローシスがクエン酸群で多い
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・持続透析を行う場合, 回路内クエン酸投与はUFHと比較してフィルター寿命を有意に延長させる. また出血リスクも有意に低下させる.
・しかしながらフィルター寿命が長くなると, その分感染症が増加するリスクとなる.
・クエン酸の副作用としては低P血症やアルカローシスに注意.
・リスクとベネフィットを考慮して選択するよい