皮膚筋炎で徐々に肝障害が増悪した経過を辿った症例があった.
皮膚筋炎自体で肝炎を合併しやすい/するという認識があまりなかったため, 当初は薬剤による肝障害を考えていたが, 治療強度を強めることで反対に改善を認めたため, 皮膚筋炎に伴う肝障害であろうと判断した.
そこで調べてみると, 近年国内から発表された論文が目についた.
38例のPM, 77例のDM患者を後ろ向きに解析した報告(国内)
(Rheumatol Int. 2019 May;39(5):901-909.)
・このうち, 肝障害はDM患者の17%(13/77), PM患者の3%(1/38)で認められた.
大半がDM患者で認められる
悪性腫瘍を認めないDM 50例の評価では, このうち10例で肝障害.
・この10例全例で抗MDA5抗体陽性
・抗MDA5抗体陽性例の27例中, 半数以上で肝障害を認める
・血球は両者で有意差はない
これらのうち, 肝生検を行った5例の病理結果からは,
・薬剤性肝障害, 脂肪性肝炎, 急性肝障害/肝炎, PBC疑い, AIH疑いとの所見
抗MDA5抗体陽性のDMでは肝障害を合併しやすい傾向がありそう.
件の症例も抗MDA5抗体陽性例であった.
抗MDA5抗体陽性のDMでは, 急性の重症間質性肺炎や血管炎, 皮膚障害, 関節炎など様々な臓器に炎症を呈する. この一つとして肝障害が生じるのかもしれない.
また, この症例ではフェリチンも上昇(2000-3000)していたことから, Macrophage activation syndromeの可能性も疑った.
DMによるMacrophage activation syndromeの報告
(Rheumatol Int. 2020 Jul;40(7):1151-1162.)
・DMにMAS/血球貪食症候群が合併した報告もあり, 2020年発表のLiterature reviewでは19例の症例報告がまとめられた
・DM発症からMAS発症までは3ヶ月以内. MASが先行する症例もあり
・ステロイド単独の治療では不十分であり, 他の免疫抑制療法, RTX, 血漿交換など使用されている.
・この19例中, 6例は抗MDA5抗体陽性例
他の13例のうち, 明確に抗MDA5抗体を評価し, 陰性となったのは1例のみ
他は未評価. 陽性の可能性はあり.
抗MDA5抗体陽性DM, 肝障害でさらに血球が低下し始めればMASへ移行していた可能性も.
この疾患はDMだけにとどまらず, 多臓器に炎症を呈する病態となり得るため, 注意が必要.
同様に炎症性サイトカインが暴走する病態として, IVLやAOSD, 最近ではCOVID-19など念頭に上がるが, その鑑別の一つに抗MDA5抗体も覚えておきたい.