E型肝炎ウイルスはイノシシやシカ, ブタの摂取がリスクとなることが国試的にも有名であるが, ウシ, ヤギ, ヒツジ, サル, イヌ, ネコ, ラットでもHEV抗体を有する報告がある
野生動物におけるHEV-RNA保有率はどの程度あるのか?
愛知, 長野で捕獲された野生のイノシシ91頭, カモシカ19頭, シカ13頭の肝臓,糞便, 血液を材料とし, HEV-RNAを評価した報告.
・カモシカ, シカ検体からはHEV-RNA検出されたものは無し.
イノシシでは11/91(12.1%)で陽性. 全てIV型.
・抗体検査では, シカは全て陰性. イノシシは25/91(27.5%)で陽性
(肝臓 2006;47(6):316-318)
2010-2014年に愛知県岡崎市近郊で捕獲されたイノシシ439頭, シカ185頭より採取された肝臓より, HEV-RNAを評価した報告.
・イノシシより49/439(11.2%)でHEV-RNA陽性.
シカ185検体のうち, 検出された検体は無し.
・イノシシの推定体重でみると,
40kg未満の個体群における陽性率は13.0%
40kg以上の個体群では2.7%と有意に低い
・これは飼養ブタにおいて, HEV-RNAは2-3ヶ月齢のブタで陽性率が高く, 6ヶ月齢では陽性率が低い報告から, 1-3ヶ月齢での水平感染の可能性が推測される.
(食衛誌 2015;56(6): 252-255)
熊本県における調査
2006-2013年に熊本県内でと畜されたイノシシ253頭, シカ63頭, ブタ1634頭において, HEV-RNAを評価
・イノシシの陽性率は6.7%
シカからの陽性例は無し
・ブタは0.9%で陽性
・ブタにおけるHEV-IgG保有率は71.9%で, 養豚場間で0-100%と差が大きかった.
--------------------------------
狩猟内科医として, 国家試験問題を作成するとしますと,
Q. 以下の動物でE型肝炎ウイルス保有リスクが高いものを2つ選べ
a イノシシ
b シカ
c ウシ
d カモシカ
e ブタ
となるわけですね.