自分は, 呼吸器専門医ではないので, 詳しく語るだけの知識はありませんが,
一般内科医として, 病棟にでる学生や研修医として, この程度分かっておいたらよいという感じで書かせてもらいます.
肺のCT所見を読むのに必要な解剖知識:
ズバリ二次小葉を理解しておくことが重要.
(CHEST 2017; 151(6):1356-1374)
(Radiology 2006;239:322-38)
めっちゃ簡単に書くと以下
・二次小葉は線維性被膜で覆われ, その内部には肺胞, 呼吸細気管支, 間質が含まれる.
外側は線維性組織と静脈, リンパ流がある.
中心部分に肺動脈と気管支が入ってゆく.
・健常人のCTではこの線維性組織やらは見えない. 異常があると見えてくる
この異常のパターンから病態を理解する.
ちなみに, 肺水腫の患者さんのCTより:
・二次小葉の外側を走る静脈が鬱滞し, 明瞭化している. 二次小葉の形がよくわかる.
さて, ではCTのパターンからの鑑別
(Chest. 2019 Nov 5. pii: S0012-3692(19)34121-2. doi: 10.1016/j.chest.2019.10.017. [Epub ahead of print]
An Algorithmic Approach to the Interpretation of Diffuse Lung Disease on Chest CT Imaging: A Theory of Almost Everything.)
①網状変化が主
例
・網状変化 >> 二次小葉の外側(線維化, 静脈, リンパ流の阻害)を意味する
・この場合はUIPパターンに典型的かどうかをまずチェック.
牽引性気管支拡張や蜂巣肺があればUIPに典型的と判断される >> 慢性経過の線維性変化
やや典型的とは言い難い場合はUIP疑いやNSIP, 過敏性肺臓炎など考慮.
・逆にそれらを認めない場合は急性経過の二次小葉の外側の肥厚 >> 静脈やリンパ流の鬱滞
②多発性小結節
例
・小結節がどの由来かを意識して評価する
・胸膜直下や肺の主葉裂直下を含んで分布している場合は, 血流(粟粒結核や転移), リンパ流周囲の病変(サルコイドーシスなど)を考慮する
・胸膜直下や主葉裂直下をスペアしている場合, これはいわゆる「小葉中心性陰影」と表現し, 気道や血流からの分布を示唆する. 結核で有名なTree-in-Budもこれに含まれる.
③様々な結節
例
・分布と形態から判断する
・気管支血管束に一致して分布している場合, 器質化肺炎, リンパ増殖性疾患, GPAなどが鑑別.
・ランダム分布の場合, 空洞性病変やHalo sign, Reverse Haloの有無など形態から絞るが, 実際問題ここが結構悩むことが多い
・ちなみに例の画像は感染性気管支炎
④肺濃度低下
例
・嚢胞性疾患や気腫性疾患の鑑別となる
・びまん性の肺濃度低下では閉塞性気管支炎, 膠原病肺, Toxic fume吸入など.
・局所性では, 嚢胞壁が明らかかどうかでさらに分ける.
嚢胞壁が明らかではない: 小葉中心の肺気腫, LCHの終末期
嚢胞壁が明らか: LAM, アミロイドーシス, LCHなど肺嚢胞性疾患を鑑別.
⑤不均一, びまん性の肺濃度の上昇
・不均一な分布(モザイクパターン)
全体的に上昇した肺濃度(GGO)のなか, モザイク状に肺濃度が低下する: BOOP, 亜急性過敏性肺臓炎
肺濃度の上昇(GGO)がモザイク状の分布を示す病変: 慢性血栓閉塞性肺高血圧症, 肺高血圧症
・びまん性に肺濃度が上昇しているパターン(GGOが主)
小葉間隔壁肥厚を伴うGGO(Grazy Paving): 亜急性DAD, Cellular NSIP, 亜急性肺胞出血, 肺胞蛋白症
小葉間隔壁肥厚を伴わないGGO: 肺間質の浮腫, 急性肺出血, ALI, 感染症, 急性過敏性肺臓炎
(参考)(AJR 2005;184:613–622)