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2016年12月21日水曜日

中心静脈からの投与する際のKCL濃度は?

KCL投与は不整脈リスクとなり, 事故も多いため, 投与速度や投与量については過敏にならざるを得ない.

添付文章には、投与濃度は40mEq/Lまで, 投与速度は20mEq/hまで, 1日100mEqまでとの記載があり, 多くはこの量を守って投与していると考えられる.

しかしながら, 心不全などで補液負荷を行いにくく, また重度の低K血症で補正を急がねばならない場合もあり, その点が臨床上困ることも少なくない.


CVからはどの程度の濃度まで許容されるか?
ICU管理中の成人患者で, 血清K<3.5mEq/Lを満たす48例(25-86歳)を前向きに評価したCohort study.
(Crit Care Med 1991;19:694)
・原疾患は心臓外科手術後(9例), 敗血症, 多臓器不全(9例), 複雑性の心筋梗塞(7例), 呼吸不全(5例)
・上記患者群において, 以下の3種類のKCL溶液をCVCより1時間で投与し, 合併症やK濃度変化を評価した.
 20mEq/100mL溶液(200mEq/L)
 30mEq/100mL溶液(300mEq/L)
 40mEq/100mL溶液(400mEq/L)

結果, どの群でも血行動態不安定化, 不整脈の報告はなし.
・K上昇は有意に40mEq群で多い
 20mEq投与: 0.5±0.3mEq/L上昇
 30mEq投与: 0.9±0.4mEq/L上昇
 40mEq投与: 1.1±0.4mEq/L上昇

ICUにて20mEq/100mLのKCL補正溶液を495回使用した経験では,
(Arch Intern Med. 1990 Mar;150(3):613-7.)
・上記補正液は1時間で投与する.
・投与前後のK値の変動は+0.25mEq/L
・致命的な副作用の報告はないが, 10例で軽度の高K血症が報告.
・上記濃度であれば比較的安全に使用可能であろうと結論.

40例の低K血症患者で20mEq/100mLのKCLを1時間で投与し, 補正した報告.
(J Clin Pharmacol. 1994 Nov;34(11):1077-82.)
・上記のうち26例はCVで, 14例は末梢静脈より投与.
・投与後のK上昇値は0.48mEq/La[-0.1~1.7]
不整脈や心収縮の変化を認めた報告はなし.

ICU管理中に低K血症を認めた128例を対象としたRCT.
(Zhongguo Wei Zhong Bing Ji Jiu Yi Xue. 2008 Jul;20(7):416-8.)
・患者はClCr >0.5mL/sec, 尿量50mL/hを満たす.
・上記患者群を
 ・高濃度群(KCL 1208mEq/Lを8mL/hで投与: 10mEq/h)
 ・Control群(KCL 201mEq/Lを48mL/hで投与: 10mEq/h)で投与し, K補正までの時間, 投与量, 合併症を比較
・血清K値は3.10±0.27mEq/L, 3.08±0.25mEq/L

アウトカム;
・補正までの時間はそれぞれ15.5±3時間. 14±5時間で有意差なし
・補正までの投与量は124±26mL, 681±237mLで有意に高濃度群の方が少ない結果.
・投与に伴う不整脈や血行動態の変化は両群で認められず.

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・末梢Vからの投与はK濃度 ~40mEq/Lというのは, 静脈炎のリスクを考慮しての濃度であり, 中心静脈では血流速度も速く, 濃度はもっと高くても問題はない. 原液を使用するプラクティスも一時期あった(今は少ない).
・成書(ワシントンマニュアルなど)では100~200mEq/Lまでとする記載もある.
・濃度が高いと, 誤操作時の不整脈リスクが上昇するため, 原則高濃度溶液を使用時はICUや集中治療管理時に限るべきであろう.