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2016年12月2日金曜日

遠位DVTでは抗凝固療法が必要か?

遠位部のDVT(膝窩以遠のDVTでPE合併なし)は下肢DVTの50%を占め, 塞栓リスクも低いとされている
・近位部のDVTや肺塞栓症例では治療に関するStudyは多く, 治療の必要性や方法はある程度確立されているが, 遠位部のDVTについてはまだエビデンスも少なく, 治療については各施設で異なるのが現状.
・DVTを疑った患者において, 
 下肢全体の血管評価を行い, 遠位DVTでも近位DVTでも抗凝固を行う施設もあれば,
 近位部のみしか評価しない施設もある(この場合1週間後に再度エコーを行い, 近位部への進展の有無を評価する)
・悪性腫瘍やDVTの既往, 体動困難/入院患者など要素があれば治療を行うところもある.

CACTUS trial: 外来患者における, 初発の急性遠位DVT患者を対象としたDB-RCT.
(Lancet Haematol 2016; 3: e556–62)
・DVT疑い患者においてWhole-leg compression USを行い, 遠位DVT症例を抽出(後脛骨V, 腓骨V, 前脛骨V, 腓腹筋, ヒラメ筋の静脈の血栓症で定義. 表在静脈のみの場合は除外)
・18歳未満や妊婦, VTE既往, 近位部DVT合併例, 肺塞栓疑い, 6ヶ月未満の悪性腫瘍の病歴, 他の理由で抗凝固療法中, PLT<10万, CCr<30mL/min, ヘパリンアレルギー, 出血高リスク群などは除外

上記を満たす患者をNadroparin(LMWH) vs Placebo群に割付け, 42日間継続.
・また, 両群とも弾性ストッキングを処方した(30mmHg圧)
・アウトカム近位部DVT, PE合併率を比較した.

母集団データ
・サンプルサイズの予定は各群286例であったが, Study Entryの遅延や薬剤契約期間の問題で予定の50%しかNが集まらなかった.
・上記サンプルサイズはプラセボ群におけるPrimary outcomeが10%で認められ, 介入群でのRisk riductionが70%あると推測して設定


アウトカム
・42日以内の近位DVT, PEの合併率は両群で有意差なし.
・LMWH群では出血リスクは増大する

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遠位DVTの治療は確かに施設により異なる印象がある.
抗凝固を行なっているところが多いか.

たまに紹介患者でもDVT既往、とあって抗凝固がされているが, それが近位なのか、遠位なのか書いていないこともしばしば... その時には困ってしまう.

CACTUS trialはNは目標に満たなかったものの, すごく有益な情報.
可能ならばさらに多施設で追試が増えてくれると良いのですが.