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2016年9月15日木曜日

局在性の前立腺癌の治療方針

PSAスクリーニングにおいて, 前立腺癌の発見率は上昇している.
局所性の前立腺癌の治療方針については, 切除, 放射線治療, 経過観察などあるが, どの方針がよいのだろうか?

PIVOT trial; 1994年-2002年にLocalized Prostate Caと診断された731名のRCT.
(N Engl J Med 2012;367:203-13.)
・平均年齢67歳, PSAの中央値は 7.8ng/mL.
 50%がStage T1c, 25%がGleason scale ≥7, 40%がLow, 34%がIntermediate, 21%がHigh-risk

切除術 vs 経過観察群に割り付け, フォロー. 
・2010年時点での評価(平均観察期間10年間[8-15]).
・手術群は主治医の判断にて追加治療を行い,  
 経過観察群は定期的なフォローと, 対症療法, 化学療法を施行.


アウトカム
Outcome
切除群
観察群
HR
全死亡率
47%
49.9%
0.88[0.71-1.08]
生存期間
13.0y[12.2-13.7]
12.4y[11.4-13.1]

前立腺Ca由来死亡
5.8%
8.4%
0.63[0.36-1.09]
骨転移
4.7%
10.6%
0.40[0.22-0.70]
・10年前後のフォロー期間において, 両群で死亡リスクは有意差なし.
・骨転移リスクは経過観察群で有意に増加する.

手術治療後30日以内のイベント


サブグループ解析


・PSA>10ng/mL群でのみ手術治療による死亡リスク低下効果が期待できる.

SPCG-4 trial: 1989-1999年に局所前立腺癌695例を経過観察群 vs 切除群に割り付け, 2012年までフォロー
(N Engl J Med 2014;370:932-42.)
・23.2年間フォローし, 予後を比較.
・経過観察群では尿閉に対しては経尿道切除を施行.
 骨シンチで転移を認めればホルモン療法を選択.
 2003年以降は, ホルモン療法で増悪を認めればAndrogen-deprivation療法が許可された.
・切除群にて再発を認めた場合, Androgen-deprivation療法を開始.
・切除群の方が有意に前立腺癌由来の死亡リスクは低下する. NNTは8
 ただし, <65歳の群のみ.
・Androgen-deprivation療法はどの患者群でも死亡リスクを低下させる

ProtecT trial: 1999-2009年にPSAスクリーニングを施行され, 局所性の前立腺癌を診断された患者群を対象とし, 積極的経過観察群 vs 外科切除群 vs 放射線治療群に割り付け, 予後を比較したRCT
(10-Year Outcomes after Monitoring, Surgery, or Radiotherapy for Localized Prostate Cancer. NEJM 2016)
・82429例をスクリーニングし, 局所性前立腺癌は2664例で診断.
 このうち同意が得られた1643例を対象.
・患者群の中央年齢は62歳[50-69], PSA中央値は4.6ng/mL[3.0-19.9], 77%がGleasonスコア 6点, 76%がT1c
 各群で患者背景に有意差は認められず.

積極的経過観察群:
 PSAを3ヶ月毎に1年間フォローし, 以後は6-12ヶ月毎にフォロー
 12ヶ月で50%以上の増加を認める群では前立腺癌の再評価を行い, 治療方針を決める.
放射線療法群:
 Neoadjuvant androgen-deprivation therapyを3-6ヶ月行い, 合計74Gyの外部照射を行う
 PSAをフォローし2.0ng/mL以上増加した場合は再発の評価を行う
外科切除群:
 切除後, 3ヶ月毎に1年間PSAをフォローし, 以後は6ヶ月毎に2年間フォロー. その後は1年毎.
 切除断端が陽性の場合, Extracapsular diseaseの場合, 術後PSA 0.2ng/mL以上の場合は追加放射線治療を考慮する
全群において, PSA≥10ng/mLで骨病変評価, PSA 20ng/mLでAndrogen-deprivation therapyを推奨.

アウトカム
・各群における切除治療, 放射線治療の施行頻度.

10年間フォローにおけるアウトカム
・前立腺癌由来死亡リスクはどの群でも有意差なし.
 経過観察群は前立腺癌の進行リスクにはなる.

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明確な基準はないが、65歳未満であれば切除のほうが好ましいのかもしれない.
高齢者でPSAが高値で, 局所性前立腺癌がある場合は, 侵襲も考慮し積極的経過観察のほうがよいのかもしれない.

患者の年齢や予後, 希望に応じて選択する必要がある