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2015年7月29日水曜日

リウマチ性胸水 Rheumatoid Pleural Effusion: RPE

主に Semin Arthritis Rheum 2006;35:368-378 より


Rheumatoid Pleural Effusion
・RAに胸膜炎が伴うことはよくあるが, 胸水を伴うのは女性例で0.34%/y, 男性例で1.54%/yの頻度と少ない.
・症候性の胸水貯留はRA患者の3-5%程度で認められる.
・無症候性の胸水貯留はもっと多く, RA患者のCT画像において, 胸膜肥厚, 胸水貯留を認める割合は女性例で24%, 男性例で16%に及ぶ.
 少量胸水は70%で認める報告もある.

・RAによる胸水貯留の大半が35歳以上で, 男性例が80%, リウマチ結節を伴う例が80%

RPEの大半は少量胸水であるが, 稀に大量に貯留し, 胸膜痛や呼吸苦を生じる例もあり
・発熱は1/3で伴う.
・大体が片側性の胸水貯留で特に左側で多い.
・大半がRAの経過中に生じるが, 25%は初診時に認めることもあり, 診断に注意.
・関節症状と胸水貯留の相関性はない

RPEの胸水の特徴; Gluの低下とpHの低下
 胸水の滲出性であり, 特にGlu, pHは著明に低下し, LDHは増加.
 他にはChol上昇, 補体の低下, 胸水中RFの上昇がよく知られている.
・Gluは著しく低値; <50mg/dLとなるのが80%, <25mg/dLとなるのが66%
 特に慢性経過のRPEで低下する.
 胸水糖/血糖 <0.5となるのが80%
 肥厚した胸膜が血液中Gluの通過を阻害している機序が考えられる
 または炎症胸膜がGluを消費している.
・炎症により乳酸やCO2が産生され, 胸水中pH <7.3となる
 pH 7.2となることもあるが, それ以上の低下は感染症の合併を考慮.
・LDHは >700IU/Lとなり, 特にLDH−4,5が上昇(胸水内のWBC活性化)
・Cholも上昇し, 偽性乳び胸の原因の1つとなる.
 報告ではChol >1000mg/dLとなる例もあり

・RPEでは胸水中RFが血清RFと同程度, それ以上に上昇する
・補体はSC5b−9までの上昇と, C3,C4の低下が認められる.
 しかしながら, あまり診断的価値は乏しい 
・胸水細胞の評価では, WBC>1000/mm3
 伸びた形, 円形の多核のマクロファージや壊死組織が認められるがあまり特異性はないとされる.

RA性の胸水と他疾患との比較 (Thorax 1982;37:354-61)
疾患
N
蛋白(g/L)
p
Glu(mg/dL)
p
pH
p
LDH(U/L)
p
RA
7
53(15)

18(29)

7.13(0.06)

2343(2123)

SLE
4
50(12)
NS
81(11)
<0.005
7.29(0.03)
NS
414(250)
NS
TB
28
49(7)
NS
68(23)
<0.001
7.31(0.07)
<0.001
717(278)
<0.001
悪性腫瘍
22
54(8)
NS
90(38)
<0.001
7.37(0.08)
<0.001
569(586)
<0.005
膿胸
6
69(18)
NS
3.6(3.6)
NS
6.89(0.15)
<0.01
18138(16122)
NS
肺炎
11
47(6)
NS
79(32)
<0.005
7.28(0.18)
NS
795(990)
NS
CHF
11
25(10)
<0.001
101(27)
<0.001
7.40(0.10)
<0.001
170(70)
<0.001
非特異的
33
47(6)
NS
88(29)
<0.001
7.33(0.14)
<0.005
573(388)
<0.001
 RPEと膿胸は同じ特徴を持つ.

RPEではADAも高値となる
Group
N
ADA(U/L)
I
結核
170
83[43-190]
II
悪性腫瘍
126
8[0-54]
III
Parapneumonic
76
14[0-83]
IV
その他
60
5[0-38]
V
非特異的
45
8[0-45]
VI
漏出性
100
0[0-17]
VII
RA
9
80[52-97]
(Annals of the Rheumatic Disease 1988;47:394-7)

膿胸とRPEの鑑別を胸水検査で行うのは困難.
・胸水グラム染色や培養で細菌が検出されれば膿胸であるが, 陰性の場合, 抗生剤投与中の患者での評価は困難.
・胸腔鏡所見にて胸膜表面を評価することが診断に有用
 RPEでは2-7mmの砂状, 凍結状の小水疱/顆粒/結節病変が認められる.
 その部位を胸膜生検することがさらに診断に有用.
 (ランダム胸膜生検では感度は低下する)
・胸膜組織は正常の中皮細胞が多核の巨細胞に置き換わっている所見
RPEの治療
・自然に胸水が改善する例が50%程度あり, 無症候性ならば経過観察とする
 改善するまでは数カ月〜数年かかる.
・胸膜肥厚によるTrapped Lungが合併する場合, 胸水は残存することもある
・RAに対する治療(MTXやステロイド)でRPEも改善する報告もあれば, RPEでは症状がある場合に穿刺を行うのみで良いとする意見もある.
 肺や胸膜の線維化を防ぐために, ステロイドの胸腔内投与やステロイドの全身投与を推奨する意見もある(特に間質性肺炎合併例).
 すて胸腔内投与はmPSL 200mgやデポmPSL 120mgが使用される例が多い。