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2015年7月6日月曜日

Lemierre症候群

Lemierre症候群は咽頭炎や歯肉炎、扁桃炎の炎症が咽頭外側隙(Lateral pharyngeal space)に波及することで生じる疾患. 咽頭外側隙の解剖については最後にまとめる。

内頸静脈の血栓性静脈炎と内頸静脈血栓症、Septic emboli(敗血症性塞栓, 主に肺で多い)を生じる.

咽頭炎後4−12日経過して悪寒戦慄や発熱、他症状が出現することが多い。
 3−5日で改善の乏しい咽頭炎
 血痰や呼吸苦を伴う咽頭炎
 側頸部痛を伴う咽頭炎ではLemierre症候群を疑う。
(Southern Medical Journal 2012;105:283-288)

Lemierre症候群 109例の症例報告のまとめ
(Medicine 2002;81:458-465)

原因菌, 初感染巣の頻度






原因菌 F. necrophorum 71.6% 初感染巣 咽頭 87.1%

F. necrophorum(混在) 10.1%

乳突蜂巣 2.7%

5.5%

(歯牙) 1.8%

培養陰性 12.8%

不明 8.2%
原因菌はFusobacteriumが最も多い.
他にはKlebsiella(特に飲酒者), 溶連菌, Bacteroides, Melaninogenicus, Eikenella corrodens, Leptotrichia buccalisなど報告がある。(Southern Medical Journal 2012;105:283-288)

初感染巣は咽頭がほぼ9割。他に乳突蜂巣、歯牙など。

症状、所見の頻度
症状

所見

咽頭痛 82.5% 頸部リンパ節腫脹 33.0%
耳痛 6.4% 黄疸 12.8%
発熱 82.5% 開口障害 9.1%
頸部腫脹, 圧痛 52.2% 嚥下障害 17.4%
悪心, 嘔吐 18.3% ふくみ声 3.6%
下痢 19.2% 呼吸不全 15.5%
腹痛 13.7% 低血圧 14.6%
胸膜痛 31.1% 異常所見なし 47.7%
呼吸苦 23.8%


血痰 8.2%


肝脾腫 15.5%



画像所見、血液検査所見
画像検査

検査所見

胸部XP 正常 19.2% WBC上昇 75.2%
胸部XP 両側性浸潤影 20.1% PLT低下 23.8%
胸部XP 胸水貯留 43.1% 単核球症 7.3%
胸部XP 局所浸潤影 10.0% ビリルビン上昇 32.1%
胸部XP びまん性浸潤影 17.4% 低酸素血症 19.2%
空洞形成 31.1% 血尿 5.5%
びまん性結節 11.0%



内頸静脈所見と感染播種の部位、頻度






内頸静脈所見 内頸静脈血栓 71.5% 播種臓器 79.8%

 右側 41.1%

関節 16.5%

 左側 58.9%

 股関節 7.3%




 肩関節 3.6%




 膝関節 3.6%




 骨盤 1.8%




 脊椎 2.7%




12.8%
内頸静脈血栓は多くで認められる。
感染播種は肺が8割。肺のSeptic emboliや肺化膿症となる。他に多いのは関節炎。
(Medicine 2002;81:458-465)

Lemierre症候群の治療 (Southern Medical Journal 2012;105:283-288)
抗生剤は嫌気性カバー.
 メトロニダゾールはFusobacterium sppに対して,耐性の報告がないため, 好まれる.
 他にはAMPC/SBT, クリンダマイシンなど使用される.
 他には口腔内レンサ球菌, MRSAやKlebsiella, 溶連菌, Bacteroides, Melaninogenicus, Eikenella corrodens, Leptotrichia buccalisなどの報告例もあり、可能性があればカバー.
抗生剤投与期間は3−6週間継続
抗生剤開始〜解熱までは時間がかかり, 報告では平均8−12日かかっている.

抗凝固療法 
 Lemierre syndromeに対する治療目的の抗凝固療法は議論がある.
 投与する意義は, Septic emboliの予防を期待できる点.
 また報告ではヘパリンを併用した法が解熱が早い報告もある.
 一方で抗凝固薬投与の有無に関わらず, 予後は良好である報告もあり

エキスパートオピニオンでは, (Int J Angiol 2013;22:137–142.)
 抗生剤開始後48−78hで臨床的改善が乏しい場合
 血栓増悪傾向がある場合
 頸静脈洞へ進展する血栓症を認める場合 は抗凝固薬を考慮する.
また, 他に
 肺へのSeptic emboliを認める場合も考慮すべきとの記載もあり
行う場合はUFHで開始し, ワーファリンへ切り替え, 3か月程度(4wk-6M)継続する.
(Southern Medical Journal 2012;105:283-288)

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咽頭外側隙(Lateral pharyngeal space)には前方と後方があり,
前方は筋を含む部位であり, 後方は神経血管を含む。

後方では内頸静脈, 頸動脈, 迷走神経, リンパ節, 脳神経 X−XII, 頸部交感神経幹を含む
前方と後方の間に乳様突起がある。
http://www.docstoc.com/docs/98402713/Parapharyngeal-lateral-pharyngeal-and-retropharyngeal

Lemierre症候群は後方の咽頭外側隙への感染波及で生じるため、他に頸動脈の炎症による動脈瘤、出血や、交感神経の障害によるホルネル症候群などを合併することがある。

前方の咽頭外側隙にはMedial pterygoid muscle(内側翼突筋)があるため、開口障害*が生じる。また前方であるため、疼痛や圧痛所見がより顕著となる。

*開口に関連する筋群は、咀嚼筋群(咬筋、内側翼突筋)が関与するため、開口障害を伴う感染症の場合は咽頭外側隙の前方への炎症波及が関連していると考える。

深頸部感染 部位別の症状頻度 (Infect Dis Clin N Am 21 (2007) 557–576)
Space
疼痛
開口障害
腫脹
嚥下障害
呼吸苦
Submandibular
+
±
口腔底
両側性で出現
両側性で出現
咽頭外側隙 前方
++
++
喉頭前側部
あり
たまに
咽頭外側隙 後方
±
±
喉頭後側部
あり
重度
Retropharyngeal, danger
+
±
喉頭後部
あり
あり
咀嚼; 咬筋, 翼突筋
+
++
見えない
なし
なし
咀嚼; 側頭筋
+
-
顔面, 眼窩
なし
なし
Buccal
±
±
頬部
なし
なし
Parotid(耳下腺)
++
-
下顎, 下顎角
なし
なし

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