特に症状が無くても、45-54歳の2.3%, 75歳の8.2%で雑音を認め、
雑音は心筋梗塞発症リスク因子(OR 2.15[1.67−2.78])、心血管死亡リスク因子(OR 2.27[1.49−3.49])となる。(Lancet 2008;371:1587-94)
頸部血管雑音の頸動脈狭窄に対する感度、特異度を評価した26 trialsのメタアナリシス
狭窄率
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感度
|
特異度
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OR
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25%
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49.2%
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90%
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6.2[2.6-15.0]
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50%
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55.8%
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82%
|
5.5[4.0-7.6]
|
60%
|
57.5%
|
80%
|
3.8[1.7-8.4]
|
70%
|
43.9%
|
86%
|
5.7[2.8-11.4]
|
75%
|
54%
|
87%
|
5.9[3.9-9.1]
|
80%
|
56%
|
68%
|
2.0[0.6-6.1]
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臨床的に有意な狭窄
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53%
|
83%
|
4.3[2.8-6.7]
|
頸部血管雑音の頸動脈狭窄に対する特異性は高いものの、感度は50%前後。
所見を認めれば狭窄がある可能性は高いものの、認めなくても否定はできない。
有意差はないものの、狭窄率が高いほど血管雑音を認める可能性は低下する傾向にある。
頸動脈狭窄の評価はいつすべきか?
TIAや脳梗塞患者、一過性黒内障患者では頸動脈狭窄の評価は行うべきであるが、
無症候の患者における狭窄スクリーニングは推奨されていない(U.S. Preventive Services Task Force Recommendation Statement 2014. Ann Intern Med. 2014;161:356-362.)。
なぜ無症候性の患者ではスクリーニングが推奨されない?
無症候性の内頸動脈狭窄の狭窄率と、脳梗塞発症リスクは以下のとおり
狭窄率と同側の脳梗塞発症率
狭窄率 50-69%では0.8%/年
狭窄率 70-89%では1.4%/年
狭窄率 90-99%では2.4%/年 (Eur J Vasc Endovasc Surg. 2005 Sep;30(3):275-84.)
狭窄率 50-69%では0.8%/年
狭窄率 70-89%では1.4%/年
狭窄率 90-99%では2.4%/年 (Eur J Vasc Endovasc Surg. 2005 Sep;30(3):275-84.)
無症候性の頸動脈狭窄患者を対象として、内科的治療 vs 内科的治療+内膜切除術の脳梗塞予防効果を比較したスタディのメタアナリシスでは、
内膜切除術では長期的には脳梗塞を予防する効果が期待できるが、
短期的には脳梗塞リスク、また死亡リスクを上昇させる可能性がある。
(Ann Intern Med. 2013;158:676-685.)
RR | RCTs | Non-RCTs | |
長期予後 | 同側のStroke | 0.72[0.58-0.90] | 0.93[0.14-6.42] |
全Stroke | 0.68[0.56-0.82] | 0.86[0.44-1.66] | |
死亡 | 1.05[0.97-1.14] | 2.81[1.99-3.98] | |
術後~30d | 全Stroke | 5.94[2.06-17.12] | NA |
死亡 | 3.68[0.77-17.72] | NA |
無症候性の頸動脈狭窄に対する内膜切除、血管内ステントの効果を評価したLevel 1 trialのまとめ (JAMA 2013;310:1612-1618)
ACAS trialは内膜切除+内科的治療 vs 内科的治療を比較
ACST trialは早期の内膜切除 vs 晩期の内膜切除
CRESTは内膜切除 vs 血管内ステント術 を比較。
ちなみに、
無症候性の内頸動脈狭窄患者に内膜切除術を行った場合
周術期合併症リスクが<3%と0%の時の脳梗塞予防効果を算出すると、
周術期合併症リスクが<3%と0%の時の脳梗塞予防効果を算出すると、
1000件の内膜切除術を施行し, 5年間の脳梗塞予防効果は周術期合併症リスク2.3-2.8%で53-59例(約5.5%)
0%の仮定で82-83例(約8.3%)
0%の仮定で82-83例(約8.3%)
90%以上の患者でCEAの意義はなかったという結論になる(10年間でも4.6%と7.4%)
(Eur J Vasc Endovasc Surg (2014) 48, 633-640 )
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つまり、無症候性の頸動脈狭窄において、内科的治療に加えて血管再灌流療法を行う意義が今の所はっきりしていないため、スクリーニングは行わない、ということ。
内科的治療は基本的には降圧療法、糖尿病治療、高脂血症の治療であり、スクリーニングを行おうが、行わないであろうが、あまり方針に変わりはない(抗血小板薬をどうするか、という判断には関わるかもしれない)。
内膜切除術や血管内ステントでわずかながら脳梗塞の予防は可能であり、今後はどの患者群で行えばより予防効果が高まるか(対費用効果的にも)が明らかになれば、スクリーニングを行う意義もでてくるというもの。
ちなみに無症候性の頸動脈狭窄患者におけるTIA/脳梗塞のリスク因子は以下のとおり
CT/MRIで無症候性脳梗塞所見あり
狭窄の増悪傾向あり
低エコープラーク, GSM<15
辺縁不整のプラーク
TCDで塞栓子を検出
内部に脂肪や壊死を含むプラーク, 欠けているプラーク
プラーク内出血所見
プラーク面積>80mm2
内膜近傍の低エコー領域>10mm2
頭蓋内血管まで連続性に狭窄あり
同側, 対側のTIA, 脳梗塞の既往
低リスク群は, >75歳, 狭窄の増悪なし, GSM>30, 上記のプラークの性状なし.
(Eur J Vasc Endovasc Surg (2014) 48, 633-640)
これらでスコアを作成して、⚪︎⚪︎点なら無症候性でも手術を行う
ということになってゆくのではないのかね。