Am J Kidney Disより、"Calciphylaxis" のReviewが。
Calciphylaxisってなに!? というレベルの知識しか有りませんが、まとめてみます。
まだまだ知らん病気はたくさんあるものです。
(Am J Kidney Dis. 66(1):133-146, 2015)
Calciphylaxisについて
透析中の腎不全患者で生じる有痛性の紫斑, 難治性の潰瘍.
組織検査では細動脈の石灰化と微小梗塞, 脂肪織炎が主となる.
透析患者で多いが, 初期の慢性腎不全や腎不全(-)患者群でも報告例はある.
透析患者で生じるCalciphylaxisをuremic calciphylaxisと呼びそれ以外をnonuremic calciphylaxisと呼ぶ
透析患者で生じるCalciphylaxisをuremic calciphylaxisと呼びそれ以外をnonuremic calciphylaxisと呼ぶ
予後は悪く1年死亡率は45-80%
長期透析患者におけるCalciphylaxisは, 非Calciphylaxis症例と比較して約3倍の死亡リスクとなる.
疼痛によるQOL障害も大きい.
Calciphylaxisの経過
重度の疼痛を伴う皮膚病変(網様皮疹, 網様紫斑, 硬結を触れる結節など)
難治性であり, 感染が合併し潰瘍形成や水疱形成をきたすこともある
潰瘍形成した病変では黒色痂皮となる
潰瘍形成した病変では黒色痂皮となる
Calciphylaxis患者では骨格筋や脳, 肺, 腸管, 眼など全身の血管で石灰化を認める.
動脈の石灰化が関連した全身疾患である可能性が考えられる.
病理では小動脈の石灰化, 微小梗塞, 脂肪織炎を認める
石灰化は小動脈, 細動脈の中膜に多い.
石灰化は小動脈, 細動脈の中膜に多い.
動脈の石灰化が動脈内皮の障害の原因となる可能性が示唆されている
Calciphylaxisのリスク
・透析患者では高P血症、低Ca血症、PTH上昇、Vit D欠乏など
Ca、骨代謝障害を多く合併するため, 関連があると考えられる
ただし, 透析患者でもCalciphylaxisは稀な病態であり,
これだけでは説明はつかない.
Ca、骨代謝障害を多く合併するため, 関連があると考えられる
ただし, 透析患者でもCalciphylaxisは稀な病態であり,
これだけでは説明はつかない.
・Calciphylaxisは50歳台で最も多く報告されている(小児例も報告あり)
・男女比は1:2で女性に多い
・CKD以外に関連性のある疾患は糖尿病であるが, 糖尿病罹患期間や血糖コントロールとの関連は不明.
・肥満は近位部のCalciphylaxisとの関連がある(大腿部, 乳房, 体幹など)
・自己免疫疾患との関連も報告されており,
SLEや抗リン脂質抗体, 関節リウマチ, GCAなどでCalciphylaxisの合併が報告されている.
SLEや抗リン脂質抗体, 関節リウマチ, GCAなどでCalciphylaxisの合併が報告されている.
・感染症, 自己免疫疾患, アルコール性肝炎の関連も報告あり
・6−7年以上の透析期間もリスク因子となる
しかしながらuremic calciphylaxis症例の平均透析期間は3.1年程度.
しかしながらuremic calciphylaxis症例の平均透析期間は3.1年程度.
・薬剤の関連
カルシウム製剤やカルシウム含有P吸着剤(炭酸Ca), 活性型Vit D, ワーファリン, ステロイド, 鉄剤の投与, 皮下組織を損傷するインスリンやヘパリンの皮下注射はCalciphylaxisのリスク因子となる.
non-uremic calciphylaxisの報告例36例の原疾患は
原発性副甲状腺機能亢進症
悪性腫瘍(Hodgkinリンパ腫など)
自己免疫疾患
糖尿病
アルコール性肝疾患
他, テリパラチド使用, 副甲状腺機能低下症もあり
悪性腫瘍(Hodgkinリンパ腫など)
自己免疫疾患
糖尿病
アルコール性肝疾患
他, テリパラチド使用, 副甲状腺機能低下症もあり
腎機能は
Cr<1.2mg/dLが42%,
Cr 1.3-1.5mg/dLが6%,
Cr 1.6-2.5mg/dLが14%,
Cr 1.6-2.5mg/dLが14%,
Cr 2.6-3.0mg/dLが8% 他は記載なし.
ワーファリン使用例は25%, ステロイド使用例は61%であった
Calciphylaxisの評価、診断
皮膚所見は様々.
透析患者やリスクがある患者において, 著明な疼痛を伴う皮膚病変で, 触診で硬い石灰化病変が認められる場合はCalciphylaxisを考慮する
ワーファリン使用中の患者ではCalciphylaxisか、warfarin necrosisの鑑別が必要.
画像所見や血液検査所見では特異的なものはない
リスク因子の評価として行う.
Calciphylaxisと鑑別が必要な疾患
診断は皮膚生検
ただし, 皮膚生検自体が潰瘍形成のリスク因子となり, また感染症のリスク, 新規病変の誘発リスクにもなるため十分な説明と同意が必要.
鑑別にどうしても必要な場合, 治療方針に影響する場合に行うべきである.
皮膚生検はPunch biopsyでよく, 病変の辺縁部で行う. 病変の中心部では診断能が良好ではない場合がある.
病理所見では
皮膚, 皮下の小動脈, 細動脈の石灰化, 微小血栓, 血管内膜の線維性肥厚.
それによる皮膚の虚血や脂肪織炎所見が認められる.
それによる皮膚の虚血や脂肪織炎所見が認められる.
Calciphylaxisの治療
治療は創傷治療, 除痛, 栄養療法, リスクへの介入.
創傷治療ではデブリ, ドレッシングなど, 熱傷や褥瘡治療に準じた処置を行う
外科的デブリはさらなる悪化のリスクにもなるため,
感染もなく, 痂皮で乾燥していれば薬剤によるデブリで良い
感染もなく, 痂皮で乾燥していれば薬剤によるデブリで良い
感染の合併があれば抗生剤治療を
全例に行う必要はないが,
抗生剤の閾値は下げるべきとの意見もある.
全例に行う必要はないが,
抗生剤の閾値は下げるべきとの意見もある.
高圧酸素療法やMaggot療法も試される
疼痛コントロール
重度の疼痛があるため, 除痛はなかなか難しいことが多い
潰瘍の疼痛以外に神経性疼痛の関与もある.
潰瘍の疼痛以外に神経性疼痛の関与もある.
CKD患者ではNSAIDも使用しにくい.
Opioidと他の薬剤を併用しつつコントロールを行う
リスクへの介入
血清Ca, Pは正常域で保ち, PTHは150-300ng/mLで保つ
Ca製剤はや炭酸Caは避け, 透析液中のCa濃度も高くないほうが良い
Ca製剤はや炭酸Caは避け, 透析液中のCa濃度も高くないほうが良い
CinacalcetはCalciphylaxisのリスクを低下させる可能性がある.
ワーファリンやインスリン皮下注, 鉄剤の中止がCalciphylaxisのリスクを低下させるかどうかは不明.
ただし皮下注射は部位をローテーションさせたり,可能ならば薬剤の変更を試みるのは良い.
ただし皮下注射は部位をローテーションさせたり,可能ならば薬剤の変更を試みるのは良い.
透析の変更
腹膜透析はよりCalciphylaxisのリスクが高い可能性があり, 腹膜透析から血液透析への変更を考慮
ただし必須でもない.
Sodium Thiosulfate(チオ硫酸Na: デトキソール注射液2g®)
チオ硫酸Naの静脈投与は最もCalciphylaxisで行なわれている治療
ヒ素中毒, シアン中毒に用いられる薬剤.
透析の最後1時間に上記薬剤25gをNS100mlに溶解して, 毎透析に投与することで>70%の患者で石灰化病変が改善.
副作用は悪心嘔吐, 代謝性アシドーシス, 低血圧など
投与量は >70kgでは25g/回, <60kgでは12.5g/回が推奨される. 副作用があれば減量.
透析回数を増やす場合も1回あたりの使用量は減らす.
チオ硫酸Na 2gあたり483円
1回あたり5000円 over.
non-uremic calciphylaxisでは
12.5−25gを週に4−5回投与 ± 週1回の局所投与を行う施設もある.
12.5−25gを週に4−5回投与 ± 週1回の局所投与を行う施設もある.