ただ、その後 多くの甲状腺機能低下症患者を診療しているが、あまり大球性貧血となるイメージはない。
甲状腺機能低下症において大球性貧血となる根拠は実は乏しく、
調べてもあまり文献がヒットしない。
28例の甲状腺機能低下症患者において, 甲状腺補正前と補正後のMCVを比較すると, 16%低下した. (Am J Hematol. 1988 Mar;27(3):190-3.)
甲状腺機能低下症では脂質代謝異常が生じ、それにより赤血球膜の異常が生じるため、MCVが増大するという機序も指摘されている。(Scand J Haematol. 1984 Jan;32(1):19-24.)
甲状腺機能低下症ではVit B12や葉酸欠乏も合併しやすい(鉄欠乏も)ため、大球性となりやすいのかもしれない。
高齢者においてTSH値, FT4値とMCV, Hbの関連を評価したStudyでは,
T4が0.4 ng/dL減少毎にHbは0.19g/dL減少し
MCVは変化を認めない結果であった。(European Journal of Internal Medicine 24 (2013) 241–244 )
MCVは変化を認めない結果であった。(European Journal of Internal Medicine 24 (2013) 241–244 )
ただし, これらは甲状腺機能正常患者を対象とした評価であり、
甲状腺機能異常群ではないことに注意。
Iran J Ped Hematol Oncol. 2013;3(2):73-7. において, 甲状腺機能と赤血球データを評価した結果,
甲状腺機能亢進症も低下症でもHbは有意に低下する。
そしてMCVは有意差があるものの、ほぼ変わらない。むしろ低下する。
RDWは開大する。 という結果。
従って、
甲状腺機能低下症は正球性貧血の原因にはなるが、
大球性貧血となるわけではない、可能性が高い。
大球性貧血ならば他の原因の評価も考えた方が良いし、
正球性貧血で甲状腺機能異常を評価することも重要ということ。