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2012年8月13日月曜日

痙攣後と脳炎によるSPECT所見

痙攣後にMRIにてT2, DWIでHigh-intensity, ADCでLowとなる例は多い.
しかしながら, この所見が痙攣後の脳浮腫なのか, 脳炎による所見であり, 脳炎から痙攣を来したものかを判別するのは困難である場合が多く, しばしば臨床上困る.

DWIでHigh, ADCでLowということは水の信号が増強していることを意味する
つまり脳浮腫の状態。
痙攣後ではこの浮腫は血管原性であり, 脳炎では細胞傷害性の脳浮腫であることが多く, これを鑑別するにはSPECTが有用な可能性がある。

痙攣後の患者10名において, 脳MRI所見を評価したStudy (Brain 2005;128:1369-76)
 複雑性部分発作の10例では, 全例でDWIでHigh, ADCでLowが認められた.
 画像所見の分布は,
海馬体と視床の視床枕
6/10
視床枕と皮質
2/10
海馬体のみ
1/10
海馬体と視床枕と皮質
1/10



 と, 海馬体や視床, 皮質での所見が多い.
 また, この10名中, 2名でSPECTを試行したところ, 双方とも取り込みの増強が認められた.

 他にも痙攣後の脳浮腫にて, SPECTで取り込み増強する報告例は多い.
 ただし, 局所的な血流増加 → 毛細血管拡張を来たし, AVシャントの増加を来すことでSPECTで取り込み増強を認めないこともあり, 注意は必要.

脳炎とSPECTについて
 88例の急性脳炎例でSPECTを試行(Neurology 1997;48:1347-51)
 37例で原因が判明. HSV 15例, VZV 7例, マイコプラズマ 3例, アデノウイルス 2例, インフルエンザ 3例, ロタ 1例, Rubella 1例, EBV 1例, Arbovirus 1例, 梅毒 1例, 結核 2例

 HMPAO-SPECTにて片側の取り込み増加が認められたのは20例. 片側の取り込み低下が認められたのは20例, 両側の取り込み低下は7例. 残る41例では正常であった.

 興味深いのは, HSV脳炎では14/15(93%)で取り込み増加する一方, HSV以外の脳炎で取り込みが増加するのは6/73例のみ(8.2%)
 取り込み増強する群では予後不良例が多かった.

この結果から, HSV以外の急性脳炎ではHMPAO-SPECTで取り込み低下する例が27/73(37%)
取り込み増強する例は6/73(8.2%)と取り込み低下する例が多いということ,
HSV脳炎では14/15(93%)で取り込み増強するということが分かる.

また, 脳炎が疑われたが, 初期評価でMRI, CSF所見正常の2例において, SPECTを試行したところ, 2例とも取り込みの増強が認められ, その2例とも最終的にHSV脳炎であった症例報告もあり(臨床神経学 1996;36:475-80), SPECT所見はHSV脳炎の早期診断に有用な可能性がある.

別の報告では, HSV脳炎4例において, HMPAO SPECTとECD SPECTを試行したところ, 全例HMPAO SPECTでは取り込み増強し, ECD SPECTでは取り込み低下したとの報告もある.
(J Nucl Med 1998;39:1508-1510)

* HMPAO; Hexamethyl propyleneamine oxime, ECD; Ethyl cysteinate dimer.
 双方とも脳血流を評価するが, ECDは脳組織の取り込みにエラスターゼが必要であり, 急性期の脳梗塞など, 組織障害が強く, エラスターゼが欠如している場合は取り込みされない.

 つまり, HMPAOで集積(+), ECDで集積(-)では血流増加しているが, 組織障害が強いことを示唆している可能性がある.

これらをまとめると,
 痙攣後のMRIにて脳浮腫様所見が認められた場合, SPECTにて感染性の細胞障害か, 血管原性の脳浮腫かを鑑別可能な可能性がある.
 取り込み増加 → 血管原性. つまり痙攣後の脳浮腫
 取り込み低下 → 細胞傷害性. 脳炎の可能性がある

 例外はHSV脳炎であり, SPECTにて取り込み増加することが多い. ただし, ECD SPECTでは取り込み低下する可能性がある.
 また, 痙攣後でも, AVシャントの関連で取り込み増加しないこともある.

 まぁ〜、クリアカットに分かれる訳ではなさそうですね。

補足; Neuropsychiatric SLE(NPSLE)による脳障害もSPECTで取り込み低下し, MRIよりも感度良好となる.
 43例のSLE患者(22例のNPSLE, 21例のNon-NPSLE)において, MRIと99mTc-ECD SPECTを試行. (Arthritis and Rheumatism 2005;53:845-49)
 SPECTで異常を認めたのは20/22例(感度90.9%), その19/20が取り込み低下.
 MRIでは10/22例(45.5%)のみ.
 結果的に SPECTは感度90.9%, 特異度89.5%, MRIは感度45.5%, 特異度100%でNPSLEを示唆した.

 また, NPSLEでは特に前頭葉の分水嶺領域でのSPECT取り込み低下が認められることが多い.(Arthritis and Rheumatism 2008;59:332-337)

NPSLEではHSV脳炎と同様, ECD SPECTとHMPAO SPECTで違いがあるかどうか?
 答えは特に両者で変わりは無く, ECDでもHMPAOでも取り込みは低下する.
 (J Neuroimaging 1999;9:160-64)(J Nucl Med 1997;38:1112-1115)

 NPSLEでは血管炎や抗リン脂質抗体症候群に伴うVasculopathyが主な病態となるため, 血流低下が認められることが多いと予測できる. 病変も多巣性であったり, 分水嶺領域に多かったりと, Vasculopathyが関与している可能性を示唆する.
 感度がMRIよりも良好なのは面白い. 今度疑ったらやってみよう!

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