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2012年8月9日木曜日

一過性全健忘症

一過性全健忘症 Transient Global Amnesia (TGA)
 一過性の前向性, 後向性の健忘で24時間以上は続かないもの.
 健忘は前向性が主となる, 後向性は少ないがあり得る.

疫学;
 発症率は3-8/100000/yr, 男女差は無し.
 好発年齢は50-70歳で, 75%を占める. <40歳は稀であり, 他疾患を考慮すべき.
 再発は非常に稀とされるが, 6-10%/yrで再発するとの報告もある. 51名のTGAを7年間フォローしたところ, 再発率は8%であった報告がある.

Neurol Clin 29 (2011) 1045–1054


発症のトリガーを認めるのは50-90%
 精神的, 身体的ストレス, 性行為, 急性の疼痛, 体温の変化や水との接触がトリガーとなり得る.


 男性例では身体的なストレス,
 女性例では精神的なストレス,
 <56歳での発症例では片頭痛がトリガーとなることが多い. Lancet Neurol 2010; 9: 205–14

TGAの経過, 健忘について
 TGAの発作中の記憶は欠如するため, 診察にて何度も同じ事を聞いたり, 状況が理解できず, 不安を強く訴えたりする事が多い(前向性健忘). また, 発作時よりも数時間前の記憶も欠如する事が多い(後向性健忘).
 発作後は, 発作期間中の記憶は欠如. 発作終了後からの記憶は残存している.
 後向性健忘は改善していることが多いが, 一部残存することもある.
記憶障害以外には頭痛や嘔吐, めまいの合併はあり得る.

TGAの診断Criteria

 前向性健忘を認め, 認知障害や神経症状, 脳症, 痙攣, 頭部外傷が否定され, 24hr以内に改善する事が診断に必要. Lancet Neurol 2010; 9: 205–14

鑑別診断として,
 脳梗塞(側頭葉を障害), せん妄, ウェルニッケ脳症, 精神疾患, 片頭痛, Transient epileptic amnesia, Nonconvulsive status epilepticus, 低血糖, 薬剤性が挙げられる.

 Transient epileptic amnesiaとは, てんかん発作に関連した一過性全健忘であり, 複数回の健忘がある場合, てんかん発作を伴う場合に考慮すべき疾患. 診断Criteriaは以下の通り
Lancet Neurol 2010; 9: 205–14

日本国内のTGA 27例の報告 (弘前医学 1992;44:107-113)
 発症年齢は38-70歳, 平均56.5歳. 男性13例, 女性14例.
 発作の平均持続時間は5.1時間[1.5-9.1]
 発症時期は冬期(12-2月)に51.9%, 春期(3-5月) 33.3%と多い. 発症時間には分布差無し.
 発症時のトリガーとしては, 以下の通り.
状況
%
状況
%
飲酒(前夜)
22.2%
家事
7.4%
鼻すすり
14.8%
内服後
7.4%
入浴
11.1%
排便
7.4%
起き上がり
11.1%
その他
11.1%
仕事中
7.4%




TGAの原因 Neurol Clin 29 (2011) 1045–1054
 海馬の異常が原因となる. 障害の原因は未だ不明.
 静脈還流の異常によるうっ血説もあるが, 証明は難しい(TGAでは内頚静脈弁逆流が多いとの報告もある)
 203例のTGA患者にてMRI-DWIを行ったところ, 海馬にHighを認めたのが16例であった.

TGAの画像所見 Lancet Neurol 2010; 9: 205–14

海馬における, 画像所見で異常を認める事が多い部位

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