抗菌薬にてDIHSを呈した患者.
重症薬疹であり, ステロイドで治療するが, 治療中に感染症を併発したため,
相互作用や共通点のない他のクラスの抗菌薬を使用・・・すると, さらに薬剤過敏症状や臓器障害が増悪・・・
といった経験, ありますか?
こういうのをMultiple Drug Hypersensitivity Syndromeというらしい
ちなみに以下も参照
DIHS(Drug-induced Hypersensitivity Syndrome), DRESS(Drug Reaction with Eosinophilia and Systemic Symptoms)
DIHSの重症度評価と治療方針
MDHは複数の構造の異なる薬剤に対して過敏性反応を呈する病態.
(Int Arch Allergy Immunol 2017;172:129–138)
・ペニシリンアレルギー患者の13%が他の種類の抗菌薬にも反応を示す.
過去に薬剤アレルギーを示した患者群では, そうではない群と比較して他の抗菌薬へのアレルギーリスクが9.4倍となる
・さらに, 薬剤アレルギーの家族歴がある患者の10%で薬剤へのアレルギーを生じる報告もある.
・NSAIDはアレルギー機序よりもCyclooxygenase阻害といった作用により生じることが多いため, この場合はNSAID intoleranceと呼び, MDHとは分けて考える.
DIHS, MDH, NSAID intoleranceの比較
・DIHSからMDHに移行する例が多い
MDHでは薬剤反応性T cellが関与しているが, 薬剤間の交差反応ではなく, それぞれの薬剤に対して特異的に反応するT cellが存在する.
・交差反応を示すクローン性T cellは認められていない.
・また, 反応するT cellは其々で異なるサイトカインを分泌するため, 薬剤毎に症状も異なる.
・CD38+, PD-1+を示すT cellが多く発現している
MDHにおいて原因となった薬剤の例
1996-2018年に薬剤過敏でコンサルトされた症例全例をReview
・9250例で薬剤過敏の精査を行い, このうち1819例で1剤以上の薬剤過敏が認められた.
・2剤以上の過敏症が認められた症例が201例.
さらにMDHと診断された症例は45例(92件の薬剤過敏)
薬剤過敏症例の2.5%がMDH
・アレルギーのタイプではI型とIV型アレルギーが多い.
原因薬剤はペニシリンやキノロンなど抗菌薬が多い.
(J Allergy Clin Immunol Pract. 2020 Jan;8(1):258-266.e1.)2013年の論文より, MDHの頻度を評価した報告のまとめ
(Curr Opin Allergy Clin Immunol 2013, 13:323 – 329)
・頻度はばらつきがあるが, <2-3%から10%前後の報告が多い.