喀痰や尿のグラム染色は感染診療においてかなり役に立つ印象があるものの, エビデンスの面ではちょっと弱い.
(これはプロトコール化するのが難しいし, 検者の感覚や経験に左右される面があるためと思っている)
そんななか, 国内より非劣性RCTが発表されたので紹介.
(JAMA Network Open. 2022;5(4):e226136. doi:10.1001/jamanetworkopen.2022.6136)
GRACE-VAP: 日本国内の12カ所のICUにおけるOpen-label, 非劣性RCT.
・患者群は15歳以上, 人工呼吸器管理≥48hでVAPと診断された群(mCPIS ≥5)を対象.
・除外項目: 使用薬剤のアレルギー歴あり, 妊婦, ICU退室, 心不全や無気肺と診断された群, 導入時に24h以上抗菌薬を使用, 積極的な延命を行わない患者. また, COVID-19感染例も除外された.
・上記を満たす群を,
ガイドラインに準じた抗菌薬選択群と,
気道分泌物グラム染色所見に準じた選択群に割り付け,
臨床的反応率を比較.
臨床的反応率は, 14日以内にAbxを終了, 画像所見の改善がある/増悪がないこと, 肺炎症状, 所見が改善していること, その後もAbxの再投与が必要ないことの4項目で定義.
・ガイドライン群では抗MRSA薬, 抗緑膿菌活性を持つAbx
・Gram染色群では上記のように判断.
母集団
アウトカム
・臨床的反応率はGram染色群で76.7%, ガイドライン群で71.8%
RD 0.05[-0.07~0.17], 非劣性が証明.
・死亡リスクや人工呼吸器管理, ICU管理期間も有意差なし.
・緑膿菌活性のあるAbx, 抗MRSA薬の使用頻度がおよそ3-4割減少.
ただし6.8%でEscalationが必要
(Escalationがあると, それだけで実臨床上マイナスイメージが強くなりがちなので一応強調しておく).