高齢男性, 繰り返す消化管出血の精査において, 上部消化管に隆起性, 多発性の病変が認められた. その組織よりAAアミロイドが検出され, AAアミロイドーシスと診断された.
しかしながら, その背景にRAや自己免疫性疾患, 自己炎症性疾患, 感染症, 悪性腫瘍といったものが認められなかった.
CRPは通常<1.0mg/dLだが, 血清アミロイドA値は20-30mg/Lに持続的に上昇していた.
これは ”特発性” AA amyroidosisなのか?
この場合治療はどうすべきだろうか?
AAアミロイドーシス
・発展途上国ではAL Amyloidosisよりも多く認めるTypeで, 慢性炎症性疾患, 長期の感染症, AIDSなどに伴う. 全国的にはSystemic amyloidosisの45%を占める.
・急性炎症反応物質である血清アミロイドA蛋白(SAA)が, 切断, ミスフォールディング, 凝集の過程を経て, 異常なβシート構造に変化したものがAAアミロイド線維
・アミロイド線維はグリコアミノグリカンや血清アミロイドPなど他の部位と結合し, 組織や臓器に沈着. 構造や機能を破壊する.
・SAAは通常3mg/L程度の濃度で血中に存在するが, 急性炎症期では2000mg/L以上に上昇する.
・持続性のSAAの過剰生産がAA amyloidosisに関連するが, 慢性炎症がある患者の一部でのみ発症することを考慮すると 他の因子の関連も強いと考えられる.
(N Engl J Med 2007;356:2361-71.)
SAAには遺伝子多型があり, 産生蛋白にはSAA1, SAA2, SAA4に大別される
・IL-1, IL-6, TNF-αなど炎症性サイトカインにより, 肝細胞にて合成される.
・AA amyloidosisではSAA1に由来するものが90%以上.
・SAA1遺伝子は4つのexonから構成されるが, 主な蛋白部分での一塩基多型(SNP)はexon3に存在する.
・exon3の多型はSAA1α(1.1), β(1.2), γ(1.3)があり, 日本人ではSAA1γ(1.3)が危険因子とされる. [SAA1α(Val52/Ala57), SAA1β(Ala52/Val57), SAA1γ(Ala52/Ala57)]
・一方でドイツからの報告では, SAA1αがAA amyloidosisに関連しており, 人種差がある(Amyloid. 2015 Mar;22(1):1-7.)
ドイツからの報告:(Amyloid. 2015 Mar;22(1):1-7.)
・AA amyloidosis 71例中, FMFが34%, リウマチ性疾患が42%, 明らかな原因を認めない特発性が16%(11).
・特発性では高齢者が多く, 全例で2x SAA1αを認めた.
慢性リウマチ性疾患+AA amyloidosisでもSAA1αは高頻度.
・FMFや慢性炎症患者群において, Amyloidosis合併 vs 非合併を比較すると,
SSA1αは有意なリスク因子となる
AA amyloidosisはどのような臨床的な特徴があるか?
症例Reviewをみてみる;
UKにおける374例のSystemic AA amyloidosisの解析
(N Engl J Med 2007;356:2361-71.)
・背景疾患の頻度; 慢性炎症性関節炎が60% , 慢性感染症が15%, 周期性発熱疾患が9%
他にCD, Castleman病など
・原因不明も6%である
患者群の基礎データ
・SAA濃度は28[0.7-1610]mg/L
CRPは2.0[0.07-20.6]mg/dL
SAA値は予後や臓器障害の進行に関連する
・Whole-body amyloid burdenが低下する群では SAA値の中央値は7mg/L
横ばいの群では17mg/dL, 増悪する群では54mg/L
・SAA <10mg/Lとなった群の60%でアミロイド沈着は低下し, 生命予後も良好となる.
・腎機能が改善/横ばい/増悪で分類しても, SAA値は臓器障害の進行に関連する.
・SAA値は死亡リスク因子にもなるため, AA amyloidosisの診療ではSAA値を下げることが重要
死亡や臓器障害に関連する因子
日本国内のAA amyloidosis 199例を調査
(Intern Med 57: 3351-3355, 2018)
・2012年〜2014年の調査.
・背景疾患はRAが6割と多く, 11%が性質不明の炎症性疾患
臨床症状