ガドリニウム造影剤は腎毒性はないが、投与によりanaphylactoid反応などのリスクにはなる.
・アレルギー様反応や他の副作用は 0.07-2.4%
・アレルギー様反応は稀であり, 0.004-0.007%程度.
・致命的な反応も非常に稀(0.001-0.01%)
腎疾患患者におけるGa造影剤の使用では, Nephrogenic Systemic Fibrosisが問題となる
・腎機能の低下した患者におけるガドリニウム造影剤の使用によりコラーゲンの沈着が全身に生じる病態.
・軟部組織, 皮膚, 筋, 心臓, 肝臓, 肺など.
・組織の線維化を伴う肥厚所見が認められる.
Nephrogenic systemic fibrosisはGa造影後2−3ヶ月以内に生じる.
・90%はGadodiamide(オムニスキャン®), 10%はDimeglumine(マグネビスト®)やGadoversetamide(Optimark)の使用歴がある.
・ほぼ全例が重度の腎不全で, 造影剤を使用することで生じている
・またNephrogenic systemic fibrosisはDose依存性
(The American Journal of Medicine (2015) 128, 943-949)
全てのGa造影剤で同じようなリスクとなるわけではなく薬剤によりリスクが異なる.
・リスクが低いGa造影剤をGroup IIとし, gadobenate dimeglumine, gadoteridol, gadoterate meglumine, gadobutrolが含まれる
Stage 4-5のCKD患者における, Nephrogenic Systemic Fibrosisのリスク因子を評価したMeta
(JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2019.5284 )
・Group II GBCA(Ga-based contrast agent)を使用し, アウトカムをNSFとした16 trials, N=4931例を評価.
・患者はeGFR<30mL/min/1.73m2を満たす患者で, 透析患者も含む
・Group II GBCAはgadobenate dimeglumine, gadobutol, gadoterate meglummine, gadoteridolが含まれる.
国内で使用されるのは
環状型: プロハンス®(gadoteridol), マグネスコープ®(gadoterate meglumine), ガドビスト®(gadobutol)
線状型: オムニスキャン®(gadodiamide), マグネビスト®(gadopentetate meglumine)であり, 環状型Ga造影剤を評価したMetaと言える.
アウトカム: MetaではStage 4-5のCKD患者におけるNSFは0例(0%)
・Follow-up期間は3-72ヶ月間
・Group II GBCAにおけるNSF発症率の上限は0.07%
薬剤別では
gadobenate dimeglumineが0.12%(0/3167)
gadobutrolが1.11%(0/330),
gadoterate meglumineが0.31%(0/1204),
gadoteridol 1.59%(0/230)
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環状型のGa造影剤: プロハンス®(gadoteridol), マグネスコープ®(gadoterate meglumine), ガドビスト®(gadobutol)を使用する限りは, 腎障害があってもNSFのリスクは非常に低いと言える.
添付文章上は原則禁忌になっているため難しいものの, 臨床的にどうしても評価が必要であり, 有用性が上回るならば考慮してもよいと考えられる.