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2019年12月12日木曜日

肺胞蛋白症

肺胞蛋白症 Pulmonary alveolar proteinosis(PAP)

の異常によりSurfactantが肺胞内に貯留する病態
・頻度は0.37/100 000と稀.
平均診断年齢は39.
初発症状は呼吸苦, 倦怠感だが, 30%が無症候.
・Surfactantを吸収するの機能異常Surfactantの産生の産生増加が原因となる.

原発性PAPと二次性PAPがあり,
・原発性: GM-CSFの機能異常. GM-CSF抗体よる自己免疫性や先天性(CSF2RA, CSF2RB)が含まれる.
・二次性: その他. 薬剤や抗原暴露, 感染症, 全身疾患など. Surfactant産生が増加する先天性も含まれる.
(Nat Rev Dis Primers. 2019 Mar 7;5(1):16.)


(Lancet Respir Med 2018; 6: 554–65 )
・原発性のほとんどが抗GM-CSF抗体による自己免疫性
・二次性で頻度が高いものは血液疾患であるMDSと感染症である結核(BMC Pulmonary Medicine (2018) 18:15 ) ただしこれは地域性もある

発症年齢はPAPの原因予測に有用な情報となる

・成人発症例では自己免疫性が多い.
高齢者では抗原暴露や免疫不全, 血液疾患に伴うもの
 感染症や薬剤は全年齢で考慮

日本国内における1999-2016年の登録症例の解析では
・PAP952.
 このうち877(92%)が原発性PAP, 71(7.5%)が二次性
 分類不能が4例のみ.
原発性PAPのうち872例が自己免疫性で, 5例が先天性
(Nat Rev Dis Primers. 2019 Mar 7;5(1):16.)

・診断年齢は40-50歳台で, 発症年齢はそれよりも10歳ほど低い.
・症状は無症候性が3割強程度
 症状としては呼吸苦, 咳嗽が多く, バチ指は2-3割程度で認められる.
・KL-6は非常に高値となり, 数千〜万に上昇することが多い. 重症度に相関する
(Am J Respir Crit Care Med Vol 177. pp 752–762, 2008)

PAPの画像所見
PAPではGGO + 小葉間隔壁・小葉内隔壁肥厚を伴う, 通称 ”crazy-paving“ patternとなる所見が有名

・25例におけるCT所見
・分布はびまん性が多く胸膜直下や肺底部はスペアされることも(2-3)
(J Thorac Dis 2018;10(10):5774-5783 )

他の肺胞内が物質で満たされる病態
・これらの疾患は同様の症状や画像所見となり得る
(Pediatrics. 2017;140(2):e20170610 )

BALの所見
PAPを疑った際にまず行うのは気管支鏡検査.
・BALにおいて特徴的な混濁した洗浄液を認める
・鏡検でMay-Giemsa染色で好塩基性に染まる卵円状の構造物を認める
(Lancet Respir Med 2018; 6: 554–65 )

PAP疑い症例の診療
・臨床的にPAPが疑わしければまず気管支鏡を行い, BAL所見を評価する
 (個人的な経験からは, 肺画像が派手の割には低酸素が軽度, そしてKL-6が異常高値となるような印象がある)
 >> 典型的でなければ組織検査を検討する
・PAPと判断されれば抗GM-CSF抗体を評価し, 原発性PAPを判断
 陰性ならば二次性の検討を行う.
(Lancet Respir Med 2018; 6: 554–65)

PAPの重症度と相関する因子
・LDHや抗GM-CSF抗体価, KL-6, SP-A,B,Dなどは重症度との相関性がある.(Lancet Respir Med 2018; 6: 554–65)
・また, 画像所見(CT)において, 左右肺を上、中、下の6領域にわけ, それぞれで軽度GGO(1pt), GGO(2pt), Consolidation(3pt)で評価した画像スコアも同様に重症度との相関性が証明されている(Ann Am Thorac Soc Vol 14, No 9, pp 1403–1411, Sep 2017 )

PAPの治療
・無症候性, 肺機能が保たれている症例ではリスク因子を排除し経過をフォローする.
・それ以外の症例では, 感染症や肺線維症を除外. 慎重に経過観察しつつ, 全肺洗浄やGM-CSF抗体陽性例ではGM-CSFの皮下注や吸入療法も試される.
・難治性の場合は肺移植やRTXを検討
(Lancet Respir Med 2018; 6: 554–65)

GM-CSF療法の反応率
・皮下注射では半数程度
 吸入ではさらに高頻度で反応が期待できる

国内からGM-CSF吸入療法を評価したPhase 2 trial
GM-CSF抗体陽性の自己免疫性PAP 63例を対象とし, GM-CSF吸入療法の効果を評価したDB-RCT.
(N Engl J Med 2019;381:923-32.)
・患者は抗GM-CSF抗体陽性のPAPPaO2 <70mmHg(5分間の安静後, 室内気で評価), または呼吸器症状がある場合は<75mmHgを満たす群
6ヶ月以内に肺洗浄施行歴がある症例やGM-CSF治療歴がある患者, 妊婦, PaO2<50mmHgは除外.

上記患者群を, rhGM-CSF吸入(125µg 12, 7日間継続し, その後7日間は休薬. このサイクルを12サイクル) vs Placebo群に割り付け, A-aDO2を比較.

母集団

アウトカム


・A-aDO2や画像所見は有意に吸入群で改善あり
・自覚症状やKL-6値も有意に改善