スタチンは肝内循環に作用することで, 肝硬変症例において, 門脈圧を低下させる効果が期待できる.
・肝臓におけるNO産生や肝内皮細胞障害を改善させるらしい
肝硬変+門脈圧亢進(HVPG≥12mmHg)を認める59例を対象としたDB-RCT.
(Gastroenterology. 2009 May;136(5):1651-8.)
・除外: 妊婦, 胆汁鬱滞性肝障害, 重度の肝不全, Bil >5mg/dL, PT<40%, II-IV度の肝性脳症, Child-Pugh ≥12, Cr >1.5mg/dL, 肝細胞癌, 門脈血栓症, 門脈シャント形成後, 3ヶ月以内のスタチンの使用歴
・Simvastatin 20mg/d(15日後に40mgに増量) vs Placebo群に割り付け, 1ヶ月間継続.
母集団
・大半がChild-Pugh A-B
アウトカム: 使用前後のLab, HVPGなど
・門脈圧, 肝静脈圧, IGCすべてスタチン群で改善
肝硬変で門脈圧亢進を伴う患者(US, 上部消化管内視鏡において食道静脈瘤+, HVPG≥5mmHg[β遮断薬を使用している患者がいるため]) 34例を対象したTriple-blind RCT
(Dig Liver Dis. 2015 Nov;47(11):957-63.)
・除外: AST, ALT>3ULN, 6ヶ月以内のSimvastatin使用, 門脈血栓症, 造影剤アレルギー, 肝細胞癌, 予後不良な悪性腫瘍, Cr>1.5mg/dL, 出血素因(PT<30%, PLT <35000), 重度の腹水, II度以上の肝性脳症
・Simvastatin 40mg/d vs Placeboに割り付け, 3ヶ月間継続
・Primary outcomeはHVPG20%以上の低下, または<12mmHg(初期に>12mmHgであった症例)
母集団
・これもChild-Pugh A-Bがほとんど
アウトカム: Simvastatin群で有意にHVPGは低下
肝硬変で食道静脈瘤出血をきたした患者群を対象とし, Simvastatin vs Placeboで比較したDB-RCT.
(Gastroenterology. 2016 May;150(5):1160-1170.e3.)
・患者は通常の再出血予防治療(β遮断薬, Ligation)を施行予定.
出血から10日以内に割り付け.
・除外: 妊婦・授乳婦, 多発性肝細胞癌(単一の場合は>5cm), Cr>2mg/dL, Child-Pugh >13, スタチン禁忌, HIV, 門脈シャント作成後, 胃静脈瘤からの出血, 完全門脈血栓, Portal vein cavernomatosis, 以前に内視鏡的banding ligationとβ遮断薬を行なっている, 1ヶ月以内のスタチン使用歴
・Simvastatinは20mg/dで開始し, 15日後に40mg/dに増量
投薬は~24ヶ月継続
母集団
・Child-Pugh Bが多いが, Cもそれなりにいる
アウトカム
・Simvastatinは食道静脈瘤の再出血リスクを軽減させない
・腹水や門脈圧亢進に伴う合併症の軽減効果もない
・しかしながら死亡, 肝移植例は有意に低下する結果
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小規模のRCTがほとんどではあるが, 肝硬変に対するスタチン(simvastatin)は門脈圧を低下させ, 肝硬変の予後を改善させる可能性が示唆されている.
食道静脈瘤の再出血予防効果は認めない.
また, 肝硬変の予後を改善させるとされる抗菌薬, リファキシミンとの併用の場合は, Simvastatinの投与量は少なくすべきとの報告もある:
LIVERHOPE-SAFETY: 中等度以上の肝硬変(Child-Pugh B~C, ≤12pt)を対象としたDB-RCT.
・移植待ちの患者, Acute-on-Chronicの経過, Cr>2mg/dL, Bil>5g/dL, INR>2.5, CK>2ULN, 15日以内の消化管出血, 細菌感染症, 肝性脳症, HIV, 肝細胞癌, 6ヶ月以内のHCV治療, 筋症既往, CYP3A4阻害作用のある薬剤使用, 肝外腫瘍, 血液疾患, 妊婦・授乳婦は除外
・Simvastatin 40mg/d + Rifaximin 1200mg投与群
Simvastatin 20mg/d + Rifaximin 1200mg投与群
Placebo群に割り付け, 12wk継続. 副作用を比較した.
母集団
副作用:
・AST, ALT, CPKは有意にSimvastatin 40mg/d群で上昇する
・有意差を生じたため, 安全性を懸念してStudyは途中で終了