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2019年12月20日金曜日

コルヒチンとヒドロキシクロロキンによる自己貪食空胞性ミオパチー

自己貪食空胞性ミオパチー: 
Autophagic Vacuolar Myopathy(AVM): 骨格筋の筋線維内に自己貪食空胞が出現する筋症
・進行する筋症で予後不良.
 先天性疾患としてDanon, 過剰自己貪食を伴うX連鎖性ミオパチー(XMEA)が知られている. 他にも原因遺伝子が不明な病態もあり.
先天性疾患では, 緩徐進行性の四肢筋力低下, 筋萎縮, 筋痛l, 心筋症, 不整脈, 精神発達遅滞が認められる
(Semin Pediatr Neurol 13:90-95, 2006)

Danon病の病理


薬剤もAutophagic Vacuolar Myopathyの原因となる
・薬剤性の筋障害でVacuolar myopathyとなることがある.
 報告されている薬剤はコルヒチン, クロロキン, ヒドロキシクロロキン
 また, 薬剤ではないが糖原病II(酸マルターゼ欠損)でも同様の筋症を生じる.

コルヒチンによるAVMの報告: 86歳男性が痛風に対してコルヒチンが開始され2wk後から進行性の脱力を自覚.
(Neurology® 2019;93:e2306-e2307.)
・近位筋の筋力低下とCPK 3172U/mLの上昇筋電図検査にて筋症様所見が得られ, 筋生検を行なった.
筋生検では空胞を伴う壊死性筋症の所見.

コルヒチン中止後徐々に改善を認めた
・機序はコルヒチン  細胞微小管の崩壊  リソソームの働きを障害  自己貪食性空胞の形成 と考えられている

HCQによるAVM 4例の報告
(Neuropathology. 2018 Dec;38(6):646-652.)

・背景疾患にPMがあり, 当初PM増悪として免疫抑制の強化やIVIGを施行されるも改善乏しく, 組織よりAVMであった症例やSLE治療中に筋症が出現した症例といったパターンがある.
・HCQ開始~数年で発症している
HCQは半減期 20-60日と長く, あらゆる組織・臓器に蓄積する
 リソソーム内に蓄積することでリソソーム内pHを上昇させ, Cathepsin B, Mucopolysaccharidases, Acid maltase, Acid phosphodiesterase, 他大半のAcidic lysosomal hydrolaseの活性を低下させる機序などが推測されている
・薬剤中止により改善が見込める

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比較的身近で使用する可能性が高い薬剤 コルヒチンやHCQで自己貪食空胞性筋症を生じ得るという症例報告.
特にSLEの治療中の難治性の筋症ではHCQの可能性を考慮することは重要だと感じました.