国内のDPCデータを使用した, 敗血症性ショックで, CRRTを施行された患者群におけるPropensity-matched analysis.
(Blood Purif 2016;42:9-17)
・敗血症性ショックでCRRTの適応となった患者群 3759例を対象.
・ESRD, Cardiac intervention, CRRT導入前にPMXを施行した例, ウイルス, 真菌, グラム陽性菌による敗血症, 急性膵炎, 急性肝不全, 間質性肺炎例は除外
・上記のうち, CRRT+PMX施行群とPropensity scoreを合わせたCRRT単独群各978例を抽出し, アウトカムを比較.
・母集団の感染巣は腹部が51.9-53.3%と最多.
ついで呼吸器が9.3-9.8%, 尿路が9.3-9.7%, 皮膚, 軟部組織が6.0-6.4%
他にはCNS, 心内膜炎.
・手術治療施行群は30.8-31.5%
28日死亡率はPMX群で40.2%, Control群で46.8%, OR 0.75[0.62-0.91]と有意にPMXで低下する結果.
・サブ解析では, 腹部感染症でOR 0.71[0.55-0.92]と有意に低下しており, 呼吸器, 尿路, 皮膚軟部組織, その他では有意差を認めず.
・手術治療の有無で結果は変わらない.
重症敗血症, 敗血症性ショック患者に対するPMX-Bのメタ
(Crit Care Med ; 45:e858–e864)
・17 trialsのメタ(RCT 5, non-RCT 12)において, PMX-Bは有意に死亡リスクを軽減する結果(RR 0.81[0.70-0.95])
・リスク別の評価では,
高リスク群 RR 0.64[0.52-0.78],
中リスク群 RR 0.84[0.77-0.92]でリスク軽減効果があり,
低リスク群では有意差なし(RR 1.28[0.89-1.84])
・また, RCTのメタではRR 0.73[0.47-1.15]
non-RCTのメタではRR 0.85[0.73-0.98]とRCTでは有意差なし
ベースラインの死亡率とPMXによる死亡リスク軽減効果
・死亡リスクが高いほど, PMXによる効果は期待できる可能性がある.
・予測RRが有意に1を下回るのは死亡率50%前後と言える.
----------------------------------
腹部敗血症に対するポリミキシンBについてでも触れましたが
腹部敗血症に対するPMXは母集団の死亡率が高いStudyでは有意差を認めており, 2-3割程度の死亡率のStudy, Cohortでは有意差を認めていない.
敗血症, 敗血症性ショックを対象としたメタでも同様の結果となっている.
国内からのpropensity score matched analysisでも死亡率は47%と高い母集団. これは敗血症にCRRTを必要とするほどの重症度であり, 納得がいく数字. さらに腹部敗血症はUTIなどよりも死亡リスクは高いため, さらに死亡率は高い可能性がある.
今のところ, 腹部敗血症で, さらに死亡リスクが50%前後以上となる場合に考慮すべき治療法と捉えても良いであろう.
この50%前後というのは敗血症におけるAPACHE IIでいうと25点以上くらいを意味する.
また, 国内のCohortと参考に, 腹部敗血症でCRRTを回すほどの症例、と覚えておいてもよいかもしれない.