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2020年1月8日水曜日

炎症性腸疾患に合併する肺病変

炎症性背部痛, 脊椎関節炎所見 + 小葉中心性陰影で結核の治療したが改善なく, 最終的にIBD+脊椎関節炎であったというNEJMのCaseから,

IBDによる肺病変ってどのようなものがあるのか興味があり, 丁度Reviewもでていたのでチェックしてみました.
(The American Journal of Medicine (2020) 133:39−43)

IBD21-41%で生涯で腸管外病変を合併し得る
・多い腸管外障害は皮膚, 関節, 眼であるが近年肺病変の報告も増加している.
 無症候性の肺病変がHigh-resolution CTで検出されることも多い
IBD患者における肺病変では,
 >使用する薬剤による肺病変
 >免疫抑制から生じる感染症
 >IBD自体による肺病変 を考慮


IBD自体による肺病変は気管病変が主となる.
・中枢気道の炎症~末梢の細気管支の炎症まで様々
 中枢病変では喉頭蓋炎もある.
中枢気道病変はIBD診断後に合併することが多いが末梢気道病変はIBD診断前から認められることも多い(29%)
末梢気道病変はBOOPや肉芽腫性細気管支炎, DPB無症候性で, Tree-in-budを呈する小葉中心性陰影となることもある

大分からの後向き解析:
IBD患者 601(UC 350, CD 251)HRCT所見をReview
(Acad Radiol. 2018 Apr;25(4):407-414.)
・母集団の解析では, 咳嗽は1割程度. 喀痰を認める患者は無し.
 呼吸苦は数%程度と, 呼吸器症状は少ない

UC患者におけるHRCT所見
・多い所見は小葉中心性陰影で, およそ半数で認められる.
他はGGO, 気管支壁肥厚の頻度が高い
・IBDの重症度で肺病変の頻度には影響しない

CD患者におけるHR-CT所見

・多い所見は気管支壁肥厚と小葉中心性陰影で, 6割近く認められる.

・IBDの重症度で肺病変の頻度には影響しない

UCCDの比較
・気管支壁肥厚の頻度のみ有意差あり.

画像の例

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・IBDでは肺野病変を認める頻度は高く, 特に小葉中心性陰影が多い. 気管支壁肥厚や気管支拡張も多い所見である
・これらは無症候性で偶発的に発見されることが多い. IBDの重症度には関連しない.

ということで, 件のNEJMの症例は小葉中心性陰影+脊椎関節炎の情報から, IBDもあるか、という発想となればカッコ良かったのだろうな、と部外者の自分は空想に耽ります.