IBDによる肺病変ってどのようなものがあるのか興味があり, 丁度Reviewもでていたのでチェックしてみました.
(The American Journal of Medicine (2020) 133:39−43)
IBDの21-41%で生涯で腸管外病変を合併し得る
・多い腸管外障害は皮膚, 関節, 眼であるが, 近年肺病変の報告も増加している.
無症候性の肺病変がHigh-resolution CTで検出されることも多い
・IBD患者における肺病変では,
>使用する薬剤による肺病変
>免疫抑制から生じる感染症
>IBD自体による肺病変 を考慮
IBD自体による肺病変は気管病変が主となる.
・中枢気道の炎症~末梢の細気管支の炎症まで様々
中枢病変では喉頭蓋炎もある.
・中枢気道病変はIBD診断後に合併することが多いが, 末梢気道病変はIBD診断前から認められることも多い(29%)
・末梢気道病変は, BOOPや肉芽腫性細気管支炎, DPBや無症候性で, Tree-in-budを呈する小葉中心性陰影となることもある
大分からの後向き解析:
IBD患者 601例(UC 350, CD 251)のHRCT所見をReview
(Acad Radiol. 2018 Apr;25(4):407-414.)
・母集団の解析では, 咳嗽は1割程度. 喀痰を認める患者は無し.
呼吸苦は数%程度と, 呼吸器症状は少ない
UC患者におけるHRCT所見
・多い所見は小葉中心性陰影で, およそ半数で認められる.
・他はGGO, 気管支壁肥厚の頻度が高い
・IBDの重症度で肺病変の頻度には影響しない
CD患者におけるHR-CT所見
・多い所見は気管支壁肥厚と小葉中心性陰影で, 6割近く認められる.
・IBDの重症度で肺病変の頻度には影響しない
UCとCDの比較
・気管支壁肥厚の頻度のみ有意差あり.
画像の例
------------------------------
・IBDでは肺野病変を認める頻度は高く, 特に小葉中心性陰影が多い. 気管支壁肥厚や気管支拡張も多い所見である
・これらは無症候性で偶発的に発見されることが多い. IBDの重症度には関連しない.
ということで, 件のNEJMの症例は小葉中心性陰影+脊椎関節炎の情報から, IBDもあるか、という発想となればカッコ良かったのだろうな、と部外者の自分は空想に耽ります.