拡張期血圧のみ高値の病態をIsolated Diastolic Hypertensionと呼ぶ
・JNC7 guidelineでは高血圧の定義が>140/90mmHgであったがACC/AHA 2017では>130/80mmHgとなったため, IDHのカットオフも同様に90から80mmHgに低下.
・この90→80へのカットオフの低下は主にExpert opinionにより成されている.
また, IDHは若年に多く, 将来sBPが上昇する因子になることが示唆されているが, 心血管アウトカムを評価した臨床研究は少ないのが現状.
(JAMA. 2020;323(4):329-338. doi:10.1001/jama.2019.21402 )
NHANES, ARIC study, CLUE II studyにおいて, JNC7とACC/AHA2017におけるIDHの頻度と,アウトカムへの寄与を評価.
・NHANES: US国民を対象としたSurvey
ARIC study: USの4地域におけるアテローム性動脈硬化のリスクを検討した前向き観察研究
CLUE study: Wasington, Maryland, Mobileにおける悪性腫瘍と心疾患のCohort研究
IDHの頻度: JNC7の定義であ1%程度であるが, ACC/AHAでは6%と増加
・特に20-50歳台での頻度が高い
・降圧薬が適応となる症例は0.6%上昇
(ACC/AHAでは, dBP 80-89の場合は10年間のCVD risk≥10%で適応, dBP≥90で適応)
ARIC studyにおけるIDH症例と血圧正常群の心血管イベント
・両群で有意差なし
・Model 1: 年齢, 性別, 人種, 教育水準で調節したモデル
Model 2: 上記+喫煙, 飲酒, HDL, LDL, TG, BMI, 降圧薬, DM, 予測GFRで調節したモデル
Model 3: 上記+基礎のsBPで調節したモデル
・IDHは, (少なくともACC/AHA基準におけるIDHは)心血管リスクにはなりにくいと言える
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IDHは外来でしばしば診療しますし, 検診で引っかかって受診ということも多い.
確かに若い人が多い印象.
国内の高血圧ガイドラインでは, 高血圧は≥140/90mmHgのままですが、
IDHをどう扱うか、というのは国際的にも国内でも議論が必要そうな感じがします。