基本的に2時間値が糖尿病診断に使用される.
空腹時血糖と, OGTT2時間値の値から, 以下のように分類される.
・NGT: 空腹時 <100mg/dL, 2時間値 <140mg/dL
・IFG(impaired fasting glucose): 空腹時 100-126mg/dL
・IGT(impaired glucose tolerance): OGTT2時間値 140-200mg/dL
・IFGとIGTを合わせてPrediabetes(境界型耐糖能障害)と呼ぶ.
(Am Fam Physician 2010;81:863-70)
・糖尿病は空腹時 ≥126mg/dL, 2時間値 ≥200mg/dLで定義される
国内ではOGTTは2時間値のみならず, 30分、60分、120分、180分で評価されることが多い.
これらはDM診断において役に立つか?
日本人918例においてOGTTを施行したStudy
(J Diabetes Investig. 2013 Jul 8;4(4):372-5.)
・このうちOGTT 2時間値 ≥140mg/dLとなったのは501例.
・OGTT1時間値のカットオフ別のOGTT2時間値≥140mg/dL(IGT)の予測能は
OGTT1時間値と2時間値の相関性
・ばらつきはやはり結構大きい印象.
中国人でOGTTを施行した2886例において, 2時間値以外の数値を評価.
(European Journal of Endocrinology (2006) 155 191–197 )
・OGTTの評価時間とカットオフ別の感度, 特異度
境界型耐糖能障害に対する感度, 特異度
OGTT
|
カットオフ
|
感度(%)
|
特異度(%)
|
LR+
|
LR-
|
0分
|
101mg/dL
|
88.7%
|
100%
|
∞
|
0.11
|
30分
|
175mg/dL
|
77.5%
|
83.9%
|
4.8
|
0.27
|
60分
|
182mg/dL
|
83.7%
|
86.1%
|
6.0
|
0.19
|
120分
|
140mg/dL
|
83.3%
|
100%
|
∞
|
0.17
|
180分
|
110mg/dL
|
64.6%
|
94.3%
|
11.3
|
0.38
|
糖尿病に対する感度, 特異度
OGTT
|
カットオフ
|
感度(%)
|
特異度(%)
|
LR+
|
LR-
|
0分
|
123mg/dL
|
83.3%
|
96.5%
|
23.7
|
0.17
|
30分
|
202mg/dL
|
78.4%
|
84.7%
|
5.1
|
0.26
|
60分
|
234mg/dL
|
85.7%
|
89.6%
|
8.2
|
0.16
|
120分
|
200mg/dL
|
89.9%
|
100%
|
∞
|
0.10
|
180分
|
126mg/dL
|
83.7%
|
92.7%
|
11.4
|
0.18
|
これらから, 1時間値が>180となる症例では, 境界型耐糖能障害の可能性が高い.
また, >234mg/dLでは糖尿病である可能性が高いと言える.
OGTT1時間値 ≥155mg/dLはインスリン感受性の低下, 膵臓β細胞機能の低下が認められる.
EUGENE2: 両親の片方のみ2型糖尿病であり, 本人はOGTT2時間値正常である301例を, さらにOGTT1時間値 ≥155mg/dLとなる群, <155mg/dLに分類し比較したところ, OGTT1時間値 ≥155mg/dLではインスリン感受性の低下が認められた.
・インスリン分泌能自体は両者で有意差なし
(Diabetes Care 35:868–872, 2012)
GENFIEV trial: DMではないが, DMリスクの高い患者群を対象とし, OGTT1時間値とβ細胞機能, インスリン感受性を評価.
(J Clin Endocrinol Metab 98: 2100–2105, 2013)
・患者はDMの家族歴があるか, 第一親等で2型DMがいる, 脂質代謝障害, 耐糖能障害の指摘や他のDMのリスクがある患者群.
・上記を満たす929例でOGTTを施行
・OGTT1時間値のカットオフは155mg/dL
・OGTT1時間値 ≥155mg/dLはIGTと同程度のインスリン分泌能, HOMA-Rとなる.
OGTT1時間値とその後のDM発症リスクは?
CATAMERI: DM(-)でOGTTを施行した595例のOGTT1時間値と, その後フォローできた392例(5.2±0.9年)におけるDM発症リスクを評価.
(J Clin Endocrinol Metab 100: 3744–3751, 2015)
OGTT1h<155, FBG<100と比較して
・OGTT1h ≥155, FBG<100はDM発症リスク HR 4.02[1.06-15.26]
・OGTT2h<140, FBG 100-125はHR 1.91[0.44-8.29]
・OGTT2h>140, FBG <126はHR 6.67[2.09-21.24]
2138例において, OGTT結果別に4群に分類し, 死亡率を比較.
A) GOTT1h ≤155, 2h <140 群
B) OGTT1h >155, 2h <140 群
C) OGTT1h ≤155, 2h 140-199 群(IGT)
D) OGTT1h >155, 2h 140-199 群(IGT)
33年間での死亡リスクは,
・D群が最も悪く, 73.8%.
ついでC群 67.5%
B群が57.9%
A群が41.6%
・B群はA群と比較して, 有意な死亡リスク上昇を認める(28%)
Diabet Med. 2016 Mar 21. doi: 10.1111/dme.13116. [Epub ahead of print]
One-hour post-load plasma glucose level during the OGTT predicts mortality: observations from the Israel Study of Glucose Intolerance, Obesity and Hypertension.
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OGTT1時間値もDM発症のリスク評価や, 耐糖能の評価に有用な可能性が高い.
せっかく評価するのだから, 検査値は無駄がないようにしっかりと解釈したいものです.