AKIKI trial: 挿管管理 and/or カテコラミンを使用しているICU患者で, 且つ重度のAKI(KDIGO stage 3)があり, 腎不全による致命的な合併症がない患者620例を対象としたRCT
Initiation Strategies for Renal-Replacement Therapy in the Intensive Care Unit. N Engl J Med
・早期透析導入群 vs 晩期導入群に割り付け, 生命予後を比較.
早期: 割り付け後すぐに開始 = AKI stage 3の時点で導入
晩期: 後述の導入基準を1つでも満たせば導入
KDIGO AKIステージ:
Stage
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クレアチニン
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尿量
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1
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基礎値の1.5-1.9倍
または ≥0.3mg/dLの増加 |
6-12時間で<0.5mL/kg/h
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2
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基礎値の2.0-2.9倍
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12時間以上で<0.5mL/kg/h
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3
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基礎値の3倍以上
または ≥4.0mg/dLの増加 |
24時間以上で<0.3mL/kg/h
または 12時間以上の無尿 |
・BUN >112mg/dL,
・血清K >6mEq/L(治療している場合>5.5mEq/L)
・ABG pH <7.15,
・溢水による急性肺水腫でSpO2 >95%を保つために>5LのO2投与もしくはFiO2 >50%が必要となる患者
・この項目は, 晩期透析開始群の透析開始基準項目も兼ねる (= これらの1つ以上があれば透析導入)
透析中止基準:
・24時間で500ml以上の排尿が認められる場合に中止を考慮
特に利尿薬無しで1000ml以上ある場合, 利尿薬投与下で2000ml以上ある場合は強く中止を考慮する.
・さらに自尿のみでCr値が低下する場合に透析を中止.
患者の母集団
・母集団の8割が敗血症患者となる.
・SOFAスコアは11程度
アウトカム:
・60日生存率は両者で有意差無し
・晩期開始群の場合, 28日で約4-5割の患者が透析を免れる
・28日, 60日での透析継続率は
早期群で12%, 2%
晩期群で10%, 5%と有意差なし
ELAIN trial: 重症患者で, AKI KDIGO stage 2以上, 且つplasma neutrophil gelatinase-associated lipocalin ≥150ng/mLを満たす231例を対象とした単一施設RCT.
(JAMA. 2016;315(20):2190-2199. )
・KDIGO stage 2を満たして8時間以内に透析導入する群と
stage 3を満たして12時間以内もしくは透析導入をしない群に割り付け90日死亡リスクを比較
・患者は18-90歳のKDIGO stage 2を満たすAKIがあり, NGAL >150ng/mLを満たし, 以下の1つ以上の状態を認める群
・重症敗血症
・カテコラミンを使用中
・コントロール不良の溢水(肺水腫の増悪, P/F<300mmHg, 体重増加>10%),
・SOFA ≥2の増悪(腎臓を除く)
・CKD(GFR<30), 透析患者, 腎動脈閉塞による腎障害, 糸球体腎炎, 間質性腎炎, 血管炎, 腎後性腎不全, HUS, TTPは除外
母集団
・AKIKIと異なり, 心疾患患者が半数.
外傷や腹部手術も多く敗血症はむしろ少ない.
透析導入時の両群の状態
・晩期透析群も結局ほぼ全例で透析導入が必要となっている
早期導入群と比較して, 晩期20時間程度遅れて導入となっている
アウトカム
・早期透析導入群(stage 2で導入)は有意に死亡リスクの低下を認める
・透析期間や腎機能の改善も有意に早期導入群で低い
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AKIにおける透析導入のタイミングを評価した2つのRCTが連続して発表されました.
両者の違いは導入基準とその母集団と言えます
AKIKIではほぼ敗血症患者を対象とし, KDIGO stage 3で導入か,
・BUN >112mg/dL,
・血清K >6mEq/L(治療している場合>5.5mEq/L)
・ABG pH <7.15,
・溢水による急性肺水腫でSpO2 >95%を保つために>5LのO2投与もしくはFiO2 >50%が必要となる患者を満たす場合に導入するかを比較し,
早期(Stage 3到達時点)に導入しても生存率改善効果や維持透析回避効果はないという結論.
ELAINは心臓外科患者, 腹部外科, 外傷患者を主に対象とし, KDIGO stage 2で導入か,
Stage 3で導入するかを比較し, 早期に導入したほうが生命予後や腎予後を改善させる可能性があるという結論.
また晩期導入群の大半が結局透析を必要としている点. 母集団の重症度が高い点(SOFA 15-16)も大きく異なる.
この2つのRCTの背景が違いすぎるため, 一概に透析導入が早いほうが良いとは言い難い.
敗血症によるAKIでは, stage 3となっても, 自力で改善する可能性もあり, あまり急ぐ必要がなく,
外科患者や心臓外科患者, 外傷患者ではstage 2まで行くとそのままstage 3...とどんどん増悪する可能性が高いため早期に導入すべき, とも考えられる.
母集団、背景疾患でも導入のタイミングを考慮せねばならないのかもしれません.