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2014年9月25日木曜日

緑内障 Glaucoma

緑内障 Glaucoma
JAMA. 2014;311(18):1901-1911.
緑内障は進行性の視神経症の1つ.
 網膜のGanglion cellの変性を特徴とする.
 視神経乳頭萎縮を来たし, 視野障害, 視力障害を呈する.
全世界で7千万人以上が罹患しており, 10%が両側性の失明を来す.

>40yrでは40人に1人が緑内障による視野障害(+).

 症状が顕在化するまで気づかれないことも多く, 先進国でも診断率は50%に満たない.
Lancet 2011;377:1367-77

緑内障のリスク因子 NEJM 2009;360:1113-24
頻度は人種差が大きく黒人 4.2%, 白人 2.1%, アジア人 1.4%
他のRisk Factors
Factor
緑内障RR
Factor
緑内障RR
年齢(+10歳毎)

dBP

 黒人
1.6
 >=50mmHg
1.0
 白人
2.1
 40-49mmHg
1.7
 アジア人
1.6
 30-39mmHg
2.1
眼内圧

 <30mmHg
6.2
 <15mmHg
1.0
第一親等の家族歴
2.9
 16-18mmHg
2.0
近視
1.6-3.3
 19-21mmHg
2.8
中心角膜の菲薄化
(40mcm
低下毎)
1.7
 22-29mmHg
12.8

 30-34mmHg
39.0



緑内障は大きくOpen-angle glaucoma, Closed-angle glaucomaの2 type
 さらにアジアでは眼圧が正常なOpen-angle glaucomaが多く, その場合は正常眼圧緑内障と呼ばれる.
 アメリカではOpen-angleが80%を占める.
 眼科救急で有名な緑内障発作はClosed-angle glaucoma. 急速な増悪を来たし, 失明リスクも高い

開放隅角緑内障 Primary open-angle glaucoma
虹彩角膜角に閉塞ないが, 房水の排泄が低下している病態
 3-40yrで発症するJuvenile-onset, >40yrで発症するAdult-onset
 MYOC geneの異常も指摘されており, Juvenile-onsetの>10%, Adult-onsetの4%がMYOC gene異常あり
 従って家族歴は重要であり, 第一親等で開放隅角緑内障(+)ならば, リスクは10倍となる.
 リスクがある場合は, 定期的な眼底診察を勧めるべき. NEJM 2009;360:1113-24
高齢者程多く, >60歳での発症が典型的.
 自然寛解することは先ず無い.
進行は数ヶ月〜数年単位と緩徐.
 また, 神経障害の部位はRetinal ganglion cellに限られる.
 暗点の拡大. 辺縁の視野欠損が典型的. 通常不可逆性で両側に生じている. (健側眼は通常患側の50%の障害を認めている)
 両側の失明を来すのは稀だが, 失明原因としては白内障に次いで2番目に多い原因.
Lancet 2011; 377: 1367–77

開放型緑内障の初期症状は視野障害 or 偶発的発見 NEJM 2009;360:1113-24
 眼内圧は上昇, 正常どちらもあり得る為, 診断的根拠にはならない
 眼底検査, 検診での発見も多い. (視神経乳頭のcapping)
A and B; Neuroretinal rim(R)の一部欠損が認められている(→部)
D and E; Capの拡大, Rimの菲薄化が進んでいる眼底
LC; Lamina Cribrosa(コラーゲン, グリア組織の密集部位)
 通常は見えないが, 周辺神経組織の委縮により確認できるようになる

Cappingのイメージ NEJM 2009;360:1113-24 
乳頭中心の蒼白に見える部位がCupping.
正常ではcupは全体の<1/2. 緑内障では>1/2となる.  
JAMA. 2013;309(19):2035-2042

開放隅角緑内障の診断に寄与する病歴, 所見を評価したMeta-analysis. 
JAMA. 2013;309(19):2035-2042
リスク
OR

OR
近視; diopter >8
5.0[2.2-11]
年齢 ≥80y
2.9[1.9-4.3]
  diopter >6
5.7[3.1-11]
年齢 70-79y
2.5[1.9-3.1]
  diopter ≥3
2.1[1.3-3.4]
年齢 60-69y
1.5[1.3-1.7]
  diopter ≥1
1.7[1.1-2.4]
年齢 50-59y
0.64[0.56-0.73]
  diopter ≥0.5
1.6[1.1-2.4]
年齢 40-49y
0.31[0.24-0.41]
家族歴
3.2[2.0-5.2]
年齢 30-39y
0.40[0.21-0.78]
黒人
2.9[1.4-5.9]
末梢血管疾患
2.1[0.83-5.3]
男性
1.2[0.97-1.4]
DM
1.8[1.4-2.4]
喫煙
1.1[0.85-1.5]
HT
1.8[1.4-2.3]


片頭痛
0.99[0.66-1.5]

CDR値(Cup-to-Disc ratio)とLR

 Cuppingの直径と視神経乳頭の直径の比
CDR ≥0.5~0.6より陽性尤度比が著明に増加.
CDR ≥0.7ではほぼ確定的といえる.

CDRの左右差も診断に有用な情報.
眼内圧は≥21mmHgで有意. ただし, 正常圧水頭症の多いアジアでは除外には向かないので注意.

開放隅角緑内障の治療 Lancet 2011; 377: 1367–77
眼圧低下療法
 眼圧が21mmHgでリスク(年齢, 角膜厚)がある患者では適応
 視神経障害(+)例では全例推奨される.(眼圧正常でも)
 方法は, 点眼薬, レーザー治療, 手術治療がある. 効果は同等で, 副作用の頻度のみ問題となる.
 最も副作用が少ないのはレーザー治療, 手術では稀ながら失明のリスクあり, 推奨されない.
 点眼薬はProstaglandin analogue, β antagonistを用いる.
 眼圧を20-40%低下させることで, 視野障害のリスクは50%低下

眼内圧を低下させる薬剤治療 JAMA. 2014;311(18):1901-1911.
Prostaglandin analogues: Latanoprost(キサラタン点眼薬®), Travoprost(トラバタンズ点眼薬®), Tafluprost(タプロス点眼®), Unoprostone(レスキュラ点眼®), Bimatoprost(ルミガン点眼®)

β-Adrenergic blockers: Timolol(チモプトール点眼, リズモン点眼®), Levobunolol(ミロル点眼®), Carteolol(ミケラン® 点眼無し), Metipranolol, Betaxolol(ケルロング® 点眼無し)

α-Adrenergic blockers: Brimonidine(アイファガン点眼®), Apraclonidine(アイオピジン点眼®)
Carbonic anhydrase inhibitors: Dorzolamide(トルソプト点眼®), Brinozolamide(エイゾプト点眼®), Acetazolamide(ダイアモックス®経口)

Cholinergic agonists: Pilocarpine(サンピロ点眼®), Carbachol(グラウマリン点眼®)

閉塞隅角緑内障 Primary closed-angle glaucoma
JAMA. 2014;311(18):1901-1911.
虹彩の偏倚により隅角が閉塞し, 眼内圧が上昇
 最低270度の範囲で閉塞していることが定義
 open-angleと同様に, 視野, 視力障害を来すまで無症候性であり, 気づかれにくい
 <1/3の頻度でAcute primary angle closureを来たし, 30mmHg以上の眼内圧となり, 急性の眼痛, 結膜充血, 角膜浮腫, 瞳孔散大を来す.

Primary closed-angle glaucomaは虹彩, レンズ,レンズ後部の構造異常で生じる.
 Pupillary blockが最も多い構造異常.
 前房への房水移動が阻害され, 虹彩を前方へ圧迫する.
 他には平坦虹彩がアジア人では多い原因.

OAGのリスク因子
 女性, 高齢, アジア人で多い.
 眼球が小さいと前房も狭小化するため, リスクとなり得る.
 遺伝も関連しており, 第一親等にOAGがいるとリスクとなる
 いくつかの遺伝子異常も判明している 
(rs11024102 at PLEKHA7, rs3753841 at COL11A1(HGNC:2186), rs1015213 at PCMTD1(HGNC:30483)-ST18(HGNC:18695))

OAGのイメージ


急性閉塞隅角緑内障 Clin Geriatr Med 23 (2007) 291–305
Acute-angle-closure glaucoma(AACG)は眼科的Emergency
 房水は後眼房で産生され, 虹彩と水晶体の間を通過し, 前眼房に移動. シュレム管より吸収される.
 虹彩が前方に偏倚し, シュレム管を閉塞することで, 急激に眼圧が上昇し, 閉塞隅角緑内障が発症.
 高齢者では水晶体の弾性が低下, 肥厚し, 白内障の頻度も多い. >> 虹彩と癒着しやすくなっており, AACGのRiskとなる.
眼球の大きさもリスクとなり得る. Lancet 2011; 377: 1367–77
 アジア, インドでは閉塞隅角緑内障が多く, 眼球が小さい程リスクが高いとの指摘も.
頻度は加齢に応じて上昇. 高齢女性に多い. 高齢者の片側性の頭痛では必ずAACGの所見をCheck
 緑内障全体の1/3が閉塞隅角緑内障 
閉塞隅角緑内障では失明リスクが開放隅角の2倍. Lancet 2011; 377: 1367–77
 緑内障で失明した患者の約半分が閉塞隅角緑内障.

AACGの経過
急性の片側性の頭痛で発症
 複視, 悪心, 嘔吐と伴うことが多いが, 実際急性発作を来すのは25%のみ. 75%は開放隅角緑内障と同様の経過をとる.
 身体所見では, 中心に固定された瞳孔と混濁した角膜が特徴的.
 眼瞼結膜の充血は 角膜縁に特に強く認められる.
 角膜の触診では “Rock-hard”と表現されるほど固い眼球を触れる.
眼圧は60-80mmHgまで上昇.(正常値は20mmHg)
急性ACGの誤診としては,
 結膜炎が最も多く, 他にはRed eye?, 虹彩炎, 角膜剥離, SAH, 嘔吐症, 顔面痛, 原因不明の頭痛といった判断がされやすい.
 片頭痛と診断される例は殆ど無し. Age and Ageing 1996:25:421-423

緑内障ガイドライン2版より, AACGの薬物治療
 AACGでは虹彩切除術による瞳孔ブロック解除が根本的治療
眼科コンサルト~引渡しまでにできること
高浸透圧薬: 眼圧降下に最も有効
 マンニトール; 20%溶液 1-3g/kgを30-45分
  60-90分で眼圧降下, 4-6hr持続
  脱水, 腎障害, 心不全の増悪には注意
 グリセオール; 300-500ml 45-90分
  30-135分で眼圧降下, 5hr持続
  1Lあたり637kcalとなるのでDMには注意
高浸透圧薬 内服薬
 イソソルビド 70%溶液 70-140ml/day bid, tid (イソバイド® メニレット®)
 グリセリン 50% 3ml/kg/day qd, bid
縮瞳薬
 1%, 2% ピロカルピン(サンピロ® ピロリナ®) 2-3回/day
房水産生抑制
 アセタゾラミド 10mg/kg DIV, PO (ダイヤモックス®)
 βblocker 点眼, αβ遮断薬, 炭酸脱水素酵素阻害点眼
房水流出促進
 Prostaglandin関連点眼, α1遮断薬, αβ遮断薬

特殊な緑内障: 急性閉塞隅角緑内障 NEUROLOGY 2005;65:757–758
間欠的(数分〜数時間)な眼圧の上昇を来す.
 発作時はAACGと同様に複視, 頭痛, 結膜充血を来し, 放置しておくと視神経障害が進行し, 失明に至る.
“間欠的な頭痛” から, しばしば片頭痛と誤診されることも. 特に複視を前兆と勘違いする例も多い.
発作時には眼圧の軽度〜中等度上昇を認めるが, 無症状時には眼圧は正常であることが多い.

頭痛を主訴でペンシルバニア大学眼科を受診した患者中, 亜急性のACGは11/2227 (0.5%), 平均年齢は54 ± 6.5歳, 頭痛の持続期間は平均2.6 ± 2.7年間と, 診断までの期間は長い.
 (眼痛, 複視の訴えある患者は除外されている) Headache: The Journal of Head and Face Pain 2005;45:172-6

亜急性ACG; 頭痛の特徴 NEUROLOGY 2005;65:757–758
頭痛の特徴

持続期間
Min-Hr, 長くても4hr以内
頻度
少なくとも2/, 大半が毎日頭痛あり
頭痛の程度
軽度から中等度の眼球後部の痛み〜片側の頭痛
視覚異常
4/11で視覚異常を自覚(光の周辺にHaloを認める)
11名全員が亜急性ACG診断前に頭痛精査を受けていたが, 亜急性ACGの診断はつかず.
 隅角測定まで行ったのは11名中1名のみ!(しかもその1名では検査時に隅角閉塞は認められず.)
 
7/11で片頭痛と診断されていた.
11名の診察結果より
診察

眼圧上昇
4/11
遠視
5/11
隅角がNarrow
11/11
前虹彩癒着
6/11
視神経乳頭Cupping
6/11
視野欠損
3/11
 視神経乳頭のCuppingを認めた6名の平均罹患期間は3.6±3.1年.
 Cupping(-)群では1.5±1.6年と, 長期罹患者で神経変性は生じる.
 視野欠損を認めた3名の平均罹患期間は4.7±4.0年. 
Neurol Sci (2010) 31 (Suppl 1):S103–S105

主訴が頭痛で, 亜急性ACGと診断された9名の解析 Headache: The Journal of Head and Face Pain 2005;45:172-6
特徴

平均年齢
60[48-73]
頭痛自覚〜診断
2年間[3-5]
頭痛部位
前頭部 5, 側頭部 3, びまん性 1例
頭痛性状
拍動性の頭痛は無し
頭痛頻度
毎日〜1-2ヶ月毎まで様々
6
例が毎週1回以上自覚
視覚症状
頭痛時に霧視(+)3*
遠視は9/9で認める.
 視覚症状を訴えるのは3/9のみ.
 しかもその3例が数秒のみの複視とはっきりしたものではない.
 視神経乳頭陥凹は2例のみ. Borderlineは4例.
 9名の初期診断は, 非特異的頭痛(6), 片頭痛(2), 歯牙由来(1)

典型的な片頭痛と亜急性ACGによる頭痛の比較
頭痛の特徴
片頭痛
亜急性ACG
頭痛
中等度〜重度,
片側性で, 発作時, 発作毎に
左右が変わることもある
中等度の頭痛.
片側性が多い
眼痛
あっても良い
多い
霧視
頭痛に先立って生じる(前兆)
頭痛時に生じる
他の視覚症状
ジグザグ, フラッシュ,
視野欠損
光の周囲にHaloが生じる
発症年齢
通常40歳未満
40歳以降で発症
遠視合併頻度
一般人口と同じ
多い
嘔気, 嘔吐
一般的
あっても良い
発作の持続時間
数時間〜数日
数時間
症状の改善因子
安静, 睡眠, 片頭痛薬の使用
安静, 睡眠, 鎮痛剤
眼圧低下作用薬
根治的治療
なし
虹彩切除
家族歴
多い
あっても良い
予後
頭痛によるQOL障害
視覚障害のリスク
高齢発症(>50yr)で, 持続時間が短い(<4HR)片頭痛ならば, 亜急性閉塞隅角緑内障を考慮すべし
非典型的な片頭痛(高齢発症, 常に左右どちらか一方のみの頭痛, 家族歴の無い片頭痛)ならば緑内障を疑う必要がある.
遠視は閉塞隅角緑内障の強いRiskであり, 病歴でcheckを.
 老眼は40台後半〜50台前半より生じ始める.
 40台前半での遠視(+)ならば要注意. ACG診断の助けとなるかも.
 眼鏡をかけた患者ならば, 眼鏡をCheckすれば遠視 or 近視は分かる.
 遠視ならば凸レンズであり, レンズの後方にあるものは大きく,近視ならば凹レンズであり, レンズの後方にあるものは小さくなる. (ケント デリカットのあれ) 
Postgraduate medicine 2006;119:70-3

緑内障による頭痛の特徴 Invest Ophthalmol Vis Sci 26:1105-1108, 1985
Low-tension glaucoma(LTG)* 54名, 一般健常人493名, 開放隅角緑内障 182名, Ocular hypertension(OHT)† 126名, その他¶187名のCase-control study.
 *LTG; 緑内障の眼底所見(+)だが, 眼圧<22mmHgの患者群.
 †OHT; 眼圧>22mmHgだが, 眼底所見は正常.
 ¶その他; 他の眼科疾患で通院中の患者
Group
Classic migraine
片側性の頭痛
+
前兆, 嘔気
Probable migraine
頭痛
+ ≥2
の片頭痛の特徴
Possible migraine
頭痛
+ ≥1
の片頭痛の特徴
頭痛全体
LTG(54)
7%
30%
67%
87%
Normal(493)
3%
19%
49%
80%
POAG(182)
5%
18%
46%
68%
OHT(126)
5%
24%
50%
70%
Other(187)
4%
22%
52%
81%
LTG群が最も片頭痛様の頭痛typeをとる頻度が高い.

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