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2014年9月14日日曜日

顔面神経麻痺, Bell's Palsy

顔面神経麻痺, Bell's Palsy
NEJM 2004;351:1323-31

原因不明の片側性, 末梢性顔面神経麻痺
 片側性顔面神経麻痺の原因の60-75%を占める
 発症率は20-30/100 000/yr, 生涯罹患率は1/60と高頻度.
 <10yrでは稀, 10-29yrで徐々に増加し, 30-69でプラトーとなる. >70yrでさらに頻度UP
 男女差、左右優位差無し
 治療なしでも, 71%が6mo以内に完全に回復するが, それ以外では後遺症も認める(麻痺, 拘縮, 不随意運動の残存)
 後遺症残存のRisk Factorとしては, 高齢者, HTN, DM, 味覚の障害, 耳以外の疼痛, 完全顔面N麻痺Ramsay Hunt Syn, 筋電図検査結果
 通常再発しないため, 再発あれば他の疾患も考慮する必要あり (脳実質内病変, 重症筋無力症など)

急性の顔面神経麻痺の原因 Eur Radiol (2005) 15: 511533

原因頻度 BMJ 2004;329:553-7
原因
頻度
Bell’s Palsy
72%
HSV-1
84%
VZV
Zoster sine herpete
Ramsay Hunt Syndrome


16%
7%

外傷性
4%
腫瘍性
4%
中耳炎, 真珠腫
3%
先天性
6%
その他
4%
耳の中は必ず確認してRamsay Hunt Syndromeと真珠腫はチェックしておく必要がある

Bell麻痺の症状の頻度 BMJ 2004;329:553-7
症状
頻度
舌咽N, 三叉N感覚の変化
80%
顔面, 耳介後方の疼痛
60%
味覚障害
57%
聴覚過敏
30%
C2領域の感覚低下
20%
迷走N支配筋 筋力低下
20%
涙の減少
17%
三叉N支配筋 筋力低下
3%
顔面神経麻痺以外に三叉神経の症状(顔面の感覚障害, 痺れ)も多く合併する

顔面神経麻痺: 末梢 vs 中枢(顔面神経核よりも上位)の鑑別 NEJM 2004;351:1323-31
A: 中枢性顔面神経麻痺
B: 末梢性顔面神経麻痺
C: 末梢性
 
(Hemifacial Spasmで口が閉じられることもあり)

下部顔面筋は顔面神経核上では片側支配(対側)
上部顔面筋は核上で両側支配
味覚, 唾液腺, 涙腺は両側支配
  >末梢性 ⇒ 完全な片側顔面麻痺
  >中枢性 ⇒ Eye Drop, 額の皺は正常. 味覚, 唾液, 涙液分泌も正常
  
>橋の傷害 ⇒ 中枢性だが, Presentationは末梢型

顔面神経の走行, 支配領域の図


筋電図検査は発症4-10日目で施行
 発症1-3日目では所見を認めないことが多い
 予後を推定する因子となり, Excitabilityが保たれていれば90%が完全回復
 Excitabilityが消失していた場合, 20%しか完全回復しない
 又, 発症3wkで90%の変性(-) ⇒ 80-100%が機能良好を維持可能.
 >90%の変性(+) ⇒ 50%でしか機能良好維持できない

Bell麻痺の治療
抗ウイルス薬は基本的には推奨されない。ステロイド投与が基本

18-75yrの急性顔面神経麻痺患者839名,発症72hr以内の群を以下の4群にRandomized, 12moフォロー(DB, ITT) Lancet Neurol 2008;7:993-1000
1
Placebo
Placebo
2
プレドニゾロン 60mg/d 5D, その後, 10mg/dずつ減量
Placebo
3
Placebo
Valaciclovir(バルトレックス®) 1000mg tid 7D
4
プレドニゾロン 60mg/d 5D, その後, 10mg/dずつ減量
Valaciclovir(バルトレックス®) 1000mg tid 7D
Outcome; Complete Recovery
 PSL vs no PSLの比較ではアウトカムに差がでたが, 抗ウイルス薬については有意差無し.

3mo
6mo
12mo
%
Differece
%
Differece
%
Differece
Prednisolone
 vs no-prednisolone
62[58-67]
 vs 51[46-55]
12[5-18]
68[64-73]
 vs 55[50-60]
13[7-20]
72[68-76]
 vs 57[53-62]
15[8-21]
Valaciclovir vs
 no-valaciclovir
55[50-60]
 vs 58[53-63]
-3[-9~4]
61[56-66]
 vs 63[58-67]
-2[-8~5]
66[61-70]
 vs 64[59-69]
2[-5~8]
Prednisolone
 vs Valaciclovir
64[58-71]
 vs 50[43-57]
14[5-24]
68[62-75]
 vs 54[47-61]
15[5-24]
71[64-77]
 vs 58[51-64]
13[4-22]
副作用の出現に関しては4群で有意差認めず

>=16yrの急性顔面神経麻痺患者551名,発症72hr以内
(RCT, DB, 追跡90%, 9moフォロー)(NEJM 2007;357:1598-607)
Prednisolone(+/-), Acyclovir(+/-)の組み合わせ, 4群に振り分け比較.
Prednisolone 25mg bid,  Acyclovir 400mg 5回/d
Outcome
Prednisolone
OR
Acyclovir
OR
+
+
神経麻痺改善*
3mo
83.0%
63.6%
2.44[1.55-3.84]
71.2%
75.7%
0.86[0.55-1.34]

9mo
94.4%
81.6%
3.32[1.72-6.44]
85.4%
90.8%
0.61[0.33-1.11]
自覚症状
3mo
0.91(0.17)
0.91(0.13)
-0.01(0.01)
0.90(0.16)
0.92(0.14)
-0.01(0.01)

9mo
0.84(0.26)
0.88(0.16)
-0.06(0.03)
0.86(0.21)
0.88(0.19)
-0.02(0.03)
疼痛
3mo
1.51(6.41)
2.04(8.14)
-0.12(0.67)
1.83(7.00)
1.72(7.62)
0.13(0.66)

9mo
1.36(5.29)
1.83(6.37)
-0.08(1.02)
1.61(5.87)
1.72(6.19)
0.05(0.96)
機能
3mo
42.4(32.3)
43.2(33.4)
1.72(2.88)
44.2(35.0)
41.4(30.4)
3.08(2.85)

9mo
40.0(36.1)
49.9(35.5)
-2.40(5.71)
49.4(35.2)
43.2(36.6)
8.53(5.36)
黄色のマス; 有意差あり
* House-Brackmann Scale; Grade 1
† Health Utilities Index Mark 3; -0.36~1.00で自己評価, 1.00が正常
‡ Brief Pain Invenotory; 0-110で評価, 110が最もSevere
¶ Derriford Appearance Scale 59; 8-262で評価. 高値 = 機能異常が高度

ステロイドのみ神経麻痺, 自覚症状の改善効果を認めた.

ステロイド, 抗ウイルス薬のMeta-analysis
18 RCTsのMeta-analysis,(N=2786) (JAMA 2009;302:985-993)
Steroidの効果は確定的であるが, 抗ウイルス薬もSteroidに追加することで効果を認める可能性がある
Outcome;  治療開始6moでの不十分な改善
RR
NNT
Evidence Level
Corticosteroid単剤 vs Placebo
0.69[0.55-0.87]
11[8-25]
High
抗ウイルス薬単剤 vs Placebo
1.14[0.80-1.62]

Moderate
Corticosteroid + 抗ウイルス薬 vs 抗ウイルス薬
0.48[0.29-0.79]
6[4-14]
Moderate
Corticosteroid + 抗ウイルス薬 vs Corticosteroid
0.75[0.56-1.00]
20[11-∞]
Moderate
 副作用はSteroid投与, 抗ウイルス薬投与, Placeboで有意差認めないが, Steroid投与群では不随意運動, 自律神経障害が有意に少なくなる.
 Subgroup analysisでは, Steroid投与量間での比較のみ有意差を認め, Higher Dose(>=450mg; Prednisone換算)でより改善効果が良好
 他, 初期症状の強さ, 治療開始までの期間では有意差無し
 治療開始後6wk-4moでの短期的な評価(Outcome;不十分な改善)でも, Steroid RR 0.70[0.55-0.89], 抗ウイルス薬 RR 0.97[0.84-1.12].

Canadian Society of OtolaryngologyからのBell麻痺に対するガイドライン 2014年より
CMAJ 2014;186:917-922
治療について:
Bell麻痺においてステロイドは全ての重症度で推奨される
抗ウイルス薬は重症例のみで推奨.
 軽症, 中等症ではステロイドのみでよいとしている.
他には
 運動療法は慢性期で推奨
 電気刺激は推奨されない
 外科的除圧術もルーチンでは行わない
 閉眼が困難な場合はEye-protectionを行う
 改善しない例や増悪する例では悪性腫瘍の可能性を考慮し精査が推奨

診療のアルゴリズム

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