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2021年6月8日火曜日

網赤血球の容積; mean reticulocyte volume (MRV)はどのくらい?

中年の男性.

Hb 7.0 g/dL, MCV 75flと小球性貧血で受診.

フェリチンは300程度あり, 網赤血球が9%, 22万/µLと顕著に上昇が認めたため,

おそらくは出血性貧血であろうと判断された.


でも, この網赤血球数にして、このMCVはやはりおかしくないだろうか?

網赤血球の増加は基本的に大球性となる事は有名だが, 

では網赤血球の容積はいくつなのだろうか?


ということで調べる:

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(Eur J Haematol. 2016 Feb;96(2):170-4.)

球状赤血球症, G6PD欠損, サラセミア, AIHA, 健常人において
網赤血球Vol: MRVを評価した報告.

・MRVは健常人では112 fl. 

 サラセミアはほぼ同等の108 fl


 球状赤血球症は87と低く, 

 G6PD欠損やAIHAでは130と高い

・HS以外は, MRV-MCVは健常人では+20, 他は+30 fl 程度.


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ということで, 疾患別にそれなりに差がある様子.

HSでは網赤血球も小さく, MCVとMRVの差がほぼない. これはHSの診断に有用との報告も見つけられた.

健常人では110 fl程度と押さえておくと良いだろう.

サラセミアもほぼかわらず, G6PD欠損やAIHAは130と大きい.

件の症例, これを計算してみると, 網赤血球を抜きにしたMCVは71fl程度とやはりかなり小球性.

もしかすると, 元々背景にサラセミアなどヘモグロビン異常症がある患者での急性出血ではないのだろうか, というアセスメントとなった.

2021年6月6日日曜日

不思議の国のアリス症候群

 Alice in Wonderland Syndrome

自己認識と外界との間にアンバランスが生じ,
 自分の身体のサイズ(全体, 部分的)を誤って認識したり,
 外界の空間を誤って認識したりする現象.

・頭が大きい, 手が大きい, 体全体が小さい/大きいなど,
 不思議の国のアリスのような世界観となるため,
 Alice in Wonderland Syndrome(AIWS)と呼称される.

・体性感覚の知覚症状のみのType A(9%程度)


 視覚的な錯覚のみのType B(75%程度)

 
両者が共存するType C(16%程度)に分類される

・側頭頭頂-後頭葉の交点(Temporoparietal-occipital carrefour)が関連している可能性が示唆されている

(Biomed Res Int. 2016;2016:8243145.)


AIWSで経験する可能性がある視覚的症状(メタモルフォーゼ)

(Neurol Clin Pract 2016;6:259–270)

・色の認識の異常: 白黒に見える, 単一色で見えるなど.

 物体の認識の異常: 
 動きが認識できない, 
 表面の皺が認識できない,  細かい部分が強調されるなど
, 輪郭が強調される, 波打つように見える
, 距離や大きさを誤認する, 平坦に見える, 長く見える
, 複眼のように物体が複数に見える
, ずれて見える・・・など様々な視覚症状がある.


・特に報告頻度が高いものは, 

 色の認識の異常,


 線や輪郭が波を打って見える


 物体が動いているように見える


 ものが実際よりも大きく/小さく見える


 ものが実際よりも遠く見える, といった症状


AIWSで経験する可能性がある身体, 非視覚的症状

(Neurol Clin Pract 2016;6:259–270)


・身体の一部が占める空間を誤って認識する(大きく/小さく)
, 身体の一部が大きく/小さく自覚する
, 身体の全体が大きく/小さく自覚する, 周辺環境/自分自身の現実感の消失
, 空気のなかを漂っているような感覚, 心理的時間の加速/減速
, 体が2つに分かれる感覚(通常, 真ん中から下部で分かれる)といった症状.

・特に報告の頻度が高いのは,

  現実感の喪失, 


 身体の一部/全体のサイズの変化


 心理的時間の加速


AIWSの原因: 成人では片頭痛やてんかん, 小児ではEBV感染症での報告が多い


169例の症例報告のReview

(Neurol Clin Pract 2016;6:259–270)

・原因は大きく8つのカテゴリーに分類される;

・感染症: 小児の原因の21.7%. 特にEBV感染症での報告が多い.


 CNS病変: 全体の7.8%
PNS病変


 発作性神経疾患: 全体の31%. 特に片頭痛が27.1%. 成人で特に多い


 精神疾患


 薬剤性


 違法薬物, 毒物


 その他



成人の片頭痛患者におけるAIWSの調査
(Cephalalgia. 2021 Apr;41(5):515-524. doi: 10.1177/0333102420968245.)
・頭痛クリニックを始めて受診した患者全例でAIWSについて調査.
・1.5年間に210例が受診し, このうち40例で1回以上のAIWSエピソードが認められた.
・このうち, 38/40が前兆を伴う片頭痛であった.
・31例が頭痛の1h以内にAIWSを認めている.
・AIWSの持続時間は40分(5分〜4時間まで)

AIWSの症状
・身体の認識サイズの異常, 視覚上のサイズ, 距離の異常が多い
 複数の症状を伴うものが90%

2021年6月3日木曜日

腎障害患者へのコルヒチン投与

コルヒチンは結晶性関節炎や家族性地中海熱など炎症性疾患の治療薬となり, さらに近年心血管イベント抑制効果が証明されており, 今後使用頻度もさらに上昇する可能性を秘めた薬剤.

このコルヒチンであるが, 使用に際してはいくつか制限がある. 

有効血中濃度が狭く, しばしば副作用や中毒を呈しやすい.


・コルヒチンは基本的には腎障害や肝機能障害がある患者で, さらにCYP3A4阻害薬やP-gp阻害薬と併用する場合は禁忌となる.

・それぞれ個別の場合は慎重投与.

・CYP3A4阻害薬: アゾール系(ボリコナゾール, イトラコナゾール, フルコナゾール), エリスロマイシン系(テリスロマイシン, クラリスロマイシン, エリスロマイシン), サキナビル, ネファゾドン, ジルチアゼム, ベラパミル, シメチジン, グレープフルーツ

・P-gp阻害薬: ベラパミル, クラリスロマイシン, エリスロマイシン, イトラコナゾール, シクロスポリン, キニジン, リトナビル, ネルフィナビル, プロパフェノンなど

・また副作用の筋症リスクが上昇する可能性があり,
スタチンとの併用では注意すべきとしている報告もある
(相乗効果の有無や機序は不明確)


コルヒチンの薬物動態 (Clinical Toxicology (2010) 48, 407–414)

・消化管で速やかに吸収され, 血中濃度ピークは0.5-3時間

・吸収後は肝臓で代謝されるため, Bioavailabilityは25-50%程度と低い

・治療量では, 蛋白結合率は10-50%, Vol of distributionは2-12L/kg


 OverdoseではVd 21L/kgとなる.

・半減期は治療量で4.4-16h, Overdoseでは11-32h
投与

 9日後にも尿中からコルヒチンが検出され, 白血球内に存在する.


 白血球内のコルヒチンの半減期は60時間.

・代謝は肝臓のCYP3A4が関連して行われ, 胆汁内に排泄.


 その多くが腸肝循環にて再吸収される.

・腎クリアランスはコルヒチンの全代謝の10%程度を占める.


・腎障害や肝障害があると, 著しくクリアランスは低下する.

・P-gp(MDR1[ABCB1]遺伝子にコードされる膜内ATPase排出ポンプ)の阻害があると, 腸管からの吸収が促進され, 肝排泄が低下するため, それも中毒のリスクとなる.

作用機序 (Clinical Toxicology (2010) 48, 407–414)

・細胞内蛋白のtubulinに結合し, tubulinのα, β型が重合して微小管を形成するのを阻害する

・これによりゴルジ体でのタンパク質の合成が阻害され, エンドサイトーシスやエキソサイトーシスが減少し, 有糸分裂が停止する.

・また, 微小管ネットワークの障害は好中球膜上の接着分子の発現を低下させ, サイトカイン産生を抑制する.


 好中球では, P-gpの発現が少ないため, リンパ球と比較してコルヒチンの濃度が3倍高く, より好中球の作用を低下せることが予測されている.

・また, 肥満細胞からのヒスタミン放出の抑制や
インスリン分泌の阻害作用なども認められている

・中毒量では, この細胞分裂の停止が過度に生じ, 多臓器障害を生じる


 特に分裂が多い骨髄や消化管, 毛胞は影響が生じやすい

・心筋細胞の微小管に結合することで, 心臓の伝導と収縮を阻害する作用もある.


腎障害(-), 軽症, 中等症, 重症腎障害, ESRDで透析あり/なし患者の各8例に対してコルヒチン 0.6mgを1回投与した際の血中濃度を評価

Cohort 1: ClCr ≥90mL/分 
Cohort 2: 軽症腎障害 eGFR 60-89mL/min/1.73m2


Cohort 3: 中等症 eGFR 30-59
 Cohort 4: 重症 eGFR 15-29


Cohort 5: ESRD, eGFR <15 透析患者では, 透析前, 中, 後で投与.

・Cmax, tmaxは腎機能障害患者でも大きくは変わらず

・半減期は, 

 健常Control群で30.6±5.43h, 

 軽症腎障害群ではほぼ同等.
 中等症ではx1.3倍,  重症例ではx1.6倍

・Total body clearance(CL/F)は


 中等症でx0.5, 重症例でx0.4と低下するが,
 ESRD群では大きく変化なし


・ESRD患者におけるコルヒチンの血中濃度が低いレベルで推移した理由は不明.


 肝代謝の変化や蛋白結合率の変化では
説明できず, 

 胆汁排泄の増加が予測されるものの確定的なことが言えないと結論

・また, この報告から, 3-4hの透析で除去されるコルヒチンは平均5.2%, 最大でも10%程度


・維持透析患者で長期的にコルヒチンを使用(0.5-1.5mg/d)した22例では
Control群を比較して明らかな問題は生じなかった報告もあり,
患者によっては使用可能な可能性もある(American Journal of Therapeutics 21, e189–e195 (2014)

・若年(18-30y)+腎機能正常群(CrCl≥80mL/min)と高齢(≥60y)+軽度腎機能低下(CrCl≥50mL/min)におけるコルヒチン1回投与後の動態を比較した報告では, 両群で薬物動態は同等.(Adv Ther (2012) 29(6):551–561.)


これら報告からは, 軽度の腎障害であれば, コルヒチンの動態は健常人と同等といえる.

また, 透析患者やESRDでは代償性に胆汁排泄が高まっているのか, 血中濃度は上昇しにくい可能性がある(が, 当然注意は必要である)

最も危ない患者は中等症〜重度の腎障害がある患者群. GFR 15-50mL/min/1.73m2程度.

この群では半減期の遅延が生じ, 蓄積しやすい可能性がある.


参考書からの, コルヒチンのRenal dose

(American Journal of Therapeutics 21, e189–e195 (2014))

・痛風の治療において,


 ClCr 35-49mL/minでは0.6mg/d,


 ClCr 10-34mL/minでは0.6mgを2-3日毎


 ClCr <10mL/minでは投与を推奨しない とする推奨もあり (N Engl J Med. 2003;349:1647–55.)

CYP3A4またはP-pg阻害薬と併用する場合は,
 特に腎障害がある場合, 
痛風急性期では投与量を33-66%に減量
慢性期の予防では50-75%に減量することが推奨される. (Clin Drug Investig (2014) 34:845–855)

・隔日投与〜数日毎の投与とする方法もよい方法

・シクロスポリンはコルヒチンの血中濃度を上昇させるが
タクロリムスは基本的には問題なし.

 ただし一部で中毒症の報告はある (Clinical Transplantation. 2018;e13405.)

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こういったことを踏まえて,

腎機能が低下した症例や高齢者でコルヒチンを使用する場合,

eGFR<50の症例では0.25mg/d(半錠)〜0.5mgを隔日投与

eGFR10-30の症例では0.25mg隔日投与 とかしています.

あまり長期間にならないように, また副作用には注意しつつ使用します.

適応となる症例は少ないですが, 偽痛風を繰り返す高齢者がこれで全く発作なく長期間過ごせることもあり, まんざら捨てたものではない治療とも思います.

2021年6月2日水曜日

非重症ANCA関連血管炎におけるRTX + 低用量ステロイド

 国内から, 非重症例AAVにおけるRTX + Low-dose Steroidの報告:

日本国内からのOpen-label 非劣性RCT.


重症の糸球体腎炎(eGFR<15mL/min/1.73m2)または肺胞出血(酸素投与>2L/min)となる症例を除くGPA, MPA患者を対象.

(JAMA. 2021;325(21):2178-2187. doi:10.1001/jama.2021.6615)

・他の除外項目: 他の自己免疫疾患の合併, HIV, HBV, HCV感染, 妊婦/授乳, 5年以内の悪性腫瘍, 1年以内のTB, モノクローナル抗体に対するアナフィラキシー, 他に免疫抑制が必要な病態, 6ヶ月以内のB細胞抑制治療

・上記患者群140例を, 

 RTX 375mg/m2/wkを4回投与に加えて,


 Low-dose steroid群: PSL 0.5mg/kg/d, 5ヶ月でOffとなるように減量


 High-dose steroid群: PSL 1.0mg/kg/d, 5ヶ月で10mg/dとなるように減量群に割り付け, 

 6ヶ月時点での寛解率を比較.

・Birmingham Vasculitis Activity Scoreが0に到達しない症例や, CRPとANCAが正常化しない症例ではLow-dose群における減量レジメを延期可能とした.

減量レジメ:

・Low-doseでは, 2wk後にはさらに半量, 1ヶ月後には7.5mg/dまで減量する

母集団データ

・MPAが7-8割, GPAが2割程度


 MPO-ANCA陽性例が8-9割


アウトカム



・6ヶ月時点での寛解率はLow-dose群で71%, High-dose群で69.2%

 
AD 1.8[-13.7~∞], 非劣性が証明.

・再燃がLow-dose群で4.3%認められる.

 
死亡リスクは有意差なし


副作用リスク


・重大な合併症はLow-dose群で21件, High dose群で41件


 治療関連は15件 vs 31件とLow-dose群の方が少ない傾向

・死亡は有意差なし

・感染症が15件 vs 45件とHigh-dose群で多い


 糖尿病も9件 vs 19件


 不眠 10件 vs 23件

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早期減量による長期的な再燃リスクは気になる. 長期フォロー結果を待ちたい

非重症AAVでRTXやCYで寛解導入をしっかりするならば, 開始量は0.5mg/kgというのはありかもしれない.

2021年6月1日火曜日

骨髄穿刺: 穿刺と生検結果の一致率は?

骨髄穿刺と骨髄生検結果の診断一致率はどの程度のものか?


骨髄穿刺, 生検双方を施行した27例を評価した報告

(Journal of Evolution of Medical and Dental Sciences 2012; 1(6):987-93)

・70%は穿刺のみで診断が可能であったが, 30%は生検を必要とした.
 

 この内, Day tapによるものが18%含まれる.

・穿刺と生検の結果の差異:
 低形成, 正形成, 過形成の一致性もかなりずれがある


骨髄所見を評価した443例において,
骨髄穿刺と生検所見を比較した報告

(J Postgrad Med Inst 2014; 28(2):217-21.)

・73.8%が骨髄穿刺所見と生検所見で診断が一致

診断別にみた, 穿刺の診断への寄与.

・肉芽腫性疾患や骨髄線維症は穿刺では診断はできない.


 多発性骨髄腫やリンパ腫も穿刺のみでは不十分.

・“正常骨髄” も穿刺のみでは7割しか言えない.

穿刺所見と最終診断が異なった症例

・Dry tapは36例 (8.1%) で認められ,

 
ITP, CML, AML, ALL, MM, Lymphoma, 骨髄線維症が含まれる.


・正常が4例.


汎血球減少で骨髄穿刺/生検を行なった58例の解析

(J Hematol 2013;2(1):8-13)

・最終診断: Table 2

・44/58(75.8%)が骨髄穿刺所見と生検結果が一致 (Table 4)

・11例が骨髄生検で診断された.


 血液腫瘍系は穿刺所見と生検所見で一致したのはAML, MM, WMのみ.


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おおまかに, 穿刺結果と生検結果の一致率は7割程度と考える.

特にDry tapとなる症例(あたりまえだが・・・), 血液腫瘍, 肉芽腫性疾患, 骨髄線維症は穿刺のみでは診断/除外には不十分.

骨髄穿刺: Dry tapの頻度と原因は?

骨髄穿刺をするが, 骨髄液が引けてこない現象をDry tapと呼ぶ.

主に骨髄の線維化や, 腫瘍細胞や幼弱細胞が著明に増加することで生じる現象である.

どの程度の頻度, そしてどのような原因疾患があるのだろうか?


Virginia Univ.において, 1983-89年に施行された,
骨髄穿刺+生検症例2235例を解析.

(American Journal of Hematology 1990;35:247-250)

・この内Dry tapは87例(3.9%)で認められた.

・Dry tap症例における生検結果は以下の通り:

疾患

No(%)

白血病全体

36 (41.3%)

リンパ腫

3 (3.4%), HL 1, NHL 2

多発性骨髄腫

4 (4.6%)

MDS

6 (6.9%)

特発性骨髄線維症

12 (13.8%)

転移性腫瘍

15 (17.2%)

薬剤性

MTX 1例, クロラムフェニコール 1例

Gaucher病

1例

後天性免疫不全症候群

1例

Aplasia

1例

正常

6 (6.9%)

・白血病は, CML 13, CLL 2,
 
Acute nonlymphocytic leukemia 7例

 Acute lymphocytic leukemia 5例
 
Hairy cell leukemia 9例が含まれる.

Mianwali hosp.(パキスタン)において,
 2009-2012に行われた骨髄穿刺, 生検症例をReview
(J Ayub Med Coll Abbottabad. Jan-Mar 2015;27(1):120-3.)
・Day tapは9.5%であり,
 特に男性で多い(11.9%)
・年齢別では高齢ほどDry tapは多い

・生検による診断は, NHL, ALL, 
転移性腫瘍が多い疾患.
・正常は全体で4例(7.7%)
・小児ではALLが多く,
 
15-59歳ではNHL, 肉芽腫や骨髄増殖性疾患

 高齢者ではNHL, 転移性腫瘍, MDSが多い


3173例の骨髄穿刺において, Dry tapは138例(4.3%)
(Appl Pathol. 1984;2(5):264-71. アブストラクト)
・疾患別のDry tapであった割合は,
 急性白血病で16% (35/218), 
 骨髄増殖性疾患で9.8% (44/445), 

 悪性リンパ腫で8.8% (29/328), 
 骨髄腫で4.8% (10/208)
転移性腫瘍で13.5% (10/74)
・Dry tapの場合, 
 病理像は線維性変化かHypercellularity(主に幼弱血球)が認められ
 骨髄病理像が正常であった症例は認められなかった.

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まとめると, 骨髄穿刺におけるDry tapはおおよそ4~10%で認められ,
それら症例で生検を行うと, 血液腫瘍(白血病, 悪性リンパ腫, 骨髄腫), 転移性腫瘍, 骨髄増殖性疾患, 肉芽腫性疾患, MDSが認められることが多い.
正常骨髄でDry tapとなる例は稀ながら存在する(手技の問題?)

2021年5月31日月曜日

アルコールによる骨髄障害

アルコール依存は, 汎血球減少や大球性貧血の原因となることは知られているが,

どのような骨髄像となるのか?


慢性アルコール依存で, 骨髄穿刺をおこなった患者118例の
骨髄所見を評価した報告.

(Acta Haematol 1995:94:74-77)

・骨髄穿刺の大半は治療反応性が不良の大球性貧血の精査として施行

・骨髄所見と頻度

所見

頻度

所見

頻度

形質細胞増加

94%

鉄貯蔵の増加

65%

左方移動を伴う赤芽球過形成

78%

泡沫状のMファージ

48%

赤芽球の鉄顆粒

73%

顆粒球系過形成

29%

巨核球数正常

71%

リンパ球増多

19%

赤血球のβグルクロニダーゼ陽性封入体

68%

形質細胞の鉄顆粒

18%

巨赤芽球

67%

環状鉄芽球

14%


診断がついていない, 末梢血の異常により骨髄検査を施行された144例を評価した報告.
(Alcohol Clin Exp Res. 2004 Apr;28(4):619-24.)
・この内57例で問題飲酒ありと判断(平均Et-OH ≥60g/日の摂取), 
 また, 14例ではDSM-IVのアルコール依存を満たした.

問題飲酒+群と(-)群の骨髄所見の頻度:
 

・前正赤芽球の空包変性 24% vs 2%
 
・環状赤芽球は4%で認められる.
 
・円状(not 楕円)の大型RBC, 口唇状RBC(41% vs 12%), Knizocyte(中心で区画がああるようなRBC, 33% vs 4%)が問題飲酒群で多いRBC形態異常
 
・巨核球辺縁の空包変性は20%で認められ, いずれも最近まで飲酒量が多かった患者群であった.


・アルコール摂取により赤芽球や骨髄球, 巨核球に空包変性が生じる報告もおおく, これら空包はアルコール摂取中止後3-7日程度で消失する報告がある(Semin Hematol. 1980 Apr;17(2):100-2.)

・鉄芽球も7-10日程度で消失する報告あり(Am J Med. 1971 Feb;50(2):218-32.)


アルコール依存で離脱プログラムを行う23例において, 
断酒前後の骨髄所見, さらにDisulfiram使用者と非使用者における骨髄所見の変化を評価.
(Blut. 1989 Sep;59(3):231-6.)
・断酒後 3-4wkで骨髄穿刺を施行した.

骨髄検査
・赤芽球はBaselineでは増加しており
断酒後は低下する
 
 Baselineでは42-136(平均86) : 100
 (正常値は18-33 : 100)
 
 断酒後はDisulfiram+ 40-81(平均61), 
 
 Disulfiram- 43-96(平均60)と低下

・鉄芽球も低下する.

 Baseline 16-136(平均75) : 100

 断酒後はそれぞれ46, 17

・環状鉄芽球
 
 Baselineでは57:100,
 
 断酒後はそれぞれ26:100, 1:100


・空包赤芽球は
 
 Baselineでは空包(-)が4.3%のみが,
 
 断酒後は空包の割合は著名に低下.
 
 特にDisulfiram-群では
空包赤芽球はほぼ消失する
 
 アルデヒドが関連?

・多核赤芽球
 
 Baselineでは56.5%で多核赤芽球を認めるが,
 
 断酒後は15.4%まで減少する.

・血小板産生
 
 Baselineでは巨核球数正常は13%のみ(0-3/100顆粒球)
  
  残りの半数が軽度上昇(4-6/100顆粒球)
  
  さらに半数は高度上昇(7~/100顆粒球)
 
 断酒後は正常化したのが
  
  Disulfiram+ 群で53.8%
  
  Disulfiram- 群では9/10が正常化.

・形質細胞の鉄沈着
 
 Baselineでは全患者で形質細胞に鉄沈着が認められる.
 
 断酒後は鉄沈着は減少する.
 
 特にDisulfiram-群ではその傾向が強い


アルコールによる骨髄障害の特徴のまとめ
 鉄芽球, 環状鉄芽球を伴う赤血球系の無効造血

 前赤芽球の空包変性

 多核の赤芽球

 巨核球の過形成と血小板産生の低下

 形質細胞の鉄沈着

 断酒後3-4wkで上記所見は改善. 
 また, Disulfiramがない方が改善が良好