(CHEST 2021; 160(5):1789-1798)
Swimming Induced Pulmonary Edema. 水泳による肺水腫
・開放水域(主に冷水内)での水泳や潜水をきっかけとして, 肺水腫を生じることがある
・急性の呼吸苦, 咳嗽を認める. さらに稀ではあるが, 著明な喀痰の増量や血痰を伴う例もある
・水泳の中断で症状は改善するが, ダイビング中に生じて事故につながる例もある.
・SIPEは典型的には基礎疾患のない健常人で生じる
SIPEの機序や病態生理, リスク因子はまだ完全に解明されてはいない.
・主な機序としては: 冷水内での運動により, 末梢血管が収縮し, 中枢の血液プールが増加する. その結果肺動脈圧の上昇, 毛細血管のダメージが生じ, 肺水腫が生じる
SIPEの頻度
スウェーデンの大規模Open-water swimming eventである Vansbrosimningenにおいて, SIPEの頻度を前向きに調査した報告
・このイベントでは, 15-20度の川で, 1000m, 1500m, 3000mの水泳を行う.
参加者は>10歳の男女. 毎年11000人が参加する.
・2016-2019年に開催されたこのイベントにおいて, 移動式医療ユニット(MMU)に咳嗽や呼吸苦で受診した患者を評価し, SIPEの頻度を調査.
・2016年はPilot studyとして, 本格的な調査は2017-2019年に行われた.
症状, 経過, 身体所見よりSIPEを評価.
2018-2019年では肺エコーも施行し肺水腫を評価した.
アウトカム
・18歳以上の参加者の合計は45913名. 男性47%と男女はほぼ同等
水温の平均は17.3±1.5度, 気温の平均は18.3±6.8度
・MMUに受診した成人は405名. 322(80%)が呼吸器症状
・SIPEと判断されたのは, 2016-2019年を通して211例. 頻度は0.44%[0.39-0.51]
2016年は0.34%, 2017年は0.47%, 2018年は0.41%, 2019年は0.57%と年間で大きな差はない
・SIPEの90%が女性(190例). 参加者に男女差はなく, 女性はリスクが高い.
女性参加者では0.75%, 男性参加者では0.09%
・また, 高齢者ほどリスク.
18-30歳では0.08%, 31-40歳では0.26%, 41-50歳では0.65%,
51-60歳では0.76%, ≥61歳では1.1%