SLEの治療目標は寛解, 低疾患活動性(LLDAS)であり,
LLDASは以下を満たすことで定義される
LLDAS: Lupus Low Disease Activity Stateで, 以下を満たす
・SLEDAI-2K ≤4で主要臓器の障害がなく, 且つ溶血性貧血や胃腸障害を認めない.
・主要臓器障害: 腎, CNS, 心肺, 血管炎, 発熱
・以前と比較して新しい臓器傷害を認めない
・SELENA-SLEDAI physician global assessment ≤1 (PGAはVAS: 0-3で評価)
・PSL投与量が≤7.5mg/d
・維持療法の免疫抑制剤投与量が安定している
・SLEDAI-2Kは過去10日以内の9臓器における障害を評価し計算.
(Ann Rheum Dis 2016;75: 1615–1621.)
LLDASは長期間維持することで, 新規臓器障害のリスクや再燃リスクは低下することがわかっている. (Arthritis Rheumatol. 2018 Nov;70(11):1790-1795.)(Lancet Rheumatol 2019; 1: e95–102)
2019年にSLEの活動性の指標として, 新たにSLE-DASが提唱された
(Ann Rheum Dis. 2019 Mar;78(3):365-371.)
2箇所の専門施設において, SLE 520例を評価.
PGA(Patient Global Assessment), SLEDAI 2Kと Cohortより作成したSLE-DASの有用性を評価
・SLEDAIと異なるところは,
皮膚粘膜障害のスコアが全身性血管炎よりも低く設定
皮膚障害も局所と全体でスコアを区別している
また, 稀だが重要な臓器障害をSLE-DASは含んでおり, 具体的には眼障害(Neuropsychiatricに含む), 心血管/肺障害, 消化管障害(Vasculitisに含む), 溶血性貧血が含まれているところ.
SLE-DASの各項目と計算式:
項目 | 内容 |
関節炎 | 28関節における腫脹関節を評価 |
局所的皮疹 | 頭頸部に限局した急性/亜急性/慢性経過の皮膚ループスによる皮疹(SLICC分類基準に含まれる) |
全身性の皮疹 | 頭頸部に限局しない上記皮疹 |
脱毛 | 局所的, 全身性の脱毛 |
粘膜潰瘍 | 口腔内, 鼻腔内潰瘍 |
全身性血管炎 | 大型, 中型血管炎, ループス腸炎 |
皮膚粘膜血管炎 | 皮膚粘膜血管炎全て. 凍瘡性ループス |
神経精神障害 | SLICC分類基準に含まれる神経精神症状:新規発症の痙攣, 精神症, 器質的脳障害, 急性意識障害), SLEによる網膜症, 末梢神経障害, 脊髄症, ループス頭痛, 脳血管障害, 無菌性髄膜炎 |
心臓/呼吸器障害 | 縮小肺, 間質性肺炎, びまん性肺胞出血, 肺高血圧症, 心筋炎, 弁膜症, Libman-Sacks心内膜炎 |
漿膜炎 | 無菌性の腹膜炎, 胸膜炎, 心外膜炎 |
筋炎 | CKやアルドラーゼ上昇, 筋電図, 筋生検で筋炎が示唆される, 近位筋の筋痛/筋力低下 |
蛋白尿 | PCR, 24時間蓄尿における蛋白尿 >500mg/g, >500mg/24h |
低補体血症 | C3 and/or C4の低下 |
抗ds-DNA抗体陽性 | 陽性 |
血小板減少 | PLT <10万/µL |
白血球減少 | WBC <3000/µL |
溶血性貧血 | 直接クームス試験陽性, LDHの上昇, ハプトグロビン低下を伴う貧血 |
SLE-DASとSLEDAI-2Kの臨床的判断に対する感度, 特異度
・SLE-DASの変化 ≥1.72は, SLEDA-2Kの変化 ≥4と比較して, 臨床的に改善, 増悪を判断する感度は良好であった結果.このSLE-DASの疾患活動性, 寛解状態に対応するカットオフを調査した報告
(Ann Rheum Dis 2021;80:1568–1574. doi:10.1136/annrheumdis-2021-220363)
SLE-DASにおける寛解のカットオフと SLE-DASの疾患活動性を評価するカットオフを 多施設Cohortにて評価した報告
・Padova Lupus Clinic(@伊), Cochin Lupus Clinic(@仏)におけるSLE症例(前向き)と, BLISS-76 trial(後ろ向き)における患者群を評価.
・検者は過去30日におけるPGAとSLEDAI-2K, SLE-DASを評価
・また臨床的寛解をDORISとDoriaにて評価(PSL ≤5mg/dにおいて)
Gold standardはDORIS基準とした.
・2施設では, SLEの専門医がDASや寛解状態をBlindした状態で, 検査所見や臨床所見より
(1)寛解, (2)軽度活動性, (3)中等度/高度活動性に分類(Clinical judgement)
・SLE-DASはオンラインで計算: http://sle-das.eu
DerivationはPadova Lupus Cohortのデータを用いて行い , 軽症, 中等症/重症活動性におけるSLE-DASのカットオフを評価.
・臨床的寛解は2つの定義を設定して評価
A) Index-based: PSL≤5mg/dにおいて, 専門医の臨床判断に対するSLE-DASのROC曲線から導き出せるSLE-DASの寛解上限値を満たすことで定義
B) Boolean-based: PSL≤5mg/dにおいて, SLE-DASのds-DNA抗体と低補体を除く全項目が陰性で定義
ValidationはCochin Lupus Cohortにおいて
・SLE-DASの臨床的寛解(A), (B)をDORIS基準をGold Standardとして評価
・SLE-DASの疾患活動性のカットオフを, 臨床評価をGSとして評価
BLISS-76のPost hoc analysisにおいて
・SLE-DASのカットオフにおける中等度/重度活動性疾患予測能を評価
GSはBILAG indexとし, BILAG domain ≥1B and/or ≥1Aで定義.
各母集団のデータ
アウトカム
・寛解で用いるSLE-DASのカットオフは2.08
中等度/重度活動性で用いるカットオフは7.64
・SLEの疾患活動性として,
寛解 ≤2.08, 軽度活動性 2.09~7.63, 中等度以上活動性 ≥7.64と設定すると良い
寛解の定義
・SLE-DASにおける臨床的寛解評価の感度, 特異度は良好.
・PSL ≤5mg/dの使用量において, SLE-DAS ≤2.08を寛解と判断することは合理的と言える.